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粘度と動粘度の違いは?換算方法と計算式も(絶対粘度・密度との関係・単位の違い・物理的意味・使い分けなど)

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粘度を学んでいると、「粘度」と「動粘度」という2つの言葉が登場して混乱することがあります。

「粘度と動粘度は何が違うのか」「どちらを使えばいいのか」「換算はどうやるのか」という疑問を持つ方は非常に多いでしょう。

粘度(絶対粘度)と動粘度は異なる物理量であり、単位も測定方法も使われる場面も異なります。

しかし、両者は密度を介して明確な関係式で結びついており、一方がわかればもう一方を計算で求めることができます。

本記事では、粘度と動粘度の定義の違い・物理的な意味の違い・単位の違い・換算方法の計算式・各分野での使い分けまで、わかりやすく体系的に解説していきます。

絶対粘度・密度との関係・単位の違い・物理的意味・使い分けといったキーワードを中心に、理解を深めていきましょう。

目次

粘度(絶対粘度)と動粘度の定義の違い:結論から理解する

それではまず、粘度(絶対粘度)と動粘度の定義の違いを結論から整理して解説していきます。

最初に両者の違いを明確に把握することが、その後の理解をスムーズにする近道です。

粘度(絶対粘度)と動粘度の核心的な違い

粘度(絶対粘度:μまたはη):流体の内部摩擦の強さを表す物理量。流体そのものの「流れにくさ」を表す。単位はPa・s(またはmPa・s・cP)。

動粘度(ν):絶対粘度を流体の密度で割った値。流体の「流れやすさ」を密度の影響も込みで表す。単位はm²/s(またはcSt・mm²/s)。

関係式:ν = μ / ρ(ρは密度:kg/m³)

この関係式を覚えることが粘度・動粘度の理解の核心です。

比喩で表すなら、絶対粘度は「流体そのものが持つ粘り気の強さ」であり、動粘度は「その粘り気を流体の重さで補正した、流体力学的な流れにくさ」と理解するとわかりやすいでしょう。

密度が同じ流体同士なら絶対粘度と動粘度の大小関係は一致しますが、密度が異なる流体を比較する場合は大小関係が逆転することもあります。

物理的な意味の違い:何を表しているのか

絶対粘度はニュートンの粘性法則(τ = μ × du/dy)に登場する比例定数であり、せん断応力とせん断速度の比として定義されます。

流体に力をかけたときの変形しにくさを直接表す物理量であり、化学工学・レオロジー・材料科学では絶対粘度が基本的な指標として使われます。

動粘度は流体力学におけるナビエ・ストークス方程式の粘性項に登場する量であり、慣性力に対する粘性力の比(レイノルズ数の逆数に比例)として意味を持ちます。

流体の流れのパターン(層流・乱流)・熱伝達・拡散などの流体力学的現象の解析では動粘度が自然に登場します。

密度がなぜ関係するのか:動粘度の物理的背景

流体が流れる際には、粘性(内部摩擦)だけでなく流体自身の重さ(密度による慣性)も流れやすさに影響します。

密度が大きい流体は同じ粘度でも「質量が大きいために慣性が大きく、流れを変えにくい」という特性があります。

動粘度は絶対粘度を密度で割ることで、この慣性の効果を含めた「実際の流れやすさ」を一つの数値で表した量です。

例えば水銀とガソリンを比較すると、水銀の絶対粘度(約1.5 mPa・s)はガソリン(約0.5 mPa・s)より高いですが、水銀の密度(約13,600 kg/m³)がガソリン(約720 kg/m³)の約19倍もあるため、動粘度では水銀の方がガソリンより低くなるという逆転現象が起こります。

単位の違いと換算方法:cPとcStの関係

続いては、粘度と動粘度の単位の違いと具体的な換算方法を確認していきます。

単位を正しく理解することは、データシートの数値を正確に読み取り・比較するために不可欠です。

絶対粘度の単位系と換算

絶対粘度の主要な単位と換算関係を整理します。

単位名 記号 換算関係 使われる場面
パスカル秒 Pa・s =1,000 mPa・s =10 P SI単位・学術・工学
ミリパスカル秒 mPa・s =1 cP 食品・医薬・化粧品・低粘度流体
センチポアズ cP =1 mPa・s 化学・塗料・化粧品・食品
ポアズ P =100 cP =0.1 Pa・s CGS単位(旧来の表記)

動粘度の単位系と換算

単位名 記号 換算関係 使われる場面
平方メートル毎秒 m²/s =10⁶ cSt SI単位・流体力学計算
平方ミリメートル毎秒 mm²/s =1 cSt SI実用単位(ISO規格に多用)
センチストークス cSt =1 mm²/s =10⁻⁶ m²/s 潤滑油・石油・動粘度標準
ストークス St =100 cSt =10⁻⁴ m²/s CGS単位(旧来の表記)

絶対粘度と動粘度の単位換算で覚えておくべき最重要ポイント

1 cP = 1 mPa・s(センチポアズとミリパスカル秒は数値が等しい)

