フランジ・ウェブの強度計算は?断面二次モーメントも!(曲げ応力:せん断力:構造計算など)
フランジ・ウェブの強度計算は?断面二次モーメントも!(曲げ応力:せん断力:構造計算など)
鉄骨梁や鋼製部材の設計では、フランジとウェブがどのように力を受けるのかを把握することが欠かせません。
曲げモーメント、せん断力、断面二次モーメント、断面係数を結び付けて考えることで、部材の安全性と合理的な寸法を判断しやすくなります。
この記事では、H形鋼をイメージしながら、フランジ・ウェブの役割、強度計算の基本式、座屈への配慮、構造計算で確認したいポイントを順に解説します。
フランジ・ウェブの強度計算に必要な断面性能

それではまず、フランジ・ウェブの強度計算に必要な断面性能について解説していきます。
曲げモーメントを主に負担するフランジ
H形鋼やI形鋼では、上下に広がる板状の部分をフランジ、中央で上下のフランジをつなぐ板をウェブと呼びます。
梁に下向きの荷重が加わると曲げモーメントが発生し、一般的な単純梁では中央付近で上側が圧縮、下側が引張となります。
このとき、中立軸から遠い位置にあるフランジほど大きな曲げ応力を負担します。
断面内の曲げ応力は中立軸からの距離に比例するため、上下端に位置するフランジは、効率良く曲げに抵抗できる形状です。
同じ断面積の鋼材を中央へ集めるより、上下へ離して配置したほうが断面二次モーメントは大きくなります。
そのため、長い梁や大きな曲げモーメントを受ける部材では、フランジ幅とフランジ厚が重要な設計要素となります。
曲げ応力の基本式
σ = M ÷ Z
σは曲げ応力、Mは曲げモーメント、Zは断面係数を表します。
断面係数Zが大きいほど、同じ曲げモーメントに対する曲げ応力は小さくなります。
フランジの断面積を増やすだけでなく、中立軸からの距離を確保することが断面効率を高める要点です。
梁せいを大きくすると断面二次モーメントが増えやすい理由も、フランジが中立軸から離れるためです。
せん断力を主に負担するウェブ
ウェブは、梁に作用するせん断力を主に受け持つ部分です。
せん断力は支点付近や集中荷重の近傍で大きくなりやすく、ウェブの板厚が不足するとせん断降伏やせん断座屈につながるおそれがあります。
曲げ応力が断面の上下端で大きくなるのに対し、せん断応力は一般に中立軸の近くで大きくなります。
そのため、ウェブは曲げへの寄与よりも、せん断抵抗とフランジ間隔の保持に重要な役割を持ちます。
ただし、ウェブにも曲げ応力は生じます。
断面全体で見れば、フランジだけでなくウェブも断面二次モーメントや断面係数に寄与するため、計算上は断面を一体として評価することが基本です。
フランジとウェブを別々の部材として考え過ぎると、荷重伝達の見落としにつながります。
基本の断面計算では一体断面として断面性能を求め、その後に局部座屈、接合部、補剛材などを個別に確認する流れが実務的です。
断面二次モーメントと断面係数の関係
断面二次モーメントIは、断面が曲がりにくいかどうかを表す断面性能です。
単位は長さの四乗となり、ミリメートルを使用する場合はmmの四乗で扱います。
断面係数Zは、断面二次モーメントを最外縁までの距離で割った値です。
上下対称なH形断面であれば、ZはIを梁せいの半分で割ることで求められます。
上下対称な断面における関係式
Z = I ÷ y
yは中立軸から最外縁までの距離です。
梁せいをhとした場合、yはおおむねh ÷ 2となります。
たわみ計算では主に断面二次モーメントIを用い、曲げ応力の確認では断面係数Zを用います。
強度だけでなく変形も制限したい場合、断面係数と断面二次モーメントの両方を確認する必要があります。
H形断面における断面二次モーメントの算定
続いては、H形断面における断面二次モーメントの算定を確認していきます。
分割断面による計算手順
H形断面の断面二次モーメントは、上フランジ、下フランジ、ウェブの三つに分けて求める方法が分かりやすいでしょう。
上下対称の断面であれば中立軸は断面中央に位置するため、上下フランジの計算条件も同じになります。
各部分の自分自身の断面二次モーメントに加え、中立軸から離れた位置にあるフランジには平行軸の定理を適用します。
