エンタルピーの発熱と吸熱の見分け方は?(符号(プラス・マイナス):ΔHの意味:反応エンタルピーなど)

化学反応や状態変化を学ぶ際に、発熱反応と吸熱反応のどちらなのか、ΔHのプラスとマイナスが何を示すのかで迷うことは少なくありません。

特に、熱が出る反応なのにエンタルピーの値がマイナスになる点は、直感と反対に感じやすい部分でしょう。

この記事では、反応エンタルピーの基本から符号の読み方、化学式の見方、計算時の注意点までを順に整理します。

エンタルピーの発熱と吸熱の判断基準

エンタルピーの発熱と吸熱の判断基準

それではまず、エンタルピーの発熱と吸熱を見分けるための結論となる基準について解説していきます。

ΔHの符号と熱の移動

発熱反応は、反応する物質から周囲へ熱が移る反応であり、反応エンタルピーΔHはマイナスになります。

一方で吸熱反応は、周囲から反応系へ熱を受け取る反応であり、ΔHはプラスです。

ここで重要なのは、ΔHが示すのは熱そのものの量だけではなく、反応前後における系のエンタルピー変化だという点です。

発熱では反応後の物質が持つエンタルピーが反応前より小さくなり、その差が熱として外部へ放出されます。

吸熱では反対に、反応後の物質のエンタルピーが大きくなるため、外部からエネルギーを取り込む必要があります。

発熱反応はΔHがマイナス、吸熱反応はΔHがプラスです。

符号は温度の上がり下がりだけではなく、反応系を基準にして熱がどちらへ移動したかで判断します。

反応系と周囲の区別

符号を混乱なく理解するには、反応が起こる部分である反応系と、その外側にある周囲を分けて考えることが役立ちます。

たとえば燃焼では、燃料と酸素が反応系にあたり、空気や容器、手で触れる周辺が周囲にあたります。

燃焼すると周囲が暖かくなるため、反応系は熱を失っています。

その結果、反応系のエンタルピーは減少し、ΔHはマイナスとなります。

反対に、冷却パックの一部では塩が水に溶けるときに周囲から熱を受け取ります。

手で持つと冷たく感じるのは、周囲の熱が反応系へ移っているためであり、吸熱変化として扱います。

温度変化だけに頼らない読み方

温度が上がれば発熱、下がれば吸熱と考える方法は分かりやすい一方で、条件によっては判断を誤ることがあります。

たとえば、反応系に外部から加熱を続けながら反応を進める場合、容器全体の温度だけでは反応本来の熱の出入りを判断できません。

また、温度上昇は反応熱以外に、攪拌による摩擦や外部からの熱の流入でも起こります。

問題文や実験では、熱がどこからどこへ移ったか、反応式に熱がどちら側に書かれているかを確認する習慣が大切です。

変化の種類 熱の移動 ΔHの符号 周囲の変化
発熱反応 反応系から周囲へ移動 マイナス 温まりやすい
吸熱反応 周囲から反応系へ移動 プラス 冷えやすい
発熱の状態変化 物質から周囲へ移動 マイナス 凝縮や凝固で熱が出る
吸熱の状態変化 周囲から物質へ移動 プラス 融解や蒸発で熱を受け取る

