「橋が崩壊したのは共振のせいって聞いたけど、固有振動数とどう関係するの?」「危険回転数って何?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
固有振動数と共振の関係を正しく理解することは、機械・構造物の設計において最も重要な知識のひとつです。
この記事では、共振現象のメカニズム・強制振動・共振点・振幅の変化・危険回転数まで、わかりやすく解説していきます。
目次
共振とは「外力の周波数が固有振動数と一致したときに振幅が急激に増大する現象」のこと
それではまず、共振現象の定義と固有振動数との根本的な関係について解説していきます。
共振(resonance)とは、外部から加える周期的な力(強制力)の周波数が、物体の固有振動数と一致したときに振幅が急激に増大する現象です。
理論的(減衰ゼロの場合)には共振時の振幅は無限大になりますが、実際には材料の内部減衰・構造減衰によって有限の値に抑えられます。
それでも共振時の振幅は通常時の数倍〜数百倍に達することがあり、材料の破断・構造の崩壊・機械の損傷につながる危険な現象です。
強制振動と共振の関係
外部から周期的な力 F(t)=F₀sin(Ωt) が加わるとき、定常状態での振幅は以下の式で表されます。
強制振動の振幅:X = (F₀÷k) ÷ √((1-r²)²+(2ζr)²)
・r = Ω÷ωₙ(振動数比、外力周波数÷固有振動数)
・ζ:減衰比
・r≪1(外力が固有振動数より十分低い):X ≈ F₀÷k(静的変位に近い)
・r=1(共振):X=(F₀÷k)÷(2ζ)(共振倍率1÷(2ζ)倍に増幅)
・r≫1(外力が固有振動数より十分高い):X → 0
減衰比ζ=0.05(5%減衰)の場合、共振点での振幅は静的変位の1÷(2×0.05)=10倍になります。
共振点(共振ピーク)の特徴
振動数比rに対して振幅を描いたグラフ(周波数応答関数)には、r≒1の付近に急峻なピーク(共振ピーク)が現れます。
共振ピークの高さは減衰比ζに反比例し、減衰が小さいほど鋭くて高いピークになります。逆に減衰が大きいほど共振ピークが低く広くなり、共振の影響が緩和されます。
危険回転数と回転機械の共振回避
続いては、回転機械における「危険回転数」と共振回避の方法を確認していきます。
危険回転数とは何か
回転機械(モーター・ポンプ・タービン・コンプレッサーなど)では、回転軸の固有振動数に等しい回転速度を「危険回転数(critical speed)」と呼びます。
危険回転数付近で運転すると、回転体の不釣り合い(アンバランス)などが原因で共振が生じ、振幅が急増して軸受け破損・軸の破断・機械の損傷につながります。
危険回転数はシャフトの剛性・質量分布・軸受け特性から計算され、設計段階で評価・回避することが不可欠です。
危険回転数の計算
単純支持はりの1次危険回転数(Rankineの式)
Nc = (60÷2π) × √(k÷m)(rpm)
または Nc = 60fₙ(rpm)
例:fₙ=50Hzのシャフトの危険回転数
Nc = 60 × 50 = 3000 rpm
危険回転数付近での運転を避けるため、常用回転数は1次危険回転数の70%以下または130%以上に設定するのが一般的な設計指針です。
共振回避の設計手法
共振を回避するための主な設計手法を整理します。
① 固有振動数の変更:剛性を上げる(固有振動数を上げる)または質量を増やす(固有振動数を下げる)
② 減衰の追加:防振ゴム・粘性ダンパー・動吸振器の追加
③ 加振源の除去・低減:アンバランスの除去(バランス修正)・周期的な力の低減
④ 使用周波数帯域の回避:機械の運転速度範囲を固有振動数から遠ざける
日常生活・産業での共振の事例
続いては、固有振動数と共振が関係する身近な事例と産業での事例を確認していきます。
地震と建物の共振
地震動は様々な周波数成分を含む複雑な振動ですが、特定の周波数成分が卓越する「卓越周期」を持ちます。
建物の固有振動数(高い建物ほど固有振動数が低い)と地震動の卓越周期が一致すると、建物が大きく揺れる「共振被害」が生じます。
1995年の阪神・淡路大震災では、地震動の卓越周期(約0.3〜1秒)に固有周期が近い中低層建物(数階建て)で特に大きな被害が生じました。
NMR(核磁気共鳴)への応用
医療用MRI(磁気共鳴画像法)はNMR(核磁気共鳴)現象を応用したものです。
原子核が特定の磁場中で持つ固有の振動数(ラーモア周波数)に合わせた電磁波を照射することで共振を起こし、そのシグナルを検出して画像化します。
MRIは「固有振動数に合わせた共振」という物理原理を医療診断に応用した技術であり、共振現象が産業・医療で有効活用される代表例です。
まとめ
この記事では、共振現象のメカニズム・強制振動の振幅式・共振点の特徴・危険回転数の定義と計算・共振回避の設計手法・日常と産業での事例について解説しました。
共振とは外力の周波数が固有振動数と一致したときに振幅が急激に増大する現象であり、減衰比が小さいほど危険度が高くなります。危険回転数の把握と共振回避設計が機械・構造設計の必須要件です。
共振の原理はMRI・楽器・地震工学など多方面に応用されており、「害にもなり利にもなる」という振動現象の本質的な二面性を理解することが重要でしょう。