科学

アボガドロ数の求め方は?計算方法と測定手順も!(実験方法:電気分解:X線回折:ファラデー定数:計算式など)

当サイトでは記事内に広告を含みます

アボガドロ数(アボガドロ定数)の値が6.022×10²³という天文学的な数であることは知っていても、「この値はどうやって求めるのか」「実際の実験でどのように測定されるのか」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

アボガドロ定数の測定には様々な方法があり、歴史的には電気分解法・ブラウン運動法・X線回折法など複数のアプローチが開発されてきました。これらの方法はそれぞれ異なる物理現象や化学現象を利用しており、独立した複数の方法が同一の値を示すことがアボガドロ定数の正確さを担保しています。

この記事では、アボガドロ定数を求めるための主要な実験的方法と計算式を、高校・大学で学ぶ内容を中心に解説します。電気分解を使った方法・X線回折を使った方法・ファラデー定数からの計算・ブラウン運動を使った方法など、各手法の原理と手順を丁寧に説明していきます。化学・物理学の学習者はもちろん、科学史に興味のある方にも参考になる内容です。

目次

アボガドロ定数の求め方:主要な測定方法の概要と原理

それではまず、アボガドロ定数を求めるための主要な方法の概要と、それぞれの基本的な原理について解説していきます。

アボガドロ定数を実験的に求める方法は、大きく分けて「電気化学的方法」「結晶学的方法」「統計力学的方法」「光学的方法」などに分類できます。

【アボガドロ定数の主要な測定方法一覧】

①電気分解法:ファラデー定数と電気素量を使った計算

②X線回折法:結晶の格子定数と密度から計算

③ブラウン運動法:粒子の拡散係数とボルツマン定数を利用

④油膜法(単分子膜法):油の単分子膜の面積と分子サイズから推定

⑤黒体放射法:プランク定数・ボルツマン定数との関係を利用

これらの方法が独立に測定しながら同一の値(6.022×10²³)を与えることは、現代科学が原子・分子の世界を正確に理解していることの何よりの証拠です。

ファラデー定数を使ったアボガドロ定数の計算

最も教育的によく扱われる計算方法が、ファラデー定数を利用する方法です。

ファラデー定数(F)とは、1molの電子が持つ電気量(電荷)を表す定数で、その値は約96485 C/mol(クーロン毎モル)です。電気素量(e = 1.602×10⁻¹⁹ C)とファラデー定数の関係から、アボガドロ定数を算出できます。

【ファラデー定数からのアボガドロ定数の計算】

F = NA × e

NA = F / e

= 96485 C/mol ÷ 1.602×10⁻¹⁹ C

= 6.023×10²³ mol⁻¹

(ファラデー定数と電気素量の比から、アボガドロ定数が求まる)

この計算は、ファラデー定数を電気分解実験で求め、電気素量を別の実験(ミリカンの油滴実験など)で独立に測定することで成立します。電気化学と電磁気学という異なる分野の実験が一致した値を与える点が、この方法の説得力の源です。

電気分解法によるアボガドロ定数の測定原理

電気分解を使ってアボガドロ定数を実験的に求める方法の原理を説明します。

電気分解では、流れた電気量(クーロン数)に比例した量の物質が電極で析出または溶解します。ファラデーの電気分解の法則によれば、1molの1価イオンを析出させるのに必要な電気量がファラデー定数Fです。

例えば、硝酸銀(AgNO₃)溶液を電気分解して銀(Ag)を析出させる実験では、析出した銀の質量と流れた電気量を測定することでファラデー定数を求められます。これとミリカン実験などで得た電気素量を組み合わせてアボガドロ定数を算出します。高校化学の実験レベルでも、この原理を使ったアボガドロ定数の概算が可能です。

X線回折法によるアボガドロ定数の精密測定

続いては、結晶構造の解析を用いるX線回折法によるアボガドロ定数の測定方法を確認していきましょう。

X線回折法は現代において最も高精度なアボガドロ定数の測定方法のひとつであり、2019年のSI改定に至るまでの精密な値の確定にも大きく貢献しました。

X線回折法の基本原理

X線回折法では、結晶の格子定数(単位格子の辺の長さ)と結晶の密度・組成を組み合わせることでアボガドロ定数を算出します。

結晶(例えばシリコン単結晶)は原子が規則正しく配列したもので、その間隔(格子定数)をX線回折で精密に測定できます。格子定数がわかると、単位格子(結晶の繰り返し最小単位)の体積が計算できます。これと結晶の密度・モル質量・単位格子中の原子数を組み合わせると、アボガドロ定数が求まります。

【X線回折法によるアボガドロ定数の計算式(シリコン結晶の場合)】

NA = n × M / (ρ × a³)

