スネルの法則はよく使われる公式ですが、「どうやって導かれたの?」「証明はどうするの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
スネルの法則の導出にはフェルマーの原理を使った方法・波面(ホイヘンスの原理)を使った方法・変分法を使った数学的証明など、複数のアプローチがあります。
この記事では、スネルの法則をフェルマーの原理・波面・幾何光学からそれぞれ導出する方法を、わかりやすく解説していきます。
目次
スネルの法則はフェルマーの最小時間原理から導かれる
それではまず、フェルマーの原理を使ったスネルの法則の導出方法を解説していきます。
フェルマーの原理(最小時間の原理)とは「光は2点間を最短時間で進む経路を選ぶ」という原理であり、この原理からスネルの法則を数学的に厳密に導出できます。
フェルマーの原理によるスネルの法則の導出
媒質1(光速v₁)の点Aから媒質2(光速v₂)の点Bへ光が進む場合を考えます。
境界面上の点Pを通る場合の全移動時間
t = AP÷v₁ + PB÷v₂
境界面に沿ったPの位置をxとして、APとPBをxで表すと
AP = √(a²+x²)、PB = √(b²+(d-x)²)
(a・b・dはジオメトリで決まる定数)
tを最小にするために dt/dx = 0 とおくと
x÷(v₁√(a²+x²)) = (d-x)÷(v₂√(b²+(d-x)²))
sinθ₁÷v₁ = sinθ₂÷v₂
n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂ (∵ n=c÷v)
フェルマーの原理から微分を使ってtの最小値を求めることで、スネルの法則が自然に導かれます。
これは「光は最速経路を選ぶ」という物理的な原理が、「n₁sinθ₁=n₂sinθ₂」という数式に凝縮されていることを示しています。
波面(ホイヘンスの原理)を使ったスネルの法則の導出
続いては、波面とホイヘンスの原理を使った幾何光学的な導出方法を確認していきます。
ホイヘンスの原理とは
ホイヘンスの原理とは「波面上の各点は新しい球面波(素元波)の波源となり、その包絡面が次の波面となる」という波動の伝播原理です。
この原理を使うと、光が境界面で屈折するときの幾何学的な導出ができます。
波面を使ったスネルの法則の幾何学的導出
境界面に斜めに入射する波面を考える
・波面の一端が境界に達したとき、もう一端はまだ媒質1を進んでいる
・媒質1での波長λ₁、媒質2での波長λ₂(λ₁/λ₂=v₁/v₂=n₂/n₁)
・境界面上の二点をA・Bとし、AB間の距離をLとすると
・sinθ₁ = λ₁÷L、sinθ₂ = λ₂÷L
・sinθ₁÷sinθ₂ = λ₁÷λ₂ = v₁÷v₂ = n₂÷n₁
・したがって n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂
波面を使った導出は、光を「波」として扱うホイヘンスの原理から自然にスネルの法則が出てくることを示しており、幾何光学と波動光学を橋渡しする重要な論証です。
光路長と位相を使った導出
より進んだ方法として、光路長(n×距離)と位相の整合条件からスネルの法則を導く方法もあります。
境界面に沿った位相の連続条件(k₁sinθ₁=k₂sinθ₂、kは波数)から直接スネルの法則が導かれます。
この方法はマクスウェル方程式の境界条件から電磁波の屈折を完全に記述するアプローチの基礎となっており、波動光学・電磁気学の観点からスネルの法則を統一的に理解できます。
スネルの法則の数学的な意味と応用
続いては、スネルの法則の数学的な構造と応用を確認していきます。
変分法とオイラー・ラグランジュ方程式
フェルマーの原理は変分法(関数を最小・最大にする関数を求める数学的手法)の一例です。
オイラー・ラグランジュ方程式を適用することで、複数の境界面を持つ光学系でも最適な光路を一般的に求めることができます。
変分法によるフェルマーの原理の定式化は、幾何光学とハミルトン力学の間の深い数学的類似性を明らかにし、現代物理学の発展に貢献しています。
スネルの法則の逆問題:屈折率の測定
スネルの法則を使えば、入射角と屈折角を測定することで未知の媒質の屈折率を求めることができます。
n₂ = n₁ × sinθ₁ ÷ sinθ₂
例:空気(n₁≒1)から未知の液体へ30°で入射し屈折角20°の場合
n₂ = 1 × sin30° ÷ sin20° = 0.500 ÷ 0.342 ≒ 1.46
この原理を使った屈折計(refractometer)は食品・化学・宝石鑑定など様々な分野で屈折率測定に使われています。
まとめ
この記事では、スネルの法則の導出方法(フェルマーの原理・波面・光路長)・各導出の数学的手順・変分法との関係・逆問題の応用について解説しました。
スネルの法則 n₁sinθ₁=n₂sinθ₂ はフェルマーの最小時間原理・ホイヘンスの波面原理・電磁波の境界条件という3つの異なるアプローチで導出でき、それぞれの導出が光学の異なる側面を照らし出しています。
法則の背後にある物理的・数学的構造を理解することで、スネルの法則への理解が格段に深まるでしょう。