「タクトタイムの計算式はわかったけど、実際の現場ではどう計算すればいいの?」「稼働時間の設定はどうするの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
タクトタイムの計算は公式自体はシンプルですが、稼働時間・需要量の正確な設定が実務上の重要なポイントとなります。
この記事では、タクトタイムの計算式・稼働時間の設定方法・需要量の考え方・具体的な計算事例まで、わかりやすく解説していきます。
目次
タクトタイムの計算公式:稼働時間÷需要量がすべての基本
それではまず、タクトタイムの計算公式と各要素の意味について解説していきます。
タクトタイムの計算公式は「タクトタイム = 正味稼働時間 ÷ 需要数量」というシンプルな式で表されます。
公式はシンプルですが、「正味稼働時間」と「需要数量」をどう設定するかが実務上の核心です。
公式の各要素の意味と設定方法
タクトタイム = 正味稼働時間 ÷ 需要数量
・正味稼働時間:休憩・段取り・保全などを除いた実際に生産できる時間
・需要数量:その稼働時間内に顧客から求められる製品の数量
単位:秒/個または分/個が一般的
タクトタイムは秒単位で計算することが多く、特に自動車・電機・食品など高速生産ラインでは数十秒単位の精度で設定することが重要です。
正味稼働時間の正確な算出方法
正味稼働時間を正確に求めるためには、1日の総勤務時間から生産に使えない時間をすべて引きます。
正味稼働時間の計算例
・総勤務時間:8時間=28,800秒
・昼食休憩:60分=3,600秒
・午前・午後の休憩:各10分=1,200秒
・朝礼・ミーティング:10分=600秒
・計画的段取り時間:15分=900秒
正味稼働時間 = 28,800-3,600-1,200-600-900 = 22,500秒
総勤務時間ではなく正味稼働時間を使うことで、現実的で達成可能なタクトタイムが算出できます。正味稼働時間の過大評価は計画と実績の乖離の原因となります。
タクトタイムの具体的な計算事例
続いては、さまざまな状況でのタクトタイムの計算例を確認していきます。
計算事例①:製造ラインの基本計算
条件
・勤務時間:1日8時間(休憩1時間、段取り30分含む)
・正味稼働時間:8時間-1.5時間=6.5時間=23,400秒
・1日の生産需要:195個
タクトタイム = 23,400 ÷ 195 = 120秒/個(2分に1個)
計算事例②:2交替制ラインの計算
条件
・1シフト正味稼働時間:7.5時間=27,000秒
・2シフト稼働(16時間生産)
・合計正味稼働時間:27,000×2=54,000秒
・1日の需要:360個
タクトタイム = 54,000 ÷ 360 = 150秒/個(2.5分に1個)
2交替制・3交替制の場合は各シフトの正味稼働時間を合計してから需要数量で割ることで、1日全体のタクトタイムを求めます。
計算事例③:月次需要からのタクトタイム計算
条件
・月間需要:4,800個
・月間稼働日数:20日
・1日の正味稼働時間:7.5時間=27,000秒
1日あたりの需要 = 4,800 ÷ 20 = 240個/日
タクトタイム = 27,000 ÷ 240 = 112.5秒/個
月次需要を稼働日数で割って1日あたりの需要を求め、その値でタクトタイムを計算する方法が実務では最も一般的なアプローチです。
タクトタイムの計算における注意点と実務上のポイント
続いては、タクトタイムを実務で使うときの注意点を確認していきます。
設備の計画外停止(突発故障)の扱い
突発的な設備トラブル・品質問題・部品欠品などの「計画外停止」は、正味稼働時間の計算に含めるべきかが実務上の論点となります。
計画外停止は正味稼働時間の計算に含めず、タクトタイムとは別にOEE(設備総合効率)などの指標で管理することが標準的な考え方です。
計画外停止も含めて稼働時間を計算してしまうと、タクトタイムが現実より短くなり、達成困難な目標設定になってしまいます。
複数品種混流ラインでのタクトタイム
複数の製品品種を同じラインで生産する混流生産ラインでは、品種ごとにサイクルタイムが異なるため、加重平均でタクトタイムを計算します。
混流ラインのタクトタイム計算
品種A:需要120個、サイクルタイム90秒
品種B:需要80個、サイクルタイム150秒
合計需要200個、正味稼働時間27,000秒
タクトタイム = 27,000 ÷ 200 = 135秒/個(平均)
→ 品種AはタクトT内に収まる、品種Bはタクト超え→要改善
混流ラインでは全品種の平均タクトタイムを基準として、各品種のサイクルタイムとの比較でボトルネック品種を特定することが効率改善の出発点となります。
タクトタイムの見直しタイミング
タクトタイムは一度設定したら固定ではなく、以下のタイミングで見直すことが必要です。
・需要の大きな変化(増産・減産・新製品投入)
・稼働日数・シフト体制の変更
・品質不良率の大幅な変化
・設備の増設・廃棄による能力変化
→ 月次または四半期ごとにタクトタイムを見直すことが推奨される
需要変動に合わせてタクトタイムを適切に更新することで、生産ラインが常に「市場のリズム」に合った状態を保てます。
まとめ
この記事では、タクトタイムの計算公式(正味稼働時間÷需要数量)・正味稼働時間の算出方法・さまざまな状況での計算事例・実務上の注意点について解説しました。
タクトタイムの計算で最も重要なのは「正味稼働時間」を正確に設定することであり、休憩・段取り・保全時間を差し引いた実際の生産可能時間を使うことで、現実的で達成可能な目標値が得られます。
月次の需要変動に合わせてタクトタイムを定期的に見直し、改善活動の基準として活用し続けることが生産効率向上の継続的な取り組みにつながるでしょう。