私達が生活している中には、さまざまな面白い科学現象があります。
例えば、「人が電線に触ると感電する」ということが知られていますが、カラスやスズメ、ハトなどは普通に電線にとまっているときに、感電するを見かけません。
これは科学的に考えて、どのような原理で説明することができるのでしょうか。また、鳥や猿が感電するケースは起こるものなのでしょうか。
ここでは「感電の意味」「電線に止まっている鳥や猿が感電しない原理」「人以外でも感電するケース」について解説していきます。
目次
そもそも感電とは
感電とは人、鳥、猿などが電線を始めとして高電圧の物体に触れたときに、体の機能に悪影響を及ぼすレベルのダメージを与える電流が物体に流れる現象のことを指します。
そして、この流れる電流値とは物理で習うオームの法則によって計算することができます。オームの法則とは、ある物体に流れる電流とその抵抗の積はかかる電圧と一致するというものです。
以下のような計算式で表すことができます(V=IR)
つまり、電圧が高いほど、物体の抵抗値が低いほど、通電電流値は大きくなるのです。そして、この電流値がある閾値を超えると人や鳥の体内に影響を及ぼし始めるのです。
具体的な、人体に流れる電流と体の変化は以下のような対応があります。
・1mA程度:ピリッとくる程度の電流を感じます。この程度の電流のことを、
最少感知電流と呼びます。
・5mA程度:かなりの痛みを感じるレベルとなり、苦痛電流と呼びます。
・10mA、20mA程度:筋肉の痙攣や内臓の機能を停止させるレベルとなります。
・50mA、100mA程度:数秒レベルの短時間ふれただけでも、
死に至るほど危険な状況になるといえます。
電線で鳥が感電しない理由は?
このように通電電流が上がることで感電が発生するわけですが、先にも述べたように電圧が高くないと電流が上昇することはありません(抵抗値は人や鳥などによって若干変化しますが、電圧の大きさの変化と比べると微々たるものです)。
このとき、「送電線に停まっている鳥の止まり方」と「鳥にかかる電圧」の関係性について考えていきましょう。
送電線は基本的に3本が一組となっており、これらの線同士にはおよそ6600V程度の電圧がかかっています。
つまり、電線間の電圧はかなり高い電圧がかかっているのです。
一方で、同じ電線間の電圧では、ほとんど差はありません。そして、実は鳥が電線に停まっているとき良く見ると同じ電線に足を置いているのです。
つまり、電線にとまっている鳥が感電しないのは、ほとんど電圧差がない同じ電線に足を置いており、電流がほとんど流れないためといえます。
これは鳥だけに限らず、人でも猿でもクマでも同様に、このような電線への触り方をすると感電することはないのです。
鳥、猿、クマなどが感電するケース
このように感電には電圧が大きく関わっていることを理解できたと思います。
よって、鳥であっても電線間をまたいで停まった場合は、感電します。これは、6600V近くの非常に高い電圧がかかることになるためです。
鳥に流れる電流について概算値を計算してみましょう。
鳥の電気抵抗値をおよそ800Ωとした場合、オームの法則によりI=6600/800=8.25Aの電流が流れます。
単位はA(アンペア)であるため、上で解説した人体への強い悪影響を及ぼすリスクがある数十mAの数百倍の大きさの電流が流れていることになるわけです。
なお、今では電線がむき出しになっていることはなく、絶縁樹脂で覆われており若干のですが、電線に触るようなことは辞めましょう。
まとめ
ここでは「感電の意味」「電線に止まっている鳥や猿が感電しない原理」「人以外でも感電するケース」について解説しました。
感電は人体や動物に悪影響を及ぼすほどの大きさの電流が流れる現象を指し、電圧が大きいところに触れると発生します。
ここで、電線に止まっている鳥などが感電しないのは、電圧が小さい同じ電線に両方の脚を置いているからです。そのため、電線間をまたいで、物体が電線に触れると感電してしまうので気を付けましょう。
身近な科学現象を理解して、より毎日を楽しんでいきましょう。