「地球の質量は約6.0×10²⁴kgと言われるけど、なぜそんな数字がわかるの?」「宇宙に行かずに地球の重さをどうやって測ったの?」そのような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
地球の質量は直接的に「はかりで測る」ことはできません。しかし重力加速度・万有引力の法則・歴史的なキャベンディッシュの実験などを組み合わせることで、非常に精度よく求めることができます。
本記事では、地球の質量の値・求め方の原理・万有引力の法則を使った計算方法・キャベンディッシュの実験の内容・現代における精密測定方法までをわかりやすく丁寧に解説いたします。
目次
地球の質量は約6.0×10²⁴kgであり「万有引力の法則と重力加速度から計算で求まる」
それではまず、地球の質量の値とその求め方の基本的な考え方について解説していきます。
地球の質量(M)の現在の精密な測定値は約5.972×10²⁴kgであり、概算として6.0×10²⁴kgという値が広く使われます。
この巨大な数値は直接測定されたものではなく、万有引力の法則・重力加速度の実測値・地球の半径の測定値を組み合わせた計算から導かれています。
地球の質量の求め方の基本原理:地球表面での重力加速度g(約9.8m/s²)・地球の半径R(約6.4×10⁶m)・万有引力定数G(6.674×10⁻¹¹N・m²/kg²)の3つの値がわかれば、万有引力の法則から地球の質量Mを計算できます。これが地球の質量を求める最も基本的なアプローチです。
万有引力の法則とは
万有引力の法則(Newton’s law of universal gravitation)は、イギリスの物理学者アイザック・ニュートン(Isaac Newton)が1687年に発表した法則です。
任意の2つの質量M・m(kg)の物体が距離r(m)だけ離れているとき、両者の間には以下の引力Fが働きます。
万有引力の法則:F = G × M × m ÷ r²
F:引力(N)
G:万有引力定数(6.674×10⁻¹¹ N・m²/kg²)
M:物体1の質量(kg)(地球の場合:地球の質量)
m:物体2の質量(kg)(地表の物体)
r:2物体間の距離(m)(地球中心から地表までの距離=地球の半径R)
地球表面にある質量mの物体に対して、地球(質量M)が引き寄せる力がその物体の重力(mg)に等しいと置くことで、地球の質量Mを求める式が導かれます。
地球の質量を求める計算式の導出
地球表面で万有引力が重力として現れることを利用します。
重力 = 万有引力 より:
m × g = G × M × m ÷ R²
両辺をmで割ると:
g = G × M ÷ R²
Mについて解くと:
M = g × R² ÷ G
M:地球の質量(kg)
g:重力加速度(≒9.8m/s²)
R:地球の半径(≒6.4×10⁶m)
G:万有引力定数(6.674×10⁻¹¹N・m²/kg²)
この式に数値を代入することで地球の質量を計算することができます。
地球の質量の具体的な計算方法
続いては、実際に数値を代入して地球の質量を計算する手順を確認していきます。
式の意味を理解しながら計算を進めることで、物理的な直感が養われます。
数値の代入と計算
M = g × R² ÷ G
g = 9.8 m/s²
R = 6.4 × 10⁶ m
G = 6.674 × 10⁻¹¹ N・m²/kg²
R² =(6.4 × 10⁶)² = 40.96 × 10¹² = 4.096 × 10¹³ m²
g × R² = 9.8 × 4.096 × 10¹³ = 40.14 × 10¹³ = 4.014 × 10¹⁴
M = 4.014 × 10¹⁴ ÷ 6.674 × 10⁻¹¹
=(4.014 ÷ 6.674)× 10¹⁴⁺¹¹
= 0.6015 × 10²⁵
≒ 6.0 × 10²⁴ kg
この計算によって、地球の質量が約6.0×10²⁴kgと求まります。
この計算式の本質は「重力加速度g・地球の半径R・万有引力定数Gがわかれば地球の質量Mが求まる」というシンプルな構造であり、3つの物理量が地球の質量を決定することがわかります。
各パラメータの測定方法
地球の質量を求めるには、g・R・Gの3つの値を実測する必要があります。
| 物理量 | 値 | 測定方法 |
|---|---|---|
| 重力加速度g | 9.80665m/s²(標準値) | 振り子の周期測定・自由落下実験・重力計 |
| 地球の半径R | 6.371×10⁶m(平均) | 測地学的測量・GPS・人工衛星観測 |
| 万有引力定数G | 6.674×10⁻¹¹N・m²/kg² | キャベンディッシュの実験・精密ねじり天秤 |
これら3つのうち、万有引力定数Gの精密測定が最も難しく、キャベンディッシュ(Cavendish)の実験がその歴史的な突破口となりました。
キャベンディッシュの実験とは
続いては、万有引力定数Gを初めて精密に測定し、地球の質量を求めることを可能にしたキャベンディッシュの実験の内容を確認していきます。
