物理の問題で「糸の張力を求めなさい」と言われたとき、どのように公式を立てればよいか迷う方は多いでしょう。
つり合い条件・運動方程式・加速度・摩擦力など、さまざまな要素が絡み合う糸の張力問題は、手順を正しく覚えることが重要です。
この記事では、糸の張力公式の導き方・2物体が運動する場合の計算例・摩擦力との関係まで丁寧に解説していきます。
目次
糸の張力公式の基本は「各物体の運動方程式を立てること」
それではまず、糸の張力公式の基本的な考え方と導出方法について解説していきます。
糸の張力には「これがいつでも使える公式」という一般式は存在せず、問題の状況に応じて運動方程式を立てて導く必要があります。
物体の運動状態(静止・等速・加速)を見極めてから、適切な式を組み立てることが大切です。
力のつり合い条件から張力を求める
物体が静止している場合、合力=0という条件から張力を求めます。
垂直につるされた物体(質量m、静止)
・上向き:張力T
・下向き:重力mg
・つり合い条件:T-mg=0
・公式:T=mg
斜め方向に糸が張られている場合は成分分解が必要です。
水平方向:T cosθ=F(水平力)、鉛直方向:T sinθ=mg という連立式を解いて張力を求めます。
加速度がある場合の張力公式
物体が加速している場合、運動方程式 F=ma を使います。
エレベーターで上向きに加速度aで動く質量mの物体
・上向きを正とする
・T-mg=ma
・公式:T=m(g+a)(上向き加速時)
・公式:T=m(g-a)(下向き加速時)
加速度の向きと大きさによって張力が変化することを、エレベーターの例で直感的に理解しておくと応用が利くでしょう。
軽い糸の条件と張力の一様性
物理の問題では「軽い糸(質量を無視する)」という条件が頻繁に使われます。
この条件のもとでは、糸のどの断面の張力も等しくなります。
「軽い糸」の条件は、複数の物体が同じ糸でつながれているときに、糸全体を通じて張力が一定値Tで表せるという計算上の大きなメリットをもたらします。
2物体が糸でつながれた場合の張力計算例
続いては、2物体が糸でつながれて運動する場合の張力計算例を確認していきます。
このパターンは入試でも頻出であり、手順の正確な把握が得点につながります。
水平面上の2物体を引く場合の張力
摩擦のない水平面上に物体A(質量m₁)と物体B(質量m₂)が糸でつながれ、Aに水平方向の力Fが加わる場合を考えます。
全体の加速度:a=F÷(m₁+m₂)
Bについての運動方程式:T=m₂a=m₂F÷(m₁+m₂)
例:m₁=4kg・m₂=2kg・F=18N
a=18÷6=3 m/s² T=2×3=6 N
2物体問題では「全体→個別」の2段階アプローチで解くことが基本であり、この手順を習慣化することでミスを防げます。
鉛直方向の2物体(天井・糸・2つのおもり)の張力
天井から糸でつるされたおもり1(m₁)に、さらに糸でおもり2(m₂)がぶら下がっている場合、2本の糸の張力は異なります。
下の糸(おもり2を支える)の張力T₂:T₂=m₂g
上の糸(おもり1と2を支える)の張力T₁:T₁=(m₁+m₂)g
例:m₁=3kg・m₂=2kg・g=10m/s²
T₂=20N T₁=50N
鉛直方向に複数の物体がつながれている場合、下から順番に「何を支えているか」を確認して張力を求めるのが確実な方法です。
斜面上の2物体問題の張力計算
傾角θの斜面上の物体Aと、滑車を介して鉛直に吊るされた物体Bが糸でつながれている場合の張力を求めます。
Aについての運動方程式(斜面方向):T-m₁g sinθ=m₁a
Bについての運動方程式(鉛直方向):m₂g-T=m₂a
連立して:a=(m₂g-m₁g sinθ)÷(m₁+m₂)
T=m₂(g-a)=m₁m₂g(1+sinθ)÷(m₁+m₂)
斜面問題では重力を斜面方向・垂直方向に分解してから運動方程式を立てることが解法の核心です。
摩擦力と張力の関係
続いては、摩擦力が存在する状況での張力の計算方法を確認していきます。
摩擦力は張力とともに運動方程式に登場することが多く、セットで理解しておくことが大切です。
動摩擦力がある場合の張力公式
水平面上で動摩擦係数μ’の面を物体(質量m)が移動しているとき、動摩擦力f=μ’mgが働きます。
水平に引っ張る張力Tと動摩擦力fが働く場合
T-μ’mg=ma
T=m(a+μ’g)
例:m=5kg・μ’=0.2・a=2m/s²・g=10m/s²
T=5×(2+0.2×10)=5×4=20 N
摩擦力は運動の向きと逆向きに働くため、向きを間違えないよう正方向を定めてから式を立てることが重要です。
静止摩擦力と張力のつり合い
物体が静止している場合、静止摩擦力が張力とつり合っています。
最大静止摩擦力はf₀=μmg(μ:静止摩擦係数)であり、この値を超える張力を加えると物体が動き始めます。
「物体が動き出す限界の張力」を求める問題では、T=μmgを臨界条件として使います。
2物体問題で摩擦がある場合
2物体がつながれた問題で片方または両方に摩擦がある場合、各物体の摩擦力を個別に計算して運動方程式に加えます。
| 状況 | Aの方程式 | Bの方程式 |
|---|---|---|
| Aが水平面(摩擦あり)・Bが鉛直 | T-μm₁g=m₁a | m₂g-T=m₂a |
| 両方水平(摩擦あり)・Fで引く | F-T-μm₁g=m₁a | T-μm₂g=m₂a |
摩擦がある2物体問題は連立方程式になることが多く、式の立て方と解き方の手順を丁寧に練習することが上達への近道でしょう。
まとめ
この記事では、糸の張力公式・つり合い条件・加速度がある場合の計算・2物体問題での計算例・摩擦力との関係について解説しました。
張力の公式は状況ごとに運動方程式を立てて導くものであり、「全体→個別」の2段階アプローチと自由体図の活用が正確な計算への鍵です。
摩擦力・加速度・斜面などの要素が加わっても基本の手順は変わらないため、パターンを繰り返し練習して確実に身につけていきましょう。