1 cSt = 1 mm²/s(センチストークスと平方ミリメートル毎秒は数値が等しい)

cP(絶対粘度)÷ 密度(g/cm³)= cSt(動粘度)

この3つの関係式を覚えておけば、現場での換算計算がすぐにできます。

絶対粘度と動粘度の換算計算式と具体例

絶対粘度から動粘度への換算、および動粘度から絶対粘度への換算の計算式を整理します。

絶対粘度 ⇔ 動粘度の換算計算式

動粘度を求める場合:ν(cSt)= μ(cP)/ ρ(g/cm³)

絶対粘度を求める場合:μ(cP)= ν(cSt)× ρ(g/cm³)

SI単位での計算:ν(m²/s)= μ(Pa・s)/ ρ(kg/m³)

計算例①:絶対粘度80 cP・密度0.85 g/cm³の油の動粘度は?

ν = 80 / 0.85 ≒ 94.1 cSt

計算例②:動粘度68 cSt・密度0.875 g/cm³の作動油の絶対粘度は?

μ = 68 × 0.875 = 59.5 cP(=59.5 mPa・s)

密度が1.0 g/cm³(水と同じ)の流体では絶対粘度(cP)と動粘度(cSt)の数値が等しくなります。

水系流体(水溶液・希薄水溶液)では密度がほぼ1.0に近いため、cPとcStの数値がほぼ一致することが多いです。

粘度と動粘度の使い分け:分野・用途別の選択基準

続いては、粘度(絶対粘度)と動粘度をどのように使い分けるかを、分野・用途別に確認していきます。

どちらの粘度を使うかは分野の慣習・測定方法・用途によって決まることが多いです。

絶対粘度が使われる主な分野

絶対粘度(μ・mPa・s・cP)が主として使われる分野は次のとおりです。

食品・飲料業界では、ソース・シロップ・ヨーグルト・チョコレートなどのテクスチャーや加工適性の評価に絶対粘度が使われます。

食品の粘度測定には主にB型粘度計が使われ、測定結果はmPa・s(またはcP)で表されます。

化粧品・医薬品業界では、クリーム・ゲル・軟膏・注射剤・点眼薬の処方設計・品質管理に絶対粘度が広く使われます。

高分子・樹脂業界では、ポリマー溶液・コーティング液・接着剤の粘度評価に絶対粘度が使われます。

インク・塗料業界でも絶対粘度(またはフォードカップの流出秒数)が品質管理の指標として使われています。

動粘度が使われる主な分野

動粘度(ν・cSt・mm²/s)が主として使われる分野は次のとおりです。

潤滑油・石油製品業界では、エンジンオイル・作動油・ギアオイル・燃料油の粘度評価に動粘度(cSt)が標準的に使われます。

ISO粘度グレード(ISO VG)はすべて40℃での動粘度(cSt)で定義されており、潤滑油の選定・管理の基本指標です。

流体力学・熱工学の計算では、レイノルズ数・プラントル数・ヌセルト数などの無次元数の計算に動粘度が使われます。

配管設計・ポンプ選定・熱交換器設計では動粘度を使った流体力学的計算が基本となります。

空気・ガスなど気体の粘度は一般的に動粘度で表されることが多く、気体の流動特性評価にも動粘度が使われます。

同じ流体でも絶対粘度と動粘度の大小関係が変わる例

水とグリセリンの比較

水(20℃):μ ≒ 1.002 mPa・s、ρ ≒ 0.998 g/cm³ → ν ≒ 1.004 cSt

グリセリン(20℃):μ ≒ 1,412 mPa・s、ρ ≒ 1.260 g/cm³ → ν ≒ 1,120 cSt

グリセリンは絶対粘度が水の約1,410倍、動粘度は水の約1,115倍です。

密度が1.260と大きいことで絶対粘度の差が動粘度では少し縮まっています。

水銀(20℃):μ ≒ 1.53 mPa・s、ρ ≒ 13.6 g/cm³ → ν ≒ 0.113 cSt

水銀は絶対粘度は水より高いが、密度が極めて大きいため動粘度は水より非常に低くなります。

このように、絶対粘度と動粘度では流体の大小関係が逆転することがあるため、どちらの粘度を使って比較するかによって判断が変わることがあります。

用途に応じた適切な粘度指標の選択が重要です。

レイノルズ数・ストークスの法則と動粘度の活用

続いては、動粘度が自然に登場する代表的な物理法則であるレイノルズ数とストークスの法則との関係を確認していきます。

これらを理解することで動粘度の物理的な意味がより深く実感できます。

レイノルズ数と動粘度の関係

流体の流れが層流か乱流かを判定するレイノルズ数(Re)には動粘度が登場します。

レイノルズ数の計算式

Re = U × L / ν

U:流速(m/s)、L:代表長さ(m)、ν:動粘度(m²/s)

絶対粘度を使った表記:Re = ρ × U × L / μ = U × L / ν

動粘度が大きい(粘性が密度に対して相対的に大きい)ほどReは小さくなり、層流になりやすくなります。

例:直径5cmの管内を流速0.1 m/sで流れる水(ν = 1.0 × 10⁻⁶ m²/s)のReは?

