私たちが普通に生活している中で「植物油脂はあまりとらない方がいい」「植物油脂は危険である」ということ一度は聞いたことがあることでしょう。
このように安全でないイメージがある植物油脂ですが、これらを摂取することは体に悪いのでしょうか。また、「植物油脂」に似たような言葉として「植物油」というものがありますが、これらの違いは何かわかりますか。
ここでは「植物油脂は体にいいのか」「植物油脂を植物油の違い」について解説していきます。
目次
植物油脂は体の悪い?体にいい?
結論から言いますと、基本的にお菓子やパンなどの加工食品に含まれている植物油脂は摂取を控えた方がいいです。
以下のような表示の製品です。
これは、加工食品に含まれる植物油脂とは
・キャノーラ油
・パーム油
・大豆油
であることが多く、これらがあまり体にいいものではないといえるためです。これらは普通の家庭においてあることが多いものであり、菜種油であれば以下のような製品がうちにはあります。
これらが加工食品には添加されているわけです。
具体的には、一般的な植物油脂であるキャノーラ油、パーム油、大豆油が「体に悪い」という意味について確認していきます。
トランス脂肪酸や酸化した油が多くなりがち
これらの植物油脂は製造工程上の理由から、体に悪い油の代表ともいえるトランス脂肪酸の量が多くなる傾向にあります。
菜種油(キャノーラ油)や大豆油を製造する際に、原料となる菜種や大豆を粉砕したものに対して、ヘキサンと呼ばれる溶剤をかけ抽出させます。
抽出した後にヘキサン溶液中に残った油分を得るためには、250℃程度の高温にかけ沸点の低い(蒸発しやすい)ヘキサンを蒸発させることによって、植物油脂(菜種油や大豆油)を分離させるのです。
このときに、高温下になることで一部トランス脂肪酸を生成していることがあります。トランス脂肪酸にならないまでも植物油脂が酸化された油に変化するリスクもあります。この酸化された油であっても、私たちの神経にダメージを与える危険性がある「ヒドロキシナーゼ」とよばれる毒素に変化することもあるのです。
なお、パーム油は飽和脂肪酸(酸化されない油)であるために、トランス脂肪酸を生み出すリスクはないのですが、近年のデータではパーム油自体の摂取がトランス脂肪酸と似たような動脈硬化やガン発症の可能性を上げるという結果が出ているとのことです。
このように加工食品などに含まれる植物油脂では、トランス脂肪酸や酸化された油が多くなりがちであるために、あまり多くを摂取しない方がいいといえるのです。
植物油脂はオメガ6脂肪酸(リノール酸など)の含有量が多い
同時に加工食品に含まれる植物油脂(菜種油:キャノーラ油、パーム油、大豆油の混合物)では、構成分としてオメガ6脂肪酸を多く含む傾向にあります(キャノーラ油自体は少なめ)。
私たちが普通に生活していると、基本的にオメガ6脂肪酸(特にリノール酸)を過剰摂取していることがほとんどです。スナック、チョコ、パン、揚げ物などよく目にする多くの製品にかなり多くのリノール酸が含まれているためです。
以下のようなものです。
適量のリノール酸摂取では、
・細胞膜を適度な硬さにする
・菌などが体内に入りこんだときに適切に炎症反応を起こし、菌を排除する
などの役割を果たします。
ただリノール酸などを過剰摂取した場合、「細胞膜や血管膜が硬くなり過ぎ、上手に神経伝達が起きなくなる」「慢性的な炎症反応を起こし、逆に体のあらゆる部分を傷つける」などの症状を起こしてしまうのです。結果として、「感情が不安定になる」「がん、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす」といった悪影響も引き起こすわけです。
このような観点から、オメガ6の摂取量を控えた方がいいといえます。なお、亜麻仁油、えごま油に豊富に含まれるαリノレン酸や、魚の油に多く含まれるDHA・EPAなどを総称してオメガ3脂肪酸と呼びますが、このオメガ3脂肪酸はオメガ6脂肪酸の悪影響を抑制することができます。
よって、現代のリノール酸過剰摂取の世の中になっており、DHA・EPA・αリノレン酸(オメガ3)を摂取しバランスを保つことができるので、オメガ3を含む油は体にいいという理屈になっています。
このような理由から、「一般的な加工食品に含まれるような植物油脂は体に悪く、控えた方がいい」といえるのです。
なお、DHA・EPAは
・サバ缶などの青魚の缶詰め
・DHA・EPAサプリメント
から摂取すると効率的に摂取できるのでおすすめです。なお、αリノレン酸は亜麻仁油・えごま油から摂取するのがいいといえます。
本来の植物油脂の意味はもっと広く「体にいい」ものもある
なお、上では多くの加工食品における植物油脂は上述のよう「菜種油(キャノーラ油)・パーム油、大豆油」であり、体に良くないということを記載しました。
ただ、本来の植物油脂の意味としては、植物由来の油のことを指します。つまり、以下のようなものも、広義での植物油脂に相当するのです。
・菜種油(キャノーラ油)
・ベニ花油(サフラワー油)
・オリーブオイル
・ごま油
・とうもろこし油
・亜麻仁油
・えごま油
つまり、オメガ3を豊富に含む亜麻仁油・えごま油なども広義の植物油脂に相当するため、この意味の場合では「体に悪い」ものも、「体にいい」ものも入っていることとなるのです。
ただ実際のところは植物油脂といったら、加工食品における植物油脂のことを指すことがほとんどであるため、基本的にはあまり体にいいものではないと認識しておくといいです。
植物油と植物油脂との違いは?
なお、植物油脂と似た言葉として植物油という言葉が存在します。
実は、この植物油と植物油脂には違いがほとんどないといえます。上述の植物由来の油であれば、基本的に「植物油」や「植物油脂」、どちらでもいいのです。
なお、厳密には油脂とは、常温で固体・液体両方のあぶらのことを指し、油というと常温で液体のものを指します。
基本的には植物油脂も植物油も同じものだが、厳密には定義が少し違うということを理解しておきましょう。
まとめ
ここでは「植物油脂は体に悪いのか?良いものもあるのか」「植物油脂と植物油の違い」について解説しました。
基本的に加工食品における植物油脂といえば「菜種油・パーム油・大豆油」のことを指し、これらは多く摂取することは体に悪いといえます。
これは製造工程の都合上、トランス脂肪酸や酸化した油を多く含む傾向にあることや、オメガ6脂肪酸の過剰摂取につながることが原因といえます。結果として、「感情が不安定になる」「がん、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす」ことがあります。
なお、このオメガ6脂肪酸の過剰摂取による悪影響を防ぐためには、亜麻仁油、えごま油、魚の油などに含まれるオメガ3脂肪酸(αリノレン酸、DHA・EPA)を多く摂取するといいです。オメガ6の摂りすぎの影響を抑制することができるためです。
また、植物油脂とは広義の意味としては、植物由来のあぶら全般のことを指し、上の油脂だけでなく、亜麻仁油やえごま油なども指します。狭義の意味の植物油脂とは違いがあるので、理解しておくといいです。
植物油脂を控え、体にいい油を摂取することによって、より毎日を快適に過ごしていきましょう。