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ゼータ電位の測定方法は?原理と手順も詳しく解説!(電気泳動法・レーザードップラー法・動的光散乱・粒子移動度など)

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ゼータ電位の測定は、コロイド分散系や医薬品・化粧品・食品・材料など幅広い分野で欠かせない分析手法となっています。

しかし、ゼータ電位を直接測定することは原理的に不可能であり、粒子の電気的挙動を間接的に計測することで求めます。

現在最も広く用いられているのが、電気泳動法とレーザードップラー法を組み合わせた電気泳動光散乱法ですが、その原理や手順を正しく理解することが精度の高いデータ取得につながります。

本記事では、ゼータ電位の測定原理から代表的な測定方法の特徴・手順・注意点まで、わかりやすく解説していきます。

目次

ゼータ電位測定の基本原理を理解しよう

それではまず、ゼータ電位測定の基本的な原理について解説していきます。

ゼータ電位は定義上、すべり面における電位であるため直接測定することができません。

そのため、粒子が電場中で移動する速度(電気泳動移動度)を測定し、そこからゼータ電位を算出するという間接的なアプローチが取られます。

電気泳動移動度とゼータ電位の関係

電場中に粒子を置くと、粒子はその表面電荷に応じて正極または負極方向に移動します。

この移動速度を電場強度で割ったものが「電気泳動移動度(μ)」と呼ばれる量です。

電気泳動移動度からゼータ電位(ζ)を求める際には、以下のような理論式が用いられます。

スモルコフスキーの式(Smoluchowski式)

ζ = μ × η / ε

μ:電気泳動移動度 η:溶媒粘度 ε:溶媒の誘電率

(粒子サイズが電気二重層厚さより十分大きい場合に適用)

粒子サイズが小さく電気二重層の影響が大きい場合には、ヒュッケルの式(Hückel式)が適用されます。

実際の測定では、ヘンリー関数f(κa)を用いることで中間的なサイズの粒子にも対応できます。

レーザードップラー法の原理

現代のゼータ電位測定装置の多くは、レーザードップラー測速法(LDV:Laser Doppler Velocimetry)を用いて粒子の移動速度を測定します。

この方法では、レーザー光を分割して測定セル内の粒子に照射し、電場によって移動する粒子から散乱された光のドップラーシフト(周波数変化)を検出します。

移動する粒子から散乱された光は、静止した粒子からの光と比べてわずかに周波数がずれており、このズレの量から粒子の速度を精密に求めることができます。

レーザードップラー法は高感度・高精度であり、非常に小さな移動速度も検出できるため、低ゼータ電位の系でも測定が可能です。

位相解析光散乱法(PALS)の特徴

低ゼータ電位の系や非水系溶媒の測定において特に有効なのが、位相解析光散乱法(PALS:Phase Analysis Light Scattering)です。

PALSは散乱光の位相シフトを解析することで、従来のレーザードップラー法よりも格段に高感度な測定を実現します。

非水系溶媒では粒子の移動度が非常に小さいため、PALSの高感度特性が特に威力を発揮します。

現代の高性能ゼータ電位測定装置の多くには、PALSの機能が搭載されています。

代表的なゼータ電位測定方法の種類と特徴

続いては、代表的なゼータ電位測定方法の種類とそれぞれの特徴について確認していきます。

ゼータ電位の測定には複数の方法があり、サンプルの性状や測定目的によって適切な手法を選択することが重要です。

電気泳動光散乱法(ELS)

電気泳動光散乱法(ELS:Electrophoretic Light Scattering)は、現在最も普及しているゼータ電位測定手法です。

電場中で移動する粒子にレーザー光を照射し、散乱光のドップラーシフトから電気泳動移動度を求め、ゼータ電位に換算します。

測定手法 原理 特徴・適用範囲
電気泳動光散乱法(ELS) ドップラーシフト解析 最も一般的。水系・希薄分散系に適する
位相解析光散乱法(PALS) 位相シフト解析 低移動度・非水系の測定に有効
マイクロ電気泳動法 顕微鏡による粒子観察 粒子を直接観察。高精度だが操作に熟練が必要
電気音響法 超音波と電気信号の相互作用 高濃度・不透明系に適用可能