反応エンタルピーとΔHの意味

続いては、反応エンタルピーとΔHが何を表しているのかを確認していきます。

エンタルピーの基本的な考え方

エンタルピーは、物質が持つエネルギーを熱の出入りと結び付けて扱うための状態量です。

高校化学では、厳密な式を覚えるよりも、一定圧力のもとで反応したときの熱の出入りと関係する量として理解すると扱いやすいでしょう。

反応物のエンタルピーから生成物のエンタルピーを引いた結果ではなく、通常は生成物のエンタルピーから反応物のエンタルピーを引いた差としてΔHを考えます。

生成物のほうが低い位置にある場合は差が負になり、余ったエネルギーが熱として放出されます。

生成物のほうが高い位置にある場合は差が正になり、反応を進めるために外部から熱を受け取る必要があります。

ΔHは、生成物のエンタルピーから反応物のエンタルピーを引いた変化量として考えます。

ΔH = 生成物のエンタルピー - 反応物のエンタルピー

反応式における熱の位置

熱化学方程式では、熱を化学式の一部として表す場合があります。

発熱反応では熱が生成物側に書かれ、吸熱反応では熱が反応物側に書かれる形です。

たとえば、水素と酸素から水ができる反応では、反応後に熱が出るため、熱は右側に置かれます。

一方、水を電気分解と逆向きに分解して水素と酸素へ戻すにはエネルギーが必要であり、熱を左側に置く考え方になります。

ただし、最近の問題では熱を式の左右に書かず、ΔHの値だけを示す表記も多く見られます。

その場合は、数値の前にあるプラスまたはマイナスを最優先で確認してください。

単位と反応式の係数

反応エンタルピーの単位には、kJやkJ molが使われます。

kJ molは、反応式に示された量の反応が1組進んだときのエンタルピー変化を表すという考え方です。

反応式の係数を2倍にすれば、反応する物質量も熱の出入りも2倍になります。

したがって、ΔHの値も係数に応じて2倍にしなければなりません。

反応式を逆向きにした場合は、発熱と吸熱が入れ替わるため、ΔHの符号も反対になります。

反応式を2倍にしたときはΔHも2倍です。

反応式を逆向きにしたときは、ΔHの数値の大きさは同じで符号だけが反転します。

発熱反応と吸熱反応の代表例

続いては、日常や化学の学習でよく出る発熱反応と吸熱反応の例を確認していきます。

燃焼と中和の発熱変化

燃焼は、発熱反応の代表例です。

木材、ろう、ガソリン、メタンなどが酸素と反応すると、二酸化炭素や水のような安定した物質が生じ、熱が周囲へ放出されます。

酸と塩基の中和も、多くの場合は発熱を伴います。

塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜたときに温度が上がるのは、水素イオンと水酸化物イオンから水が生じる過程で熱が出るためです。