実験の背景と目的
イギリスの科学者ヘンリー・キャベンディッシュ(Henry Cavendish)は1798年、「地球の密度を求める」という目的でねじり天秤実験を行いました。
結果的にこの実験は万有引力定数Gの初めての精密測定となり、地球の質量を計算することを可能にしました。
「地球を秤にかけた(Weighing the Earth)」という言葉でも知られる歴史的な実験です。
実験の仕組み
キャベンディッシュの実験はねじり天秤(torsion balance)と呼ばれる装置を用います。
細い金属線(ワイヤー)の先に軽い棒を水平に吊るし、その両端に小さな鉛球(質量m)を取り付けます。
そして、外側から大きな鉛球(質量M)を近づけると、大きな鉛球と小さな鉛球の間の万有引力によって棒がわずかにねじれます。
実験の手順:
①ねじり天秤を静止させ、初期位置を記録する
②大きな鉛球(既知の質量)を小さな球に近づける
③ねじれ角度θを精密に測定する
④ワイヤーのねじり定数(既知)からねじり力を計算する
⑤F = G × M × m ÷ r² からGを逆算する
2物体間の万有引力は非常に微小(ナノニュートンオーダー)であるため、ねじり天秤という極めて感度の高い装置が必要でした。
キャベンディッシュはこの精密な実験によってGを求め、その結果から地球の平均密度が水の約5.45倍(現代の精密値は約5.51倍)と算出しました。
現代のキャベンディッシュ型実験
現代でも万有引力定数Gの精密測定には、キャベンディッシュの原理を踏襲したねじり天秤型実験が使われています。
現在の最良の測定値はG=6.67430×10⁻¹¹N・m²/kg²(CODATA推奨値)ですが、Gは物理定数の中で最も測定精度が低い値のひとつとして知られています。
物理定数の中でも万有引力定数Gの精密決定は今もなお重要な研究課題であり、2024年時点でも世界各地で測定実験が進められています。
地球の質量に関連するさまざまな知識
続いては、地球の質量にまつわる関連知識を確認していきます。
質量と密度・重力・他の天体との比較など、地球の質量を様々な観点から眺めることで理解が深まります。
地球の平均密度の計算
地球の質量と体積がわかれば、平均密度を計算できます。
地球の体積 V =(4/3)× π × R³
R = 6.371 × 10⁶ m
V =(4/3)× 3.1416 × (6.371×10⁶)³
≒ 1.083 × 10²¹ m³
平均密度 ρ = M ÷ V = 5.972×10²⁴ ÷ 1.083×10²¹ ≒ 5515 kg/m³ ≒ 5.5 g/cm³
地球の平均密度約5.5g/cm³は、地表を構成する岩石(約2.7〜3.0g/cm³)より大幅に高い値です。
この差は地球の中心部に鉄・ニッケルを主成分とする高密度の核(コア、密度約10〜13g/cm³)が存在することを示唆しており、地球内部構造の研究に重要な手がかりを与えています。
他の天体の質量との比較
| 天体 | 質量(kg) | 地球質量との比 |
|---|---|---|
| 月 | 7.34 × 10²² | 約0.0123倍 |
| 地球 | 5.97 × 10²⁴ | 1(基準) |
| 火星 | 6.42 × 10²³ | 約0.107倍 |
| 木星 | 1.90 × 10²⁷ | 約318倍 |
| 太陽 | 1.99 × 10³⁰ | 約333,000倍 |
地球は太陽系の惑星のなかで密度が最も高い岩石惑星のひとつですが、木星・土星といった巨大ガス惑星と比べると質量ははるかに小さいことが表から読み取れます。
重力加速度と地球の質量の関係
月面や他の惑星での重力加速度は、その天体の質量と半径から M = g × R² ÷ G の式で計算できます。
月面の重力加速度は約1.62m/s²であり、地球の約1/6です。
月の質量を計算すると約7.34×10²²kgとなり、地球の質量の約1/81であることが求まります。
この「重力加速度と半径がわかれば質量が求まる」という関係は、宇宙探査機が観測した惑星の重力データから質量を推定する現代の惑星科学でも基本的な手法として活用されています。
まとめ
本記事では、地球の質量の値・求め方の原理・万有引力の法則を使った計算方法・キャベンディッシュの実験・地球の密度と他天体との比較について詳しく解説してきました。
地球の質量は約6.0×10²⁴kg(精密値:5.972×10²⁴kg)であり、重力加速度g・地球の半径R・万有引力定数Gを用いて M=gR²÷G という式から計算されます。
万有引力定数Gは1798年のキャベンディッシュのねじり天秤実験によって初めて精密に測定され、これにより地球の質量計算が可能となりました。
地球の平均密度は約5.5g/cm³であり、地表岩石より高い密度は地球内部に高密度の鉄・ニッケル核が存在することを示しています。
万有引力の法則と重力加速度を組み合わせた質量計算の手法は、現代の惑星科学・宇宙探査においても基本的な手法として広く活用されているでしょう。