細胞膜電位とは?測定方法や単位も!(電位差:mV:細胞内外:生理学など)
細胞膜電位とは?測定方法や単位も!(電位差:mV:細胞内外:生理学など)
細胞は周囲の環境から独立して働いているように見えて、実際には細胞膜を境にした電気的な差を利用して情報を受け取り、物質を運び、反応を調整しています。
この電気的な差が細胞膜電位です。神経細胞の興奮、筋肉の収縮、心拍のリズム、イオンの移動など、生理学の幅広い分野を理解する土台になります。
本記事では、細胞膜電位の意味から電位差の考え方、mVという単位、測定方法、細胞内外のイオン濃度との関係までを順序立てて説明します。
細胞膜電位の基本的な意味

それではまず細胞膜電位の意味について解説していきます。
細胞内外に生じる電位差
細胞膜電位とは、細胞の内側と外側の間に生じている電位差のことです。
多くの細胞では、静止している状態で細胞内が細胞外よりも負の電位を示します。この状態は細胞内が相対的にマイナスに保たれている状態と考えると理解しやすいでしょう。
ただし、細胞全体が大きく帯電しているわけではありません。電荷の偏りは主に細胞膜のごく近くで起きており、細胞の内外に存在するイオンがわずかに移動するだけでも電位差が形成されます。
細胞膜は脂質二重層を中心とした構造であり、すべてのイオンを自由に通すわけではありません。この選択的な通しやすさが、膜を挟んだ電気的な差を生み出す重要な条件です。
静止膜電位と興奮時の変化
刺激を受けていないときの膜電位は、一般に静止膜電位と呼ばれます。
神経細胞ではおよそマイナス70mV前後、骨格筋細胞ではおよそマイナス90mV前後が代表的な値です。ただし、細胞の種類、測定環境、発達段階などによって数値は変わります。
神経細胞や筋細胞が刺激を受けると、イオンチャネルの開閉によって膜電位が短時間で変化します。この変化が一定の条件を超えると活動電位が発生し、電気信号が細胞膜上を伝わります。
細胞膜電位は単なる電気の強さではなく、細胞内外のイオン分布と膜の透過性を反映する生理学的な指標です。
静止膜電位と活動電位を区別しておくと、神経伝達や心電図、筋電図の仕組みもつながりやすくなります。
生理学における重要性
細胞膜電位は、神経系や筋肉だけに関係する現象ではありません。
上皮細胞による栄養素の吸収、腎臓での再吸収、膵臓のインスリン分泌、心筋の拍動調節などにも深く関与しています。細胞が外部からの変化を感じ取り、適切な応答を選ぶための基盤といえるでしょう。
また、膜電位の異常は不整脈、てんかん、筋疾患、電解質異常などを考える際にも重要です。細胞レベルの電気現象が全身の機能に結び付く点が、生理学で細胞膜電位を学ぶ意義です。
細胞膜を隔てるイオン分布
続いては細胞膜電位を作るイオン分布を確認していきます。
ナトリウムイオンとカリウムイオン
細胞膜電位を理解するうえで、ナトリウムイオンとカリウムイオンは特に重要です。
一般にナトリウムイオンは細胞外に多く、カリウムイオンは細胞内に多く存在します。この濃度差があるため、各イオンには濃度の高い側から低い側へ移動しようとする力が働きます。
一方で、イオンは電荷を持っているため、電気的な引力や反発力も受けます。濃度差による移動の力と電気的な力がつり合う地点が、イオンの平衡電位です。
静止状態の細胞膜はカリウムイオンを比較的通しやすいため、静止膜電位はカリウムイオンの平衡電位に近い値になりやすい特徴があります。
塩化物イオンと細胞内陰性
塩化物イオンも膜電位に影響する主要なイオンです。
細胞の種類によっては、塩化物イオンの分布が抑制性の神経伝達や細胞容積の調整に関わります。塩化物イオンの平衡電位と現在の膜電位の差が大きいほど、チャネルが開いたときの電位変化も大きくなります。
細胞内にはタンパク質やリン酸化合物など、膜を通りにくい負の電荷を持つ成分もあります。これらは細胞内が負に傾きやすい環境を支える一因ですが、膜電位は固定陰イオンだけで決まるものではありません。
複数のイオン濃度、膜透過性、能動輸送が組み合わさって、現在の電位差が保たれています。
ナトリウムカリウムポンプ
ナトリウムカリウムポンプは、ATPのエネルギーを使ってナトリウムイオンを細胞外へ、カリウムイオンを細胞内へ運ぶ輸送体です。
一般的には、ナトリウムイオンを3個外へ出し、カリウムイオンを2個内へ入れます。この働きにより、細胞内外の濃度勾配が長期的に維持されます。
ナトリウムカリウムポンプは、Na+を3個細胞外へ運び、K+を2個細胞内へ運びます。正電荷が1個分多く外へ出るため、膜電位にもわずかに寄与します。
ポンプの直接的な電気的寄与は大きくなくても、濃度差を維持する役割は非常に重要です。ポンプが十分に働かなければ、イオン勾配が崩れ、細胞膜電位も安定して保てなくなります。