Re = 0.1 × 0.05 / (1.0 × 10⁻⁶) = 5,000(乱流域)

動粘度を使うことでナビエ・ストークス方程式を無次元化でき、流体力学的な相似則(スケールアップ・スケールダウンの理論)を適用できます。

ストークスの沈降公式と動粘度

微粒子・エマルション・懸濁液中の粒子の沈降速度を表すストークスの法則でも動粘度・絶対粘度が登場します。

ストークスの沈降速度式

v_s = (2/9) × r² × (ρ_p − ρ_f) × g / μ

r:粒子半径(m)、ρ_p:粒子密度、ρ_f:流体密度(kg/m³)

g:重力加速度(9.81 m/s²)、μ:絶対粘度(Pa・s)

または動粘度を使って:v_s = (2/9) × r² × ((ρ_p/ρ_f) − 1) × g / ν

絶対粘度が高い(または動粘度が高い)ほど沈降速度は遅くなります。

医薬品の乳剤・懸濁剤・化粧品エマルション・食品乳化物の安定性評価では、ストークスの法則を使った沈降速度計算が重要です。

粘度(絶対粘度または動粘度)を高めることで粒子の沈降を抑制し製品の安定性を向上させるという原理が、増粘剤・安定剤の配合設計に活用されています。

熱伝達計算でのプラントル数と動粘度

熱工学では、対流熱伝達の強さを表すプラントル数(Pr)に動粘度が登場します。

プラントル数の定義

Pr = ν / α = μ × Cp / k

ν:動粘度(m²/s)、α:熱拡散率(m²/s)

μ:絶対粘度(Pa・s)、Cp:定圧比熱(J/kg・K)、k:熱伝導率(W/m・K)

Prが大きい流体(高粘度・低熱伝導率)では熱境界層が速度境界層より薄く、熱伝達特性が変わります。

熱交換器・冷却システム・化学反応器の設計では、プラントル数を使ったヌセルト数(Nu)相関式から対流熱伝達係数を求める計算に動粘度が不可欠です。

主要流体の絶対粘度と動粘度の対比:実例で理解する

続いては、代表的な流体の絶対粘度と動粘度の実際の値を対比して、両者の違いを具体的に確認していきます。

実際の数値で両者の違いを体感することで、粘度・動粘度への理解がより深まります。

主要流体の絶対粘度・密度・動粘度の対比表

流体 絶対粘度μ(mPa・s) 密度ρ(g/cm³) 動粘度ν(cSt) 温度
空気 0.018 0.0012 15.0 20℃
1.002 0.998 1.004 20℃
エタノール 1.20 0.789 1.52 20℃
食用油(菜種油) 約75 0.91 約82 20℃
グリセリン 約1,412 1.26 約1,121 20℃
水銀 1.53 13.6 0.113 20℃
エンジンオイル(SAE 30) 約380(40℃) 約0.875 約434(40℃) 40℃

特に注目すべきは空気と水銀の動粘度です。

空気の絶対粘度(0.018 mPa・s)は水の約1/56と非常に低いにもかかわらず、密度が水の約1/833と極端に小さいため、動粘度(15 cSt)は水(1 cSt)の約15倍という逆転が起こります。

これが航空機の翼周りの流れなどで空気の動粘度が重要な意味を持つ理由です。

潤滑油のISOグレードと動粘度の関係

工業用潤滑油のISO粘度グレード(ISO VG)は40℃での動粘度(cSt)で定義されており、実務で最も使われる粘度指標です。

ISO VGグレード 40℃動粘度の中心値(cSt) 40℃動粘度の範囲(cSt) 主な用途
VG 22 22 19.8〜24.2 スピンドル油・低圧油圧
VG 32 32 28.8〜35.2 油圧作動油・軸受け
VG 46 46 41.4〜50.6 油圧・産業機械
VG 68 68 61.2〜74.8 ギア油・コンプレッサー油
VG 100 100 90.0〜110 重負荷ギア・一部エンジン

潤滑油の選定では動粘度(cSt)による分類が基本であり、適切なVGグレードを選ぶことで機器の摩耗防止・効率向上・長寿命化が実現します。

まとめ

本記事では、粘度(絶対粘度)と動粘度の定義の違い・物理的な意味・単位の違い・換算計算式・各分野での使い分けまで幅広く解説してきました。

粘度(絶対粘度:μ)は流体の内部摩擦の強さそのものを表す物理量であり、動粘度(ν)は絶対粘度を密度で割った流体力学的な流れにくさを表す量です。両者はν=μ/ρという関係式で結びついています。

単位については1 cP = 1 mPa・s・1 cSt = 1 mm²/s という等価関係と、cP÷密度(g/cm³)=cStという換算式が実務で最も重要な知識です。

絶対粘度は食品・化粧品・医薬・高分子の分野で、動粘度は潤滑油・石油・流体力学計算の分野で主として使われます。

粘度と動粘度の違いを正確に理解して適切に使い分けることで、材料評価・プロセス設計・機器選定における判断の精度が大きく向上するでしょう。

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