「熱伝導率λから熱抵抗Rthへの変換はどうやるの?」「計算例を見ながら理解したい」という方も多いでしょう。
熱伝導率と熱抵抗は密接に関連していますが、一方は材料固有の物性値、他方は設計値という異なる性格を持っています。
この記事では、熱伝導率λと熱抵抗Rthの変換公式、厚さ・面積との関係、主要材料の数値、具体的な計算例を詳しく解説していきます。
材料物性から実際の熱設計値を計算する力を身につけていきましょう。
目次
熱伝導率と熱抵抗の変換公式:基本式をマスターしよう
それではまず、熱伝導率から熱抵抗への変換公式とその意味について解説していきます。
熱伝導率λ(W/(m·K))から熱抵抗Rth(K/W)への変換は、材料の厚さdと断面積Aを使って次の式で行います。
熱伝導率→熱抵抗の変換公式
Rth = d / (λ × A)
または
Rth = R値 / A = (d/λ) / A
変換の逆(熱抵抗から熱伝導率):
λ = d / (Rth × A)
この式は「材料を薄くするほど・断面積を大きくするほど・熱伝導率が高い材料を選ぶほど、熱抵抗が小さくなる(熱が流れやすくなる)」という設計の方向性を明確に示しています。
主要材料の熱伝導率と熱抵抗の比較
主要な工業材料の熱伝導率と、厚さ1mm・面積1cm²(1×10⁻⁴m²)での熱抵抗を計算して比較してみましょう。
| 材料 | 熱伝導率λ(W/(m·K)) | 熱抵抗Rth(K/W) |
|---|---|---|
| 銀(Ag) | 429 | 0.023 |
| 銅(Cu) | 398 | 0.025 |
| アルミニウム(Al) | 205 | 0.049 |
| 鉄・鋼(Fe) | 50 | 0.200 |
| ガラス | 1.0 | 10.0 |
| コンクリート | 1.5 | 6.67 |
| 木材(松) | 0.15 | 66.7 |
| グラスウール | 0.04 | 250 |
| 空気(静止) | 0.026 | 385 |
(厚さ1mm=0.001m、面積1cm²=0.0001m²で計算)
銅・アルミニウムはグラスウールと比べて熱抵抗が桁違いに小さく、熱を非常に効率よく伝えることがわかります。
計算例①:アルミ板の熱抵抗
アルミニウム製のヒートスプレッダー(厚さ3mm、面積200mm×150mm)の熱抵抗を計算してみましょう。
アルミヒートスプレッダーの熱抵抗計算
d = 3mm = 0.003m
λ = 205 W/(m·K)
A = 200mm × 150mm = 30000mm² = 0.03m²
Rth = d / (λ × A)
= 0.003 / (205 × 0.03)
= 0.003 / 6.15
≈ 4.88 × 10⁻⁴ K/W ≈ 0.00049 K/W
アルミ板の面積が大きいため熱抵抗が非常に小さく、熱をほぼ均一に広げる役割を果たせることがわかります。
計算例②:断熱壁の複合熱抵抗
コンクリート100mm+断熱材(ポリスチレン:λ=0.035W/(m·K))50mm の壁の面積熱抵抗(R値)を計算します。
複合壁のR値計算(面積1m²)
コンクリート層:R1 = 0.1 / 1.6 = 0.0625 m²K/W
ポリスチレン層:R2 = 0.05 / 0.035 = 1.429 m²K/W
R合計 = 0.0625 + 1.429 = 1.491 m²K/W
(断熱材が全体の約96%を占める)
この計算からも、断熱材の熱抵抗がコンクリートの熱抵抗を圧倒的に上回り、壁全体の断熱性能をほぼ決定していることがわかります。
熱抵抗計算の実践的な注意点
続いては、実際の熱設計で熱抵抗を計算する際の注意点を確認していきます。
単位変換のチェックポイント
熱抵抗計算で最も多いミスは単位の不統一です。
厚さdはmmで与えられることが多いため、m(メートル)に換算(1mm=0.001m)してから計算することが基本です。
断面積AはmRm²で計算することと、cm²やmm²をm²に換算(1cm²=10⁻⁴m²、1mm²=10⁻⁶m²)してから使うことに注意が必要でしょう。
温度依存性への対応
多くの材料の熱伝導率は温度によって変化するため、高温・低温条件での計算では温度依存性を考慮する必要があります。
アルミニウムの熱伝導率は25℃で約205W/(m·K)ですが、200℃では約200W/(m·K)とほぼ変わらないのに対し、ポリマー材料は温度上昇で熱伝導率が変化しやすい傾向があります。
精密な熱設計では、動作温度範囲での材料物性値データを使って計算することが推奨されるでしょう。
まとめ
この記事では、熱伝導率λから熱抵抗RthへのRth=d/(λA)による変換公式、主要材料の熱伝導率と熱抵抗の比較表、アルミ板と断熱壁の具体的な計算例、単位換算の注意点について解説しました。
熱伝導率は材料固有の物性値(W/(m·K))、熱抵抗は設計された構造体の熱の流れにくさ(K/W)という役割の違いを正確に理解することが重要です。
断熱材は熱伝導率が低いほど少ない厚さで高い断熱性能が得られ、冷却部品は熱伝導率が高く断面積が大きいほど低い熱抵抗を実現できます。
変換公式を確実に使いこなし、材料物性値から正確に熱設計値を求める計算力を身につけていきましょう。