平行軸の定理とは、部材自身の図心軸まわりの断面二次モーメントに、断面積と軸間距離の二乗を加える考え方です。
平行軸の定理
I = I0 + A × eの二乗
I0は部分断面の図心軸まわりの断面二次モーメントです。
Aは部分断面積、eは部分断面の図心から全体中立軸までの距離を表します。
フランジは中立軸から大きく離れているため、A × eの二乗の項が非常に大きくなります。
これが、H形断面でフランジ配置が曲げ剛性に大きく影響する理由です。
矩形断面の基本式と適用範囲
矩形断面の重心軸まわりの断面二次モーメントは、幅をb、高さをhとすると、b × hの三乗を12で割った式で求められます。
フランジを水平な矩形として扱う場合は、幅がフランジ幅、高さがフランジ厚となります。
ウェブを鉛直な矩形として扱う場合は、幅がウェブ厚、高さがウェブせいです。
ただし、圧延H形鋼のフィレット部まで厳密に反映するには、メーカーの断面性能表を使うほうが確実です。
設計初期の概算では分割計算が役立ちますが、最終的な構造計算では規格表や製品カタログの値と照合してください。
| 確認項目 | フランジ | ウェブ | 主な影響 |
|---|---|---|---|
| 主な負担 | 曲げ応力 | せん断力 | 断面全体の耐力 |
| 寸法変更 | 幅と厚さ | 厚さと高さ | 局部耐力と断面性能 |
| 断面二次モーメント | 中立軸からの距離が大きく影響 | 梁せいが大きいほど寄与 | たわみと曲げ剛性 |
| 注意事項 | 局部座屈と横座屈 | せん断座屈と開口部 | 安全率と使用性 |
断面寸法変更による効果
梁の耐力を上げるために、単純に板厚だけを増やすとは限りません。
曲げモーメントが支配的な場合は、梁せいを大きくしてフランジ間隔を広げることで、断面二次モーメントを効率良く増加させられます。
一方で梁せいを大きくすると、納まり、階高、接合部、横座屈への対策にも影響します。
断面性能の向上と施工条件の両方を見ながら、フランジ幅、フランジ厚、ウェブ厚を調整することが重要です。
ウェブ厚を増やす設計は、せん断力が大きい箇所や、補強板を減らしたい箇所で有効になることがあります。
ただし、材料増加による重量、溶接量、コストまで含めて比較する視点が必要です。
曲げ応力とせん断応力の確認
続いては、曲げ応力とせん断応力の確認について見ていきます。
許容応力度との比較
強度計算では、算定した曲げ応力やせん断応力が、使用する鋼材の許容応力度または設計用の強度を超えないか確認します。
許容応力度設計では、作用する荷重によって生じる応力を許容値以下に収める考え方が基本です。
一方、終局状態を対象とする設計では、荷重係数や材料強度の扱いが異なるため、採用する設計ルールに合わせる必要があります。
同じ形状の梁でも、建築物、工作物、設備架台、機械フレームでは適用基準が異なる場合があります。
数式だけを流用せず、対象構造物に適用される基準と荷重条件を先に整理することが大切です。
曲げ応力の確認では、最大曲げモーメントが生じる位置を確認します。
せん断応力の確認では、支点近く、集中荷重の前後、断面変化部を重点的に確認します。
最大値が同じ位置に現れるとは限らない点に注意が必要です。
ウェブのせん断応力計算
ウェブのせん断応力は、簡略的にはせん断力をウェブの有効断面積で割って求めます。
ウェブの有効断面積は、一般にウェブ厚とウェブせいを掛け合わせた値を基礎とします。
ただし、詳細計算ではせん断応力の分布、フィレットの扱い、開口部の有無、補剛材の配置によって評価が変わることがあります。
特に薄いウェブを持つ梁では、材料の降伏強度だけでなく、板としての座屈耐力も重要です。
高いせん断力を受ける領域に開口を設けると、応力の流れが乱れ、開口周囲に補強が必要になるケースもあります。
せん断力Vが大きく、ウェブ厚tw、ウェブせいhwの断面を概算する場合、平均せん断応力はVをtwとhwの積で割る形で把握できます。
これは初期検討に便利ですが、最終設計では適用規準に定められたせん断耐力式を使用してください。
曲げとせん断が重なる箇所
梁端部や荷重点の近傍では、曲げ応力とせん断応力が同時に大きくなることがあります。
