ヌセルト数とは?意味や定義をわかりやすく解説!(熱伝達:対流熱伝達率:無次元数:レイノルズ数・プラントル数との関係など)
ヌセルト数は、流体と壁面の間でどれほど効率よく熱が伝わるかを表す無次元数です。
熱交換器、配管、空調機器、電子機器の冷却などでは、対流熱伝達率を見積もるための重要な指標になります。
本記事では、定義式の意味からレイノルズ数とプラントル数との関係、実務での計算手順までを順に解説します。
ヌセルト数の意味と熱伝達性能

それではまずヌセルト数の意味と、熱伝達における役割について解説していきます。
ヌセルト数が示す熱の伝わりやすさ
ヌセルト数は英語でNusselt numberと呼ばれ、一般にNuで表されます。
流体の対流によって生じる熱移動が、流体が静止しているときの熱伝導だけによる熱移動と比べて、どの程度大きいかを示す数値です。
Nuが大きいほど、流体の流れによって熱が活発に運ばれ、壁面と流体の間で熱交換しやすい状態と考えられます。
たとえば冷たい水を流して高温の配管を冷やす場合、水の流れが弱いと壁面近くに温まった水の層ができ、熱が移動しにくくなります。
一方で流速を高めると、この層が薄くなり、より低温の水が壁面付近へ供給されます。
このような流れによる熱伝達の改善を、数値として捉えるために使われるのがヌセルト数です。
対流熱伝達率との関係
ヌセルト数そのものには単位がありません。
実際に必要となることが多い対流熱伝達率は、熱伝達係数とも呼ばれ、通常はhで表されます。
Nu = hL ÷ λ
Nuはヌセルト数、hは対流熱伝達率、Lは代表長さ、λは流体の熱伝導率です。
この式を変形すると、対流熱伝達率はh = Nuλ ÷ Lとして求められます。
つまり、実験式や相関式からNuを求められれば、流体の物性値と配管径や板の長さを用いて、熱伝達率を計算できます。
熱計算で重要なのは、Nuを目的にするのではなく、Nuから実用的な熱伝達率hへ換算することです。
無次元数として扱う利点
熱伝達率は、流体の種類、温度、流速、装置の大きさによって大きく変化します。
空気と水では熱伝導率や粘度が異なり、同じ配管でも同じ熱伝達率にはなりません。
そこで単位を持つ値をそのまま比較するのではなく、支配的な要因を組み合わせた無次元数で整理します。
ヌセルト数を使うと、実験で得られた知見を似た条件の設備へ展開しやすくなります。
ヌセルト数は、流れが熱伝導の壁をどの程度弱めているかを表す尺度です。
冷却や加熱の設計では、Nuを経由して熱伝達率を求め、必要な伝熱面積や流量を判断します。
定義式を構成する物理量
続いてはヌセルト数の定義式を構成する各要素を確認していきます。
代表長さの選び方
定義式に含まれるLは代表長さです。
代表長さの選定は、計算結果を左右するため慎重に扱う必要があります。
円管内を流れる流体では、通常は管内径を代表長さとして採用します。
平板に沿って空気が流れる外部流れでは、流れ方向の先端からの距離や平板長さが使われます。
円柱の周囲を流体が横切る場合には、円柱の外径が基準です。
使用する相関式が想定している代表長さと、計算に入れる代表長さは必ず一致させることが基本になります。
流体の熱伝導率
λは流体の熱伝導率です。
熱伝導率が大きい流体ほど、温度差による熱の移動を起こしやすい性質があります。
一般に水は空気よりも熱伝導率が高いため、同じような流れの条件でも冷却媒体として高い性能を発揮しやすい傾向があります。
ただし、熱伝導率だけでは熱伝達性能を決められません。
粘度、比熱、密度、流速も流れ方と温度境界層に影響するため、総合的に確認する必要があります。
局所ヌセルト数と平均ヌセルト数
流体が平板に沿って流れると、流れの入口側と出口側では温度境界層の発達状態が異なります。
このとき、ある位置だけの熱伝達を表す値が局所ヌセルト数です。
伝熱面全体の性能を見たい場合には、平均ヌセルト数を用います。
| 種類 | 対象 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 局所ヌセルト数 | 特定位置の熱伝達 | 壁面温度分布や局部過熱の確認 |
| 平均ヌセルト数 | 面全体または区間全体 | 総放熱量や熱交換器の設計 |
| 管内平均ヌセルト数 | 管内の流体 | 配管やジャケットの熱計算 |
相関式に平均値と局所値のどちらが示されているかを見落とすと、熱負荷の評価にずれが生じるでしょう。
レイノルズ数とプラントル数の関係
続いては、ヌセルト数を支配するレイノルズ数とプラントル数の関係を確認していきます。
レイノルズ数が表す流れの状態
レイノルズ数はReで表され、慣性力と粘性力の比を示す無次元数です。
Re = ρuL ÷ μ
ρは密度、uは代表流速、Lは代表長さ、μは粘度です。
Reが小さい流れは層流になりやすく、流体は比較的整った状態で流れます。
Reが大きくなると乱流へ移行し、流体は複雑に混ざり合うようになります。
乱流では壁面付近の流体も入れ替わりやすく、熱が運ばれやすくなるため、Nuは大きくなりやすい特徴があります。
流速を上げてReを増やすことは、熱伝達率を高める代表的な方法ですが、圧力損失やポンプ動力も増加します。
プラントル数が表す熱の拡散性
プラントル数はPrで表され、運動量の拡散と熱の拡散の比を示す無次元数です。
