夏場の熱中症対策や気象データの解析、工場の空調管理などで、ふと目にする言葉が湿球温度です。

乾球温度に比べるとなじみが薄く、どうやって求めればいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

実は湿球温度は、気温だけでなく湿度や気圧、飽和水蒸気圧といった複数の要素が絡み合って決まる数値です。

そのため、単純な引き算や掛け算だけでは求められません。

この記事では、湿球温度の計算方法は?公式や求め方も解説!というテーマのもと、湿度や気圧、飽和水蒸気圧を使った計算式の仕組みから、実際の数値を使った計算例まで、順を追って丁寧にご紹介していきます。

専門的な内容も含みますが、できるだけかみ砕いて説明しますので、初めて湿球温度に触れる方もぜひ最後までご覧くださいませ。

湿球温度の計算方法の結論は近似式か心理計算式を使うことです

それではまず、湿球温度の計算方法の結論について解説していきます。

結論から申し上げますと、湿球温度を求める方法は大きく分けて二つあります。

一つ目はスチュワート近似式と呼ばれる、気温と相対湿度だけから比較的簡単に計算できる近似式を使う方法です。

二つ目は、気圧と飽和水蒸気圧を組み込んだ心理計算式(スプルング式)を使い、より厳密に求める方法です。

どちらの方法も最終的には同じ湿球温度という値にたどり着きますが、必要な精度や手元にあるデータによって使い分けるのがポイントです。

近似式を使えば電卓だけで求められます

気温と相対湿度さえ分かっていれば、近似式を使うことで比較的簡単に湿球温度を求められます。

気圧のデータが手元になくても計算できるため、日常的な用途であればこの方法で十分でしょう。

ただし、標準的な大気圧付近を前提とした式のため、高地など気圧が大きく異なる場所では誤差が生じやすい点に注意が必要です。

心理計算式を使えばより正確な数値が出せます

一方で、気圧や飽和水蒸気圧まで踏まえて計算する心理計算式は、精度を重視する場面に向いています。

気象観測や工業用途など、厳密な数値が求められる現場では、こちらの方式が採用されることが多いです。

計算の手間は増えますが、そのぶん信頼性の高い結果が得られます。

結論として用途に応じた使い分けが大切です

結局のところ、湿球温度の計算方法にひとつの正解があるわけではありません。

普段使いなら近似式、精密な数値が必要なら心理計算式というように、目的に応じて選ぶことが大切でしょう。

湿球温度は、気温と相対湿度だけで求める近似計算と、気圧や飽和水蒸気圧まで含めて求める精密計算の二種類があります。

まずはどちらの精度が必要なのかを見極めることが、計算方法選びの第一歩です。

湿球温度とは何かを解説

続いては、湿球温度とはそもそも何を表す数値なのかを確認していきます。

湿球温度とは、温度計の感温部を湿らせたガーゼなどで包み、水分が蒸発するときの気化熱によって下がった温度のことを指します。

通常の温度計で測る気温、つまり乾球温度とは異なる考え方の数値です。

乾球温度との違いは水分の蒸発があるかどうかです

乾球温度は、そのままの空気の温度を測定したものです。

これに対して湿球温度は、水分が蒸発する際に周囲から熱を奪う現象を利用して測定します。

空気が乾燥しているほど水分の蒸発が盛んになり、湿球温度は乾球温度より大きく下がる傾向にあります。

湿度との関係は蒸発のしやすさに表れます

湿球温度と湿度には密接な関係があります。

相対湿度が高い空気ほど、すでに水蒸気を多く含んでいるため、追加の水分が蒸発しにくくなります。

その結果、湿球温度は乾球温度に近づき、両者の差が小さくなるのです。

逆に湿度が低いと蒸発が活発になり、湿球温度と乾球温度の差は大きくなります。

不快指数や熱中症指数にも使われる数値です

湿球温度は、単体で使われるだけでなく、熱中症の危険度を示す暑さ指数(WBGT)の算出にも利用されています。

気温だけでは測れない、体感としての蒸し暑さを表現できる数値といえるでしょう。

屋外や工場、体育館などの暑さ対策を考えるうえで、欠かせない指標のひとつです。

湿球温度の計算に必要な要素は湿度と気圧と飽和水蒸気圧です

続いては、湿球温度の計算に欠かせない三つの要素について確認していきます。

湿球温度を正確に求めるためには、湿度、気圧、飽和水蒸気圧というキーワードを理解しておく必要があります。

湿度は空気中の水蒸気量を示します

湿度、特に相対湿度は、その気温で空気が含みうる最大の水蒸気量に対して、実際にどれだけの水蒸気を含んでいるかをパーセントで表した値です。

相対湿度が100パーセントに近いほど、空気はすでに水蒸気を多く抱えている状態といえます。

この数値が湿球温度の下がり方を大きく左右します。

気圧は蒸発のしやすさに影響します

気圧も見落とされがちですが、重要な要素です。

気圧が低い場所では水が蒸発しやすくなるため、同じ気温と湿度でも湿球温度の下がり方が変わってきます。

標高の高い地域で計算を行う場合は、標準大気圧の1013.25ヘクトパスカルではなく、実際の気圧を使うことが望ましいでしょう。

飽和水蒸気圧は温度ごとに決まる限界値です

飽和水蒸気圧とは、ある温度において空気中に存在できる水蒸気の最大量を、圧力の単位で表したものです。

気温が高くなるほど、空気が含める水蒸気の量も増えるため、飽和水蒸気圧も高くなります。

湿球温度の計算では、この飽和水蒸気圧を求める式が土台となります。

要素 意味 湿球温度への影響
湿度 空気中の水蒸気の割合 高いほど湿球温度は乾球温度に近づく
気圧 大気の圧力 低いほど蒸発が進み湿球温度が下がりやすい
飽和水蒸気圧 その温度での水蒸気量の上限 気温に応じて変化し計算の基準となる