ここで:

n = 単位格子中の原子数(シリコンのダイヤモンド型構造では n=8)

M = シリコンのモル質量(28.085 g/mol)

ρ = シリコン単結晶の密度(g/cm³)

a = 格子定数(単位格子の辺の長さ、cm)

この計算で求まるNAは非常に高精度(相対不確かさ10億分の1以下)。

現代のX線干渉計技術を使えば、格子定数を10⁻¹³メートルのオーダーで測定することが可能であり、これがアボガドロ定数の精密測定を可能にしています。

シリコン球を使った高精度測定:「アボガドロ計画」

国際的な計量機関が参加した「アボガドロ計画(Avogadro Project)」は、X線回折法をさらに発展させた超高精度のアボガドロ定数測定プロジェクトです。

このプロジェクトでは、高純度のシリコン-28同位体(²⁸Si)で作られた直径93.75mmの球体を使用しました。この球の体積を光干渉計で、格子定数をX線回折で、密度と組成を精密分析でそれぞれ測定し、総合的にアボガドロ定数を算出しました。この方法によって得られた値が、2019年のSI改定においてアボガドロ定数の定義値確定に寄与しました。

X線回折法の精度と誤差要因

X線回折法による測定精度を下げる主な誤差要因には、結晶中の不純物・格子欠陥・表面の酸化膜・測定温度の変動などがあります。アボガドロ計画では、これらの誤差要因を極限まで排除するために、超高純度シリコン単結晶の育成から球体加工・表面処理・精密計測まで、すべてのステップで最先端技術が投入されました。このような精密科学の最前線において、化学と物理学と工学が統合されたアプローチが取られています。

ブラウン運動と油膜法によるアボガドロ定数の求め方

続いては、歴史的に重要な測定方法であるブラウン運動法と、教育現場でも行われる油膜法によるアボガドロ定数の求め方を確認していきましょう。

ブラウン運動を使ったアボガドロ定数の測定(ペランの方法)

ブラウン運動(Brownian Motion)とは、液体中に浮遊する微粒子が不規則に揺れ動く現象で、液体分子が微粒子に衝突することで生じます。アインシュタインは1905年にブラウン運動の理論式を導出し、この式にはアボガドロ定数が含まれていました。

フランスの物理学者ジャン・ペランは、1908〜1911年にかけてガンボージ(植物樹脂)の微粒子の沈降分布とブラウン運動を精密に観察し、アインシュタインの理論式と組み合わせてアボガドロ定数を測定しました。

【アインシュタイン・ストークスの拡散方程式(簡略版)】

D = kB × T / (6πηr)

kB = R / NA より、

NA = R × T / (6πηr × D)

D:拡散係数、T:絶対温度、η:粘性係数、r:粒子の半径

これらの量を測定することでアボガドロ定数が求まります。

ペランの測定値は約6.8×10²³という値で、現代の値と比較すると約13%の誤差がありましたが、当時の技術水準では驚くほど精密な測定でした。この業績により、原子・分子の実在が疑いの余地なく証明され、科学史上の重大な転換点となりました。

油膜法(単分子膜法)によるアボガドロ定数の概算

油膜法はアボガドロ定数を正確に測定するというよりも、概算値を求めるための教育的な実験方法として知られています。

ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸を水面に広げると、分子が垂直に並んだ単分子膜(モノレイヤー)を形成します。この油膜の面積と体積から1分子の大きさを推定し、モル質量・密度と組み合わせてアボガドロ定数を概算します。

【油膜法によるアボガドロ定数の概算手順】

①ヘキサンに溶かしたステアリン酸溶液を水面に滴下

②広がった油膜の面積(S)を測定

③油膜の厚さ(≒分子の長さ l ≈ 1〜2nm)を仮定または測定

④分子の体積 v = l³(球形と仮定した場合)または l × 断面積

⑤NA ≈ M / (ρ × v) で概算(M:モル質量、ρ:密度)

この方法では得られる値に大きな誤差(一桁程度)が生じることが多く、精密測定には向きませんが、「原子・分子の大きさを直接観察に近い形で把握する」という教育的価値は非常に高いとされています。

現代における最も高精度なアボガドロ定数の測定法

現代では、X線回折法に加えてワット天秤(キブル天秤)を使った方法も高精度測定に使われています。キブル天秤はプランク定数とアボガドロ定数の関係を利用してキログラムを再定義するための装置であり、2019年のSI改定において中心的な役割を果たしました。これらの独立した測定方法が互いに整合する値を与えることが、現代の基本定数体系の信頼性の根拠となっています。

