「固有振動数ってどうやって計算するの?」「振動方程式から固有振動数を求める手順は?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
固有振動数の求め方は、シンプルな1自由度系から始まり、多自由度系・連続体まで段階的に理解することで体系的に習得できます。
この記事では、固有振動数の計算方法・振動方程式の立て方・固有値問題の解き方・数値解法まで、丁寧に解説していきます。
目次
固有振動数の求め方は「振動方程式を立てて固有値を求めること」が基本
それではまず、固有振動数を求める基本的な手順と考え方を解説していきます。
固有振動数を求めるには、対象とする系の振動方程式(運動方程式)を立て、自由振動解を仮定することで固有振動数(固有値)を算出するという手順が基本です。
問題の複雑さに応じて、解析的な手法(公式を使う)と数値的な手法(コンピューターで解く)が使い分けられます。
1自由度系の固有振動数の導出
最も基本的なばね-質量系(1DOF系)の固有振動数を振動方程式から導出します。
① 運動方程式を立てる
mẍ + kx = 0(減衰なし自由振動)
② 自由振動解を仮定:x(t)=Ae^(iωt)
③ 代入して整理:(-mω²+k)Ae^(iωt)=0
④ 自明でない解(A≠0)の条件:-mω²+k=0
⑤ 固有角振動数:ωₙ = √(k÷m)
⑥ 固有振動数:fₙ = ωₙ÷(2π) = (1÷2π)√(k÷m)
振動方程式の「特性方程式」を解くことで固有振動数が得られるという手順は、どんな複雑な系でも共通する基本アプローチです。
減衰がある場合の固有振動数
実際の系では必ず減衰(エネルギー散逸)が存在します。
減衰を含む1自由度系の振動方程式は以下のようになります。
mẍ + cẋ + kx = 0
(c:粘性減衰係数)
減衰比:ζ = c ÷ (2√(km))
減衰固有振動数:ωd = ωₙ√(1-ζ²)
・ζ<1(不足減衰):ωd<ωₙで振動
・ζ=1(臨界減衰):振動せずに収束
・ζ>1(過減衰):振動せずにゆっくり収束
通常の構造物では減衰比ζは0.01〜0.1程度(1〜10%)と小さいため、固有振動数と減衰固有振動数の差はわずかであり、設計計算では fₙ ≒ fd として扱うことが多いです。
多自由度系の固有振動数の求め方
続いては、複数の質量やばねからなる多自由度系での固有振動数の求め方を確認していきます。
2自由度系の固有値問題
2つの質量とばねからなる2自由度系の固有振動数は、固有値問題として解きます。
2自由度系の振動方程式(行列形式)
[M]{ẍ} + [K]{x} = {0}
自由振動解:{x}={φ}e^(iωt)
代入:([K]-ω²[M]){φ}={0}
固有値方程式:det([K]-ω²[M])=0
→ ω²についての2次方程式を解いてω₁²・ω₂²(2つの固有値)を求める
→ fₙ₁=ω₁÷(2π)、fₙ₂=ω₂÷(2π)
n自由度系ではn個の固有振動数が存在し、各固有振動数に対応する固有モード(振動の変形パターン)が決まります。
連続体の固有振動数
はり・板・シェルなどの連続体の固有振動数は偏微分方程式から求めます。
両端固定はりの固有振動数の公式を例に示します。
両端固定はりのn次固有振動数
fₙ = (λₙL)² ÷ (2πL²) × √(EI÷(ρA))
・L:はりの長さ、E:ヤング率、I:断面2次モーメント
・ρ:密度、A:断面積
・λₙL:n次モードの固有値(1次:4.730、2次:7.853…)
連続体の固有振動数は無限個存在し(1次・2次・3次…)、次数が高くなるほど固有振動数が高くなります。
固有振動数の数値解法(FEMによるモード解析)
続いては、複雑な構造物の固有振動数を求める数値解法について確認していきます。
有限要素法(FEM)による固有値解析
複雑な形状の構造物では解析解が求まらないため、有限要素法(FEM)による数値解析が標準的な手法です。
FEMでは構造物を多数の要素に分割し、各要素の剛性行列と質量行列を組み立てて全体の固有値問題を解きます。
ANSYS・NASTRAN・Abaqusなどの商用FEMソフトウェアや、OpenRadioss・Code_Asterなどのオープンソースソフトウェアを使って、数千〜数百万自由度の大規模固有値問題を効率的に解けます。
固有振動数の数値計算アルゴリズム
大規模な固有値問題を効率的に解くためのアルゴリズムが開発されています。
| アルゴリズム | 特徴 | 適用場面 |
|---|---|---|
| ランチョス法 | 大規模疎行列に有効 | 構造物のFEM解析 |
| サブスペース反復法 | 低次固有値を効率的に求める | 動的解析・地震応答 |
| べき乗法 | 最大固有値のみ求める | 簡易計算 |
| QR法 | 全固有値を求める | 小規模系 |
実用的な構造解析では、必要な固有モード数(通常は1次〜数十次)を指定して効率よく求めるランチョス法や部分空間法が最もよく使われています。
まとめ
この記事では、固有振動数の求め方(振動方程式→固有値問題)・1自由度系の解析的な導出・減衰の影響・多自由度系の行列形式・連続体の公式・FEMによる数値解法について解説しました。
固有振動数の基本は「運動方程式を立て、自由振動解を仮定して特性方程式を解く」という手順であり、1自由度系では fₙ=(1÷2π)√(k÷m) という公式で求まります。複雑な構造物ではFEMによる数値固有値解析が標準的な手法です。
固有振動数を正確に把握することが、共振回避・動的設計・構造信頼性確保の出発点となるでしょう。