一般的な梁では、曲げモーメントの最大位置とせん断力の最大位置はずれますが、片持ち梁の固定端では両方が大きくなりやすい特徴があります。
また、梁端接合部、ガセットプレート周辺、補強板の端部では、局部的な応力集中への配慮も必要です。
部材中央の断面計算だけで安全と判断せず、支持条件や荷重導入部まで確認することが構造計算の基本です。
応力の組合せや局部的な力の伝達は、簡易計算では見えにくい部分です。
複雑な荷重状態では、構造解析ソフトや有限要素法の活用を検討することもあるでしょう。
フランジとウェブの局部座屈対策
続いては、フランジとウェブの局部座屈対策を確認していきます。
圧縮フランジの幅厚比
圧縮を受けるフランジは、材料強度に達する前に局部的に波打つように変形する場合があります。
この現象が局部座屈です。
フランジが幅広で薄いほど局部座屈しやすくなるため、フランジ幅と板厚の比である幅厚比を確認します。
圧縮フランジの局部座屈は、梁全体の曲げ耐力低下につながるため、見逃せない検討項目です。
フランジ厚を増やす、突出幅を抑える、材料強度と断面区分に応じた制限値を満たすといった方法で対策します。
高強度鋼を使う場合でも、板厚が薄過ぎれば局部座屈が先行する可能性があります。
ウェブのせん断座屈と補剛材
薄いウェブに大きなせん断力が作用すると、斜め方向のしわのような変形が生じることがあります。
これがウェブのせん断座屈です。
ウェブせいに対して板厚が小さい場合、降伏応力に達する前に座屈する可能性があるため、ウェブの高さと厚さの比を確認します。
必要に応じて、鉛直補剛材や水平補剛材を設け、ウェブ板の座屈長さを短くします。
補剛材は単に板を追加するだけでは足りず、ウェブへ伝わる力を受けられる断面と接合を持たせることが重要です。
補剛材の配置は、せん断力が大きい支点近傍、集中荷重の作用位置、断面欠損の周辺で特に検討します。
補剛材を設けても、溶接サイズやボルト接合が不足していれば期待した補強効果を得られません。
横座屈と横補剛の考え方
圧縮側フランジが横方向に拘束されていない梁では、梁全体が横へたわみながらねじれる横座屈が起こることがあります。
これは局部座屈とは異なり、部材全体の安定問題です。
梁のスパンが長い場合、圧縮フランジの横拘束間隔が大きい場合、梁せいに対してフランジが細い場合には注意が必要です。
床版、母屋、胴縁、横つなぎ材、ブレースなどが圧縮フランジをどの程度拘束するかを確認します。
フランジの曲げ耐力を計算しても、横座屈耐力が不足すれば梁としての許容耐力は低下します。
設計図では、横補剛の位置、接合方法、施工時に拘束が効く状態かどうかまで検討すると安心です。
構造計算における荷重条件と接合部
続いては、構造計算における荷重条件と接合部について確認していきます。
固定荷重と積載荷重の整理
梁の強度計算を始める前に、どの荷重がどこへ作用するのかを整理します。
固定荷重には梁自重、床、屋根、仕上げ、設備などが含まれます。
積載荷重には人、家具、保管物、作業荷重などが含まれ、用途により設定値が変わります。
屋外構造物では風荷重、積雪荷重、地震時の水平力も無視できません。
荷重の種類だけでなく、等分布荷重なのか集中荷重なのか、片側だけに作用する偏荷重なのかによって、曲げモーメント図とせん断力図は変化します。
| 荷重条件 | 梁への主な影響 | 確認しやすい位置 |
|---|---|---|
| 等分布荷重 | 中央部の曲げモーメント増加 | スパン中央 |
| 集中荷重 | 荷重点近傍の局部作用 | 荷重点と支点近傍 |
| 片持ち荷重 | 固定端の曲げとせん断増加 | 固定端 |
| 風荷重 | 反転荷重と接合部の引抜き | 端部と支持部 |
| 地震荷重 | 繰返し荷重と水平力伝達 | 接合部とブレース周辺 |
荷重の見落としは、断面二次モーメントを正しく計算しても防げません。
荷重経路を図やスケッチで追い、上部構造から梁、柱、基礎へ力が連続して伝わるかを確認してください。
フランジ接合部の耐力
梁のフランジは大きな軸方向力を負担するため、梁継手や柱梁接合部ではフランジから力を確実に伝える必要があります。
高力ボルト接合では、ボルト本数、配置、摩擦接合としての条件、添板の板厚などが検討対象です。