ELSは操作が簡便で自動化が進んでおり、短時間で多数のサンプルを測定できる点が大きなメリットです。

マイクロ電気泳動法の原理と特徴

マイクロ電気泳動法は、電場中で移動する粒子を顕微鏡で直接観察し、その移動速度を計測する方法です。

視覚的に粒子の挙動を確認できる点が特徴であり、粒子サイズが比較的大きい(1μm以上)系に適しています。

ただし、測定に熟練した技術が必要であり、電気浸透流(EOF)の影響を補正するために静止面での測定が求められます。

自動化・光散乱法が普及した現代では補助的な手法として位置づけられていますが、光学的測定が困難なサンプルには今でも有効な場合があります。

電気音響法(超音波法)の概要

電気音響法は、超音波を用いてゼータ電位を求める方法であり、高濃度スラリーや不透明分散系の測定に優れています。

音波の伝播によって粒子に交番電場が誘起される際に生じる「コロイド振動電流(CVI)」を測定することでゼータ電位を算出します。

希釈の必要がないため、実際の製品状態に近い条件での測定が可能であり、工業的な品質管理に適しています。

ゼータ電位測定の具体的な手順と注意点

続いては、ゼータ電位測定の具体的な手順と注意点について確認していきます。

正確なゼータ電位データを得るためには、サンプル調製から測定実施、データ解析に至るまで各ステップで注意が必要です。

サンプル調製と前処理の手順

ゼータ電位測定において、サンプルの調製は最も重要なプロセスの一つです。

一般的な水系サンプルの調製手順を以下に示します。

サンプル調製の基本手順

1. 分散媒(超純水など)のpH・イオン強度を調整する

2. 粒子を所定濃度(通常0.01〜0.1wt%程度)に希釈する

3. 超音波処理や撹拌により粒子を均一に分散させる

4. 必要に応じてフィルタリングで異物を除去する

5. 測定セルに気泡が入らないよう注意しながらサンプルを充填する

サンプル濃度が高すぎると多重散乱が生じ、測定精度が低下します。

また、気泡の混入はノイズの原因となるため、セル充填時には丁寧な作業が求められます。

測定パラメータの設定と実施

測定を開始する前に、装置に設定すべき主要パラメータがあります。

温度・粘度・溶媒の誘電率・屈折率などを正確に入力することで、ゼータ電位の算出精度が高まります。

特に温度は粘度と誘電率の両方に影響するため、測定中の温度安定性を確保することが重要です。

測定は通常3回以上繰り返し、再現性を確認することが標準的なプロトコルとなっています。

データ解釈と測定結果の注意点

測定結果として得られるゼータ電位値には、必ず測定条件(pH・温度・イオン強度・分散媒の種類)を付記することが重要です。

測定値の解釈においては、単一の測定値だけでなく、複数のpH条件でのゼータ電位プロファイルを評価することが推奨されます。

また、測定値の分布(ゼータ電位分布)が広い場合は、粒子表面の不均一性や凝集の存在を示唆している可能性があります。

ゼータ電位値と粒子径(DLS測定)を組み合わせることで、系の状態をより正確に評価できます。

動的光散乱法(DLS)とゼータ電位測定の関係

続いては、動的光散乱法(DLS)とゼータ電位測定の関係性について確認していきます。

現代の測定装置の多くは、ゼータ電位測定と動的光散乱による粒径測定を同一装置で行える設計となっています。

動的光散乱法による粒径測定の原理

動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)は、ブラウン運動する粒子から散乱された光の強度揺らぎを解析することで、粒子の流体力学的粒子径を求める手法です。

小さな粒子ほど速くブラウン運動するため、散乱光の揺らぎが速くなるという原理に基づいています。

DLSで求められる粒径(Z-average径、PDIなど)は、ゼータ電位と合わせて分散系の状態評価に活用されます。

ゼータ電位と粒径の同時測定のメリット

ゼータ電位と粒径の同時測定は、少量のサンプルで多くの情報を得られる点が大きなメリットです。

例えば、pH変化に伴うゼータ電位の変化と粒径の変化を同時に追跡することで、凝集が始まるpH域を精密に特定することができます。

医薬品ナノ粒子の評価においては、ゼータ電位・粒径・多分散指数(PDI)の三つが品質基準として重要視されています。

測定装置の選定と適切な活用

ゼータ電位と粒径の同時測定が可能な装置としては、マルバーン社のZetasizerシリーズやベックマン・コールター社の製品などが広く知られています。

装置の選定においては、測定範囲(粒子径・ゼータ電位)・サンプル量・温度制御機能・測定速度などを考慮することが重要です。

また、定期的なキャリブレーションと標準粒子(ゼータ電位既知の標準液)を用いた精度確認を行うことで、データの信頼性を維持することができます。

まとめ

本記事では、ゼータ電位の測定方法について、基本原理から代表的な測定手法・手順・注意点・動的光散乱法との関係まで詳しく解説しました。

ゼータ電位は直接測定できないため、電気泳動移動度を介した間接測定が基本となります。

現在最も一般的な手法は電気泳動光散乱法(ELS)とレーザードップラー法の組み合わせであり、高精度で迅速な測定が可能です。

低移動度系や非水系では位相解析光散乱法(PALS)が有効であり、高濃度・不透明系には電気音響法が適しています。

正確なデータを得るためには、サンプル調製・測定パラメータの設定・測定条件の記録を丁寧に行うことが不可欠です。

ゼータ電位測定の原理と手順を正しく理解し、目的に合った方法を選ぶことが高品質なデータ取得への近道となるでしょう。

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