mVと電位差の単位
続いては細胞膜電位で使われる単位と電位差の表し方を確認していきます。
ミリボルトの意味
細胞膜電位は通常、mVという単位で表します。
mVはミリボルトと読み、1Vの1000分の1です。細胞で扱う電位差はボルト単位では小さいため、ミリボルトで示すと数値を扱いやすくなります。
たとえば膜電位がマイナス70mVであれば、細胞内の電位が細胞外より70mV低いという意味です。細胞外を0mVの基準とする表現がよく使われます。
| 表記 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 1V | 1ボルト | 電位差の基本単位 |
| 1mV | 1ミリボルト | 0.001Vに相当 |
| マイナス70mV | 負の70ミリボルト | 細胞内が細胞外より70mV低い状態 |
| 0mV | ゼロミリボルト | 比較のために設定した基準電位 |
符号が示す細胞内外の関係
膜電位のプラスとマイナスは、細胞内を基準にした相対的な関係を示します。
細胞外を基準にして細胞内を測定する場合、マイナスの値は細胞内が低電位であることを意味します。活動電位のピークでは細胞内が一時的にプラス側へ移り、正の値を示すこともあります。
ここで注意したいのは、マイナス70mVという数値が細胞内に大量の負電荷が蓄積している意味ではないことです。細胞全体はほぼ電気的中性であり、膜の両側のごく限られた領域に電荷の偏りがあります。
符号の意味を理解すると、脱分極、再分極、過分極という用語も整理しやすくなります。
脱分極と過分極の表現
膜電位がマイナス70mVからマイナス50mVへ変化する場合、数値は0mVに近付きます。この変化は脱分極と呼ばれます。
反対に、マイナス70mVからマイナス90mVへ変化する場合は、より負の方向へ移るため過分極です。活動電位の後半で元の負の値へ戻る過程は再分極と呼ばれます。
マイナス70mVからマイナス50mVへの変化は脱分極です。マイナス70mVからマイナス90mVへの変化は過分極になります。
数値が増えるか減るかではなく、0mVに近付くか離れるかを意識すると、これらの用語を混同しにくくなります。
平衡電位と膜透過性
続いては平衡電位と膜透過性の関係を確認していきます。
濃度勾配と電気勾配
イオンが移動する方向には、濃度勾配と電気勾配の二つが関係します。
濃度勾配は濃度差を小さくしようとする力です。たとえば細胞内のカリウムイオン濃度が高ければ、カリウムイオンは細胞外へ出ようとします。
しかし、正に帯電したカリウムイオンが細胞外へ出ると、細胞内は相対的に負になります。その負の電位はカリウムイオンを細胞内へ引き戻そうとします。
この二つの力がつり合い、あるイオンに正味の移動がなくなるときの電位が平衡電位です。
ネルンスト式の考え方
一種類のイオンについて、濃度比から平衡電位を求める考え方を表したものがネルンスト式です。
平衡電位は、イオンの価数、温度、細胞外濃度、細胞内濃度によって変わります。濃度差が大きいほど、平衡電位も大きく変化します。
式を暗記するよりも、濃度勾配と電気勾配のつり合いを表していると理解することが大切です。
カリウムイオンの細胞内濃度が低下すれば、カリウムイオンの平衡電位は変化します。その結果、静止膜電位も影響を受けるため、血液中のカリウム濃度異常が心臓の電気活動に影響する理由につながります。
複数イオンが作る膜電位
実際の細胞膜は、一種類のイオンだけを通しているわけではありません。
カリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カルシウムイオンなどがそれぞれ異なる程度に関与します。そのため、実際の膜電位は複数のイオン濃度と透過性をまとめて考える必要があります。
このような条件を扱う際には、ゴールドマンの式の考え方が用いられます。膜を通りやすいイオンほど膜電位に与える影響が大きくなります。
静止膜電位はカリウムイオンの影響を強く受けますが、ナトリウムイオンや塩化物イオンも含めた複数の要因によって決まります。
イオン濃度だけでなく、どのイオンをどれだけ通すかが膜電位を左右するポイントです。
細胞膜電位の測定方法
続いては細胞膜電位の代表的な測定方法を確認していきます。
ガラス微小電極による細胞内記録
細胞膜電位を直接測定する基本的な方法として、ガラス微小電極を細胞内へ挿入する手法があります。
細いガラス管の先端を微細に加工し、内部に電解質溶液を入れます。一方の電極を細胞内、基準となる電極を細胞外に置き、その間の電位差を記録します。
電極が細胞外にある間は0mV付近を示し、細胞内へ入ると負の値へ変化します。この変化によって、細胞内が細胞外より低い電位にあることを確認できます。