このような反応では、生成物側のエネルギーが反応物側より低いという関係をイメージすると理解しやすくなります。

溶解と状態変化の吸熱変化

物質が水に溶けるときには、発熱する場合と吸熱する場合があります。

そのため、溶解したという事実だけで符号を決めることはできません。

硝酸アンモニウムなどを水に溶かすと周囲から熱を受け取り、温度が下がることがあります。

これは吸熱変化であり、ΔHはプラスです。

また、氷が水へ変わる融解、水が水蒸気になる蒸発も、周囲から熱を受け取る必要があるため吸熱変化に分類されます。

粒子間の結び付きから離れるにはエネルギーが必要になる、と考えると整理しやすいでしょう。

凝固と凝縮の発熱変化

液体が固体になる凝固、気体が液体になる凝縮は発熱変化です。

水蒸気が冷えた窓に付着して水滴になるとき、気体だった水分子は近づいて液体になります。

このとき分子間の引力によってエネルギーが低下し、その差が熱として周囲へ移ります。

水が氷になるときも同様で、冷やされている最中であっても、水そのものは凝固の過程で熱を放出しています。

外部が熱を奪っているから固まるのであり、物質側では発熱が起きているという見方がポイントです。

融解と蒸発は吸熱変化です。

凝固と凝縮は発熱変化です。

状態変化では、温度の印象ではなく、粒子が離れるのか近づくのかを考えると符号を判断しやすくなります。

エネルギー図による符号の読み取り

続いては、反応のエネルギー図から発熱と吸熱を読み取る方法を確認していきます。

発熱反応における高さの関係

発熱反応のエネルギー図では、反応物が高い位置にあり、生成物が低い位置に描かれます。

高い位置から低い位置へ下がった差が、外部に放出されるエネルギーです。

そのため、縦軸をエンタルピーとして見たとき、反応物から生成物へ向かう矢印は下向きになります。

下向きの変化は負の変化であるため、ΔHはマイナスです。

図を見て発熱か吸熱かを問われたら、生成物が反応物より下にあるかを最初に確認してください。

吸熱反応における高さの関係

吸熱反応のエネルギー図では、反応物より生成物が高い位置にあります。

反応を進めた後の状態のほうが多くのエネルギーを持つため、その差を外部から与える必要があります。

反応物から生成物への矢印は上向きとなり、エンタルピー変化は正です。

反応の途中で一度大きく山が描かれていても、発熱か吸熱かを決めるのは山の高さではありません。

最初と最後の高さの差だけを見て、ΔHの符号を判断します。

活性化エネルギーとの違い

エネルギー図で混同しやすいのが、反応エンタルピーと活性化エネルギーです。

活性化エネルギーは、反応物が反応途中の高い状態へ到達するために必要なエネルギーを指します。

発熱反応であっても、反応を始めるために加熱や点火が必要となることがあります。

燃焼に火を付ける操作がその例です。

しかし、点火後に全体として熱を放出するなら、その反応のΔHはマイナスとなります。

反応開始に必要なエネルギーと、反応全体で出入りする熱は別の量として分けて覚えることが重要です。

比較する量 示す内容 図で見る場所
反応エンタルピー 反応前後のエネルギー差 反応物と生成物の高さの差
活性化エネルギー 反応開始に必要なエネルギー 反応物から山の頂上までの差
発熱反応 熱を外部へ放出する反応 生成物が反応物より低い
吸熱反応 熱を外部から受け取る反応 生成物が反応物より高い

熱化学方程式と計算時の注意点

続いては、熱化学方程式や反応熱の計算で間違えやすい点を確認していきます。

反応式を逆にする場合

ある反応が発熱反応なら、その逆反応は同じ大きさの吸熱反応です。

たとえば、物質Aから物質BができるときのΔHがマイナス100kJであれば、物質Bから物質Aへ戻るときのΔHはプラス100kJになります。

数値の絶対値だけを書き換えず、必ず符号まで反転させる必要があります。

ヘスの法則を使う問題では、複数の反応式を足し引きするため、この操作を何度も行うことがあります。

式を反転させた箇所には、符号を変えたことを明記すると計算ミスを防ぎやすいでしょう。

ΔHがマイナス100kJの反応を逆向きにすると、ΔHはプラス100kJです。

逆反応では発熱と吸熱が必ず入れ替わります。

係数倍と物質量の対応

熱化学方程式は、係数まで含めて一つの反応として扱います。

たとえば、反応式全体を3倍にしたとき、反応エンタルピーも3倍です。

ただし、化学式の係数を整数に直しただけなのか、基準となる反応量自体を変えたのかを問題文に沿って確認する必要があります。

標準生成エンタルピーの表を用いる計算では、各物質の係数を掛けてから合計する流れになります。

係数の掛け忘れは、符号を正しく理解していても答えを大きく誤る原因になります。

生成エンタルピーを用いる計算

標準生成エンタルピーを使う場合、反応エンタルピーは生成物側の合計から反応物側の合計を引いて求めます。

これは、反応物をいったん単体へ戻し、そこから生成物を作る流れを考えることで理解できます。

計算途中でマイナスの値を引く場合は、符号が変わることに注意してください。

最後に得られた値が負なら発熱、正なら吸熱です。

計算結果と、燃焼や分解などの反応の性質が大きく食い違う場合には、係数、引く順番、単位を再確認するとよいでしょう。

反応エンタルピーの計算では、生成物側の合計から反応物側の合計を引きます。

得られたΔHが負なら発熱、正なら吸熱として判断します。

エンタルピーの発熱と吸熱のまとめ

エンタルピーにおける発熱と吸熱は、反応系を基準にして熱がどちらへ移動したかで見分けます。

発熱反応では反応系から周囲へ熱が出るためΔHはマイナスとなり、吸熱反応では周囲から反応系へ熱が入るためΔHはプラスです。

燃焼、中和、凝固、凝縮は発熱の代表例です。

融解、蒸発、一部の溶解、熱分解は吸熱として扱われることが多いでしょう。

エネルギー図では、生成物が反応物より低ければ発熱、高ければ吸熱と判断できます。

また、反応式を逆向きにするとΔHの符号が反転し、係数を変えるとΔHの大きさも同じ倍率で変化します。

符号だけを暗記するのではなく、反応系、周囲、エネルギーの高さという三つの視点で確認すれば、反応エンタルピーの問題を安定して解けるようになります。

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