フェルミ準位と半導体の関係を理解することは、ダイオード・トランジスタ・太陽電池・LED・集積回路など現代の電子デバイスの動作原理を深く把握するための核心的知識です。
エネルギーバンド理論とフェルミ準位の組み合わせで、なぜシリコンが半導体として機能するのか・なぜドーピングで電気伝導性が変わるのかが明快に説明できます。
本記事では、エネルギーバンド理論の基礎・フェルミ準位との関係・n型・p型半導体の特性・pn接合での応用について詳しく解説していきます。
目次
エネルギーバンド理論の基礎
それではまず、フェルミ準位と半導体の関係を理解するためのエネルギーバンド理論の基礎について解説していきます。
固体中の電子は特定のエネルギー範囲(バンド)のみに存在でき、バンドとバンドの間の「禁制帯(バンドギャップ)」には電子が存在できません。
金属・半導体・絶縁体のバンド構造の違い
| 物質の種類 | バンドギャップ(Eg) | 電気伝導性 |
|---|---|---|
| 金属 | 0(バンドが重なる) | 高い(常温で導体) |
| 半導体(Si) | 約1.1 eV | 中程度(条件次第で導体) |
| 半導体(GaAs) | 約1.4 eV | 中程度 |
| 絶縁体(SiO₂) | 約9 eV | 低い(常温ではほぼ不導体) |
価電子帯・伝導帯・バンドギャップの意味
価電子帯(Valence Band:VB)は電子で満たされたエネルギーバンドであり、ここの電子は通常は移動できません。
伝導帯(Conduction Band:CB)は通常は空のエネルギーバンドであり、ここに電子が入ると自由に移動して電流が流れます。
バンドギャップ(Eg)はVBの上端とCBの下端のエネルギー差であり、電子が価電子帯から伝導帯に励起するために必要なエネルギーです。
フェルミ準位と半導体キャリア濃度の関係
続いては、フェルミ準位の位置と半導体のキャリア(電子・正孔)濃度の関係について確認していきます。
真性半導体のフェルミ準位とキャリア濃度
不純物を含まない真性半導体では、熱励起によって価電子帯から伝導帯に移った電子の数と、価電子帯に残された正孔の数が等しくなります。
この条件からフェルミ準位EFが決定され、真性半導体ではEFはバンドギャップのほぼ中央に位置します。
キャリア濃度ni(真性キャリア濃度)はni ∝ exp(-Eg/(2kBT))という指数関数的な温度依存性を持ちます。
n型・p型半導体のフェルミ準位変化
n型半導体(リン・ヒ素などのドナー不純物を添加)では余剰電子が伝導帯に供給されるため、電子が多い→フェルミ準位がECBに近い伝導帯側へ移動します。
p型半導体(ボロン・アルミニウムなどのアクセプタ不純物を添加)では正孔が増えるため、フェルミ準位がEVBに近い価電子帯側へ移動します。
ドーピング濃度が高いほどフェルミ準位はバンドエッジに近づき、超重度ドープでは縮退半導体(フェルミ準位がバンド内に入る)となります。
pn接合とフェルミ準位の整合
続いては、pn接合における熱平衡状態でのフェルミ準位の整合と内蔵電位の生成について確認していきます。
熱平衡時のフェルミ準位の一致
p型とn型半導体が接触すると、電子が濃度勾配に従ってn型からp型へ拡散し、正孔がp型からn型へ拡散します。
この電荷移動は熱平衡状態(フェルミ準位が空間的に一定になる状態)に達するまで続き、接合部に空乏層と内蔵電位が形成されます。
熱平衡状態では系全体のフェルミ準位が一定値になるというのが基本原理であり、外部電圧(順バイアス・逆バイアス)はこの平衡を崩してデバイスを動作させます。
太陽電池・LEDへの応用
太陽電池では光子によって価電子帯から伝導帯に電子が励起され、pn接合の内蔵電位によって電子と正孔が分離されて起電力が発生します。
LEDでは順バイアスを印加することで電子と正孔が再結合し、バンドギャップに相当するエネルギーの光子が放出されます。
まとめ
本記事では、エネルギーバンド理論の基礎・フェルミ準位とキャリア濃度の関係・n型・p型半導体でのフェルミ準位変化・pn接合での整合・太陽電池・LEDへの応用について詳しく解説しました。
半導体のバンドギャップ内に位置するフェルミ準位は、ドーピングによってn型では伝導帯側・p型では価電子帯側へ移動し、キャリア濃度の変化を引き起こします。
pn接合では熱平衡でフェルミ準位が一致するように内蔵電位が形成され、これがダイオード・太陽電池・LEDなどの動作の基礎となります。
フェルミ準位とバンド理論の理解を深めることで、現代の電子デバイス設計・半導体材料工学への理解が格段に広がるでしょう。