湿球温度の計算式や求め方を詳しく解説

続いては、実際に使われている湿球温度の計算式と求め方を確認していきます。

ここでは代表的な三つの方法をご紹介します。

スチュワート近似式を使う方法

気象学者のスチュワートが2011年に発表した近似式は、気温と相対湿度だけから湿球温度を求められる便利な式です。

Tw = T×atan[0.151977×(RH+8.313659)^0.5] + atan(T+RH) − atan(RH−1.676331) + 0.00391838×RH^1.5×atan(0.023101×RH) − 4.686035

Twは湿球温度、Tは気温(摂氏)、RHは相対湿度(パーセント表記の数値)を表します。

式自体は複雑に見えますが、関数電卓や表計算ソフトのアークタンジェント関数を使えば、数値を代入するだけで計算できます。

心理計算式(スプルング式)を使う方法

より厳密に求めたい場合は、次の心理計算式が使われます。

e = E prime − A × P × (t − t prime)

eは実際の水蒸気圧、E primeは湿球温度における飽和水蒸気圧、Aは器械定数、Pは気圧、tは乾球温度、t primeは湿球温度を表します。

この式は湿球温度そのものを直接求める形にはなっておらず、t primeを少しずつ変えながら式が成り立つ値を探る、いわゆる逐次計算が必要になります。

手計算では手間がかかるため、実務では次にご紹介する換算表やアプリが多用されます。

湿度表や計算アプリを使う方法

気象庁などが公開している湿度表や、湿球温度専用の計算アプリを使えば、複雑な式を意識せずに湿球温度を求められます。

気温と乾湿計の示度差を表に当てはめるだけで、瞬時に相対湿度や湿球温度が分かる仕組みです。

現場での作業や日常的なチェックには、こうしたツールの活用がもっとも効率的でしょう。

正確さを求めるなら心理計算式、手軽さを求めるならスチュワート近似式や換算表というように、目的によって求め方を選ぶことが重要です。

湿球温度の計算例を具体的な数値でシミュレーションしてみましょう

続いては、実際の数値を当てはめながら湿球温度を計算する流れを確認していきます。

気温30度、湿度60パーセントの場合

気温30度、相対湿度60パーセントという、真夏の屋外によくある条件で計算してみます。

スチュワート近似式にT=30、RH=60を代入すると、湿球温度はおよそ24.4度前後になります。

乾球温度との差はおよそ5.6度で、体感としてはかなり蒸し暑いレベルといえるでしょう。

気温25度、湿度40パーセントの場合

次に、過ごしやすいとされる気温25度、湿度40パーセントの条件を見てみます。

同じ近似式で計算すると、湿球温度はおよそ16.8度前後になります。

乾球温度との差はおよそ8.2度と大きく、湿度が低いぶん蒸発が進みやすいことが分かります。

気温35度、湿度80パーセントの場合

最後に、危険な暑さとされる気温35度、湿度80パーセントの条件です。

計算すると、湿球温度はおよそ31.5度前後という高い数値になります。

乾球温度との差はわずか3.5度程度しかなく、汗をかいても蒸発しにくい、熱中症リスクの非常に高い状態を示しています。

このように、同じ計算式でも気温と湿度の組み合わせによって、湿球温度は大きく変化することが分かります。

湿球温度の計算時に注意しておきたいポイント

続いては、湿球温度を計算する際によくある間違いや注意点を確認していきます。

相対湿度の単位を間違えないようにしましょう

スチュワート近似式に代入する相対湿度は、0から1の小数ではなく、0から100のパーセント表記の数値です。

この単位を取り違えると、まったく異なる値が算出されてしまいます。

計算前には必ず単位を確認する習慣をつけましょう。

適用範囲を超えた条件では誤差が大きくなります

スチュワート近似式は、気温マイナス20度から50度、相対湿度5パーセントから99パーセントという範囲内で高い精度を発揮する式です。

この範囲を大きく外れる極端な条件では、誤差が無視できないレベルになることがあります。

特殊な環境で計算する場合は、心理計算式など別の方法も検討したほうがよいでしょう。

気圧の違いを考慮する必要がある場面もあります

近似式の多くは、標準大気圧に近い環境を前提に作られています。

高地や気圧の変化が大きい場所で使う場合は、気圧を反映できる心理計算式のほうが適しています。

用途に合わせて、どこまでの精度が必要かを事前に見極めておくことが大切です。

単位の取り違えや適用範囲の見落としは、湿球温度の計算でもっとも起こりやすいミスです。

計算式を使う前に、前提条件を必ず確認するようにしましょう。

まとめ

今回は、湿球温度の計算方法は?公式や求め方も解説!というテーマで、湿度や気圧、飽和水蒸気圧を踏まえた計算の仕組みをご紹介してきました。

湿球温度は、気温と相対湿度だけで手軽に求められるスチュワート近似式と、気圧や飽和水蒸気圧まで組み込んだ心理計算式という、二つのアプローチで求められます。

日常的な目安として使うなら近似式、精密なデータが必要な現場なら心理計算式や換算表というように、目的に応じて使い分けるのがポイントです。

湿度が高いほど湿球温度は乾球温度に近づき、体に熱がこもりやすい危険な状態を示すことも押さえておきたいポイントでしょう。

ぜひ本記事を参考に、日々の暑さ対策や作業環境の管理に湿球温度の計算を役立ててみてください。

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