溶接接合では、完全溶込み溶接かすみ肉溶接か、溶接長、脚長、施工姿勢、検査条件まで関係します。
特に曲げモーメントが大きい接合部では、上下フランジに引張と圧縮の軸力が生じます。
梁本体だけを大きくしても、接合部が先に破壊する設計では十分な安全性を確保できません。
部材耐力、接合部耐力、支持部耐力は一連で確認します。
最も小さい耐力が構造全体の支配条件となるため、梁断面だけで判断しないことが重要です。
ウェブ接合部と局部支圧
ウェブ接合部では、せん断力をボルトや溶接を通じて伝達します。
シアプレート、ガセットプレート、エンドプレートなどを用いる場合、ウェブの板厚だけでなく、接合金物の板厚と変形も確認します。
集中荷重や柱からの反力がフランジ近傍へ作用すると、ウェブに局部的な支圧力が加わります。
この場合、ウェブの局部降伏、局部座屈、フランジの曲げ、補剛材の必要性を検討します。
荷重を一点で受ける部分は、梁全体の平均応力ではなく局部的な力の広がりを考えることが必要です。
クレーン梁、設備支持梁、重量物を載せる架台では、荷重導入部の補強計画がとくに重要になります。
たわみ計算と実務上の確認項目
続いては、たわみ計算と実務上の確認項目について見ていきます。
断面二次モーメントによるたわみ評価
梁の安全性を確認する際は、強度だけでなく、使用時のたわみも確認します。
たわみが大き過ぎると、床の不快な振動、仕上げ材のひび割れ、建具の不具合、水勾配の乱れなどにつながることがあります。
たわみ量は荷重、スパン、ヤング係数、断面二次モーメントによって決まります。
鋼材のヤング係数が同じであれば、断面二次モーメントが大きいほど梁はたわみにくくなります。
単純梁に等分布荷重が作用する条件では、たわみはスパンの四乗に強く影響されます。
そのため、スパンが少し伸びるだけでも、必要な断面性能が大きく変わる場合があります。
長スパン梁では、曲げ応力が許容範囲でも、たわみが設計条件を満たさないことがあります。
断面選定では、耐力計算とたわみ計算を並行して進めることが効率的です。
開口部と設備貫通部の影響
ウェブに配管やダクトのための開口を設けると、せん断抵抗面積が減少し、応力が開口周囲へ集中します。
開口が中立軸付近にあっても、せん断力が大きい区間では影響が小さいとは限りません。
開口の寸法、形状、角部の処理、補強リングや補強板の有無によって耐力は変わります。
フランジ近くまで及ぶ大きな開口では、曲げ耐力にも影響するため、単純なウェブ欠損として扱えない場合があります。
設備計画と構造計画が別々に進むと、後から大きな補強が必要になることがあります。
早い段階で貫通位置を共有し、必要なら開口補強を断面設計へ組み込むことが望ましいでしょう。
計算結果の単位と安全確認
構造計算では、単位の混在が大きなミスにつながります。
ミリメートルとメートル、ニュートンとキロニュートン、N毎平方ミリメートルとメガパスカルを混同しないようにします。
断面二次モーメントは長さの四乗で表されるため、単位変換の影響が非常に大きくなります。
たとえばmmの四乗をmの四乗へ変換する場合、単純な千分の一では済みません。
計算書には使用単位、荷重条件、支持条件、材料種別、断面寸法、検定比を明記することが重要です。
計算値だけでなく、梁の向き、フランジの位置、補剛材の向き、実際の施工図との整合も確認してください。
フランジ・ウェブ強度計算のまとめ
フランジ・ウェブの強度計算では、フランジが主に曲げ応力を、ウェブが主にせん断力を負担するという基本を押さえることが出発点です。
断面二次モーメントは梁の曲がりにくさとたわみに関係し、断面係数は曲げ応力の確認に用いられます。
H形断面では、上下フランジが中立軸から離れていることで、少ない材料でも大きな曲げ剛性を得やすい特徴があります。
一方で、フランジの局部座屈、ウェブのせん断座屈、梁全体の横座屈、接合部の耐力、開口部の補強まで確認しなければ、実用的な構造計算にはなりません。
曲げモーメント、せん断力、たわみ、荷重条件を総合的に確認し、対象物に適用される規準に沿って設計を進めてください。
最終的な断面選定や安全性の判定は、構造設計の専門家による確認を受けることが大切です。