Pr = ν ÷ α
νは動粘度、αは温度伝導率です。
Prが大きい流体では、速度の変化より温度の変化が広がりにくい傾向があります。
油類は一般にPrが大きく、熱境界層と速度境界層の厚さの関係を考慮する必要があります。
空気や水でも温度により物性値が変わるため、計算時には適切な代表温度で物性値を選びます。
相関式に現れる指数の意味
多くの対流熱伝達の相関式は、Nu = CReのm乗Prのn乗という形で表されます。
C、m、nは流れの形状、層流か乱流か、壁温一定か熱流束一定かなどによって変わります。
| 要素 | ヌセルト数への主な影響 | 設計上の確認点 |
|---|---|---|
| Re | 流れの攪拌と境界層の薄さ | 流速、管径、粘度、流動様式 |
| Pr | 熱境界層の発達 | 流体種類、温度、物性値 |
| 形状 | 流れのはく離や入口効果 | 円管、平板、円柱、熱交換器 |
| 境界条件 | 温度分布と平均熱伝達 | 壁温一定、熱流束一定 |
Nuの相関式は、ReとPrだけを機械的に代入すればよいわけではありません。
流れの形状、流動域、温度境界条件が適用範囲と合っていることが前提です。
対流熱伝達の相関式
続いては、ヌセルト数を求めるために用いる代表的な相関式の考え方を確認していきます。
円管内の十分に発達した層流
円管内で速度分布と温度分布が十分に発達した層流では、条件によってNuがほぼ一定値として扱われる場合があります。
代表例として、壁温一定条件の円管内層流ではNuが3.66となる条件が知られています。
ただし、この値は入口部の影響を無視できる場合に限られます。
短い配管や粘度の高い流体では、熱的に発達するまでの区間が長くなり、単純な一定値では評価できないことがあります。
入口部では熱伝達率が高く出やすいため、熱的助走区間を含むかどうかの判断が重要です。
円管内の乱流
円管内乱流では、ディッタス ボールター型の相関式が広く参照されます。
代表的にはNu = 0.023Reの0.8乗Prのn乗のような形で整理されます。
nは流体を加熱する場合と冷却する場合で異なる扱いになることがあります。
この種の式は滑らかな管、十分に発達した乱流、一定の物性条件などを前提とします。
高粘度流体、粗面管、極端な温度差、相変化を伴う系では、別の相関式や補正が必要になるでしょう。
外部流れと自然対流
平板や円柱の外側を流体が流れる場合は、外部流れ用の相関式を使います。
また、ファンやポンプで流れを作らず、温度差による密度差だけで流体が動く現象は自然対流です。
自然対流ではReではなく、グラスホフ数やレイリー数を用いてNuを整理することが一般的です。
強制対流と自然対流が同時に起こる設備では、混合対流として扱う必要があります。
同じヌセルト数でも、強制対流と自然対流では使う相関式の前提が異なります。
流れを生む要因を確認してから、適切な無次元数の組み合わせを選びましょう。
計算手順と実務上の注意点
続いては、ヌセルト数から熱伝達率を求める実務的な手順を確認していきます。
流動条件と形状の整理
最初に、流体が管内を流れるのか、平板や円柱の外側を流れるのかを整理します。
次に管径、流路長さ、流速、流量、壁面温度、流体入口温度などの設計条件をそろえます。
流量しか分からない場合には、流路断面積から平均流速へ換算します。
そのうえでReを算出し、層流、遷移域、乱流のどこに該当するかを判断します。
遷移域は流れが不安定で、単純な層流式や乱流式の適用が難しい領域です。
物性値を取得する温度
物性値は温度によって変化します。
特に粘度は温度の影響を受けやすく、ReやPrの計算精度に大きく関わります。
一般には、壁面温度と流体の代表温度の平均に近い膜温度で物性値を評価する方法が使われます。
ただし、採用する規格や相関式に物性値の評価温度が定められている場合は、その条件を優先します。
物性値の温度条件を曖昧にすると、数式が正しくても熱伝達率の見積もりがずれるため注意が必要です。
計算結果の妥当性確認
Nuを求めてhへ換算した後は、得られた値が常識的な範囲かを確認します。
空気の自然対流と、水の強制対流では熱伝達率の桁が大きく異なります。
圧力損失、ポンプ動力、汚れ係数、管壁の熱抵抗も、実設備の総合的な熱性能に影響します。
対流熱伝達率だけを高くしても、壁材や付着物による熱抵抗が大きければ、期待した熱交換量にならない場合があります。
総括伝熱係数を求める際は、流体側の対流熱抵抗、管壁の伝導熱抵抗、反対側流体の対流熱抵抗を合算します。
ヌセルト数から得るhは、そのうち流体側熱抵抗を評価するための重要な値です。
ヌセルト数のまとめ
ヌセルト数は、対流による熱移動の強さを熱伝導と比較して表す無次元数です。
Nuが大きいほど、流体の混合や境界層の変化によって熱が伝わりやすい状態と考えられます。
設計ではNuを求めた後、熱伝導率と代表長さを用いて対流熱伝達率hへ換算する流れが基本です。
ヌセルト数はレイノルズ数とプラントル数に強く関係し、流速、粘度、熱拡散性、流路形状によって変化します。
相関式を使う際は、層流や乱流といった流動状態、代表長さ、境界条件、物性値の評価温度を一致させることが欠かせません。
熱交換器や冷却配管の性能を適切に見積もるには、Nuの値だけでなく、圧力損失や管壁抵抗も含めて総合的に評価することが大切です。