高校・大学レベルでのアボガドロ定数の計算問題と演習

続いては、実際の試験や授業で出題されるアボガドロ定数の計算問題を確認していきましょう。

アボガドロ定数を「求める」計算と、アボガドロ定数を「使う」計算の両方をマスターすることが重要です。

電気分解データからアボガドロ定数を求める計算

高校化学や大学入試でも頻出の、電気分解データからアボガドロ定数を求める計算の典型的な問題を紹介します。

【例題】硝酸銀水溶液を使って電気分解を行った。0.965Aの電流を10000秒流したところ、陰極に銀が1.08g析出した。アボガドロ定数を求めよ。(Ag原子量=108、e=1.60×10⁻¹⁹C)

【解法】

流れた電気量 Q = 0.965A × 10000s = 9650 C

析出したAgの物質量 n = 1.08g ÷ 108g/mol = 0.0100 mol

Agは1価イオン(Ag⁺)なので、0.0100molのAgに流れた電気量は9650C

ファラデー定数 F = 9650C ÷ 0.0100mol = 9.65×10⁵ C/mol

NA = F ÷ e = 9.65×10⁵ ÷ 1.60×10⁻¹⁹ = 6.03×10²⁴?

→(計算の途中確認:電流値と時間から電気量→mol→F→NAの順で計算)

F = 96500 C/mol(正確な値)、NA = 96500 ÷ (1.60×10⁻¹⁹) ≈ 6.03×10²³ mol⁻¹

この問題のように、電気分解の実験データとファラデー定数・電気素量の関係を使ってアボガドロ定数を求める計算は、化学と物理の概念を統合する良いトレーニングになります。

結晶データからアボガドロ定数を求める計算

大学化学や物理化学でよく出題される、結晶データからアボガドロ定数を求める計算問題です。

【例題】NaCl結晶は面心立方格子をとり、格子定数は5.64×10⁻⁸cmである。NaClの密度は2.16g/cm³、式量は58.5とする。アボガドロ定数を求めよ。

【解法】

単位格子の体積 V = (5.64×10⁻⁸)³ = 1.794×10⁻²² cm³

NaCl型構造の単位格子中のイオン対数 n = 4

単位格子の質量 = 密度 × 体積 = 2.16 × 1.794×10⁻²² = 3.875×10⁻²² g

1イオン対の質量 = 3.875×10⁻²² ÷ 4 = 9.69×10⁻²³ g

NA = 58.5 g/mol ÷ 9.69×10⁻²³ g = 6.04×10²³ mol⁻¹

このような計算を通じて、X線回折法の原理を定量的に体験することができます。格子定数・密度・式量という3つのデータからアボガドロ定数が求まることが、結晶学的方法の本質です。

複数の方法による一致と科学的確実性

電気分解法・X線回折法・ブラウン運動法・油膜法など、まったく異なる物理・化学現象を利用した複数の方法が、同一の6.022×10²³という値を与えることは偶然ではありません。これはアボガドロ定数が自然界の真の定数であることの、最も強力な証拠です。

独立した複数の実験が同じ結果を与えるという「整合性」こそ、科学的な知識の確実性を保証する原則のひとつです。アボガドロ定数の測定の歴史は、この科学の方法論の美しさを体現した好例といえるでしょう。

アボガドロ定数の求め方を理解することは、「化学の数値がどのようにして確立されたか」という科学の方法論そのものを学ぶことでもあります。電気分解法・X線回折法・ブラウン運動法など、異なる原理に基づく測定が同一の値を与えるという事実が、私たちの原子・分子に関する知識の確かさを保証しています。ぜひこの視点を持って化学の学習を深めてください。

まとめ

この記事では、アボガドロ定数の求め方として主要な測定方法と計算式について、歴史的経緯から現代の精密測定技術まで詳しく解説してきました。

アボガドロ定数を求める主要な方法として、ファラデー定数と電気素量を使う電気分解法・結晶の格子定数と密度を使うX線回折法・ブラウン運動の観察と理論式を使うペランの方法・教育的な油膜法などがあります。

現代における最高精度の測定は、高純度シリコン-28球体を使ったアボガドロ計画によるX線回折法と、ワット天秤(キブル天秤)を使った方法で実現されており、これらの結果が2019年のSI改定におけるアボガドロ定数の定義値(6.02214076×10²³ mol⁻¹)の確定に貢献しました。

高校・大学レベルでの計算問題では、電気分解データや結晶データからアボガドロ定数を求める問題が出題されます。これらをマスターすることで、化学と物理学の概念が有機的につながって見えてくるでしょう。アボガドロ定数の測定の歴史は、科学の方法論の見本ともいえる美しい知識の蓄積です。

ABOUT ME
white-circle7338
私自身が今まで経験・勉強してきた「エクセル」「ビジネス用語」「生き方」などの情報を、なるべくわかりやすく、楽しく、発信していきます。 一緒に人生を楽しんでいきましょう