細胞が小さい場合や傷つきやすい場合には、電極の挿入そのものが細胞へ影響する可能性があります。電極抵抗、漏れ電流、振動、温度などへの配慮も必要です。
パッチクランプ法の特徴
パッチクランプ法は、細胞膜の小さな領域にガラス電極を密着させ、イオンチャネルを流れる微小な電流や膜電位を測定する方法です。
細胞全体の膜電流を測る設定だけでなく、一個のイオンチャネルの開閉を観察する設定も選べます。そのため、神経科学、薬理学、心筋研究などで広く利用されています。
電流を一定に保ちながら電位を観察する電流固定法と、電位を制御して電流を測る電位固定法は、目的に応じて使い分けられます。
| 測定法 | 主な特徴 | 確認しやすい内容 |
|---|---|---|
| 細胞内記録 | 微小電極を細胞内へ入れる | 静止膜電位と活動電位 |
| パッチクランプ法 | 膜電流と膜電位を精密に記録する | イオンチャネルの性質 |
| 細胞外記録 | 細胞外の電位変化を記録する | 集団としての電気活動 |
| 蛍光イメージング | 電位感受性色素などを使う | 空間的な電位変化 |
測定値の解釈と注意点
細胞膜電位の数値を読むときは、測定条件を確認することが欠かせません。
細胞の種類、外液中のイオン濃度、温度、刺激の有無、使用した電極や増幅器の特性によって結果は変わります。同じ細胞種でも、培養条件によって静止膜電位が異なる場合があります。
また、電極の先端が細胞内に十分入っていない、細胞膜が損傷している、記録回路にノイズが入っているといった条件では、正確な値を得にくくなります。
測定されたmVの値だけを見るのではなく、基準電極、イオン組成、温度、記録方法を合わせて確認することが信頼できる解釈につながります。
膜電位は測定環境の影響を受けやすい生理指標であるため、数値の比較には条件の統一が求められます。
活動電位と細胞機能
続いては膜電位変化が細胞機能へ与える影響を確認していきます。
閾値と活動電位の発生
神経細胞では、脱分極が一定の閾値に達すると、電位依存性ナトリウムチャネルが急速に開きます。
ナトリウムイオンが細胞内へ流入すると脱分極がさらに進み、活動電位が発生します。この急速な変化は一定の大きさで起こるため、全か無かの法則として説明されます。
刺激が弱くて閾値に達しなければ、大きな活動電位は起こりません。一方、閾値を超えた場合は、刺激の強さよりも発火の回数や頻度が情報量に関係します。
閾値は電気信号の発生を切り替える境目であり、神経の情報伝達を理解する重要な概念です。
再分極と不応期
活動電位の上昇後には、ナトリウムチャネルの不活性化とカリウムチャネルの開口が進みます。
カリウムイオンが細胞外へ流出することで、膜電位は再び負の方向へ戻ります。場合によっては静止膜電位よりも一時的に低くなり、過分極が見られることもあります。
活動電位の直後には、次の活動電位を起こしにくい不応期があります。この期間があることで、神経信号は一定方向へ伝わりやすくなり、過剰な連続発火も抑えられます。
心筋では不応期が比較的長く、心臓が持続的にけいれんすることを防ぐ仕組みにも関わっています。
カルシウムイオンと分泌反応
カルシウムイオンは、細胞膜電位の変化を細胞内の反応へつなぐ役割を担います。
神経終末に活動電位が到達すると、電位依存性カルシウムチャネルが開きます。流入したカルシウムイオンを合図として、小胞が細胞膜と融合し、神経伝達物質が放出されます。
内分泌細胞でも、膜電位の変化とカルシウムイオン流入がホルモン分泌に結び付きます。たとえば膵臓の細胞では、栄養状態の変化が膜電位を介してインスリン分泌へつながります。
膜電位の変化は電気的な現象にとどまりません。カルシウムイオンの流入を通じて、神経伝達、筋収縮、ホルモン分泌などの具体的な細胞機能へ変換されます。
電位変化とカルシウムシグナルの連携を押さえると、細胞が刺激へ応答する流れを立体的に理解できます。
細胞膜電位のまとめ
細胞膜電位とは、細胞内外のイオン分布と細胞膜の選択的な透過性によって生まれる電位差です。
単位にはmVが使われ、静止状態では細胞内が細胞外より負となる例が多く見られます。
ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、カルシウムイオンの濃度差と、イオンチャネルの開閉が膜電位を形作ります。ナトリウムカリウムポンプは、その土台となる濃度勾配を維持する重要な仕組みです。
測定には細胞内記録やパッチクランプ法が用いられますが、得られた値は測定条件と合わせて評価する必要があります。
神経細胞の活動電位、筋肉の収縮、心筋の拍動、神経伝達物質やホルモンの分泌まで、細胞膜電位は多様な生命活動を支えています。
細胞内外の電位差をイオンの動きとして捉えることが、細胞膜電位を正しく理解する近道です。