地球の自転周期について正確に答えられるでしょうか。私たちは「1日は24時間」と習いますが、実は地球が1回転するのにかかる時間は24時間ちょうどではありません。
地球の自転周期は正確には23時間56分4秒であり、これを「恒星日」と呼びます。この記事では、地球の自転周期を詳しく解説し、なぜ24時間との差が生じるのか、さらには自転周期の変化についても明らかにしていきます。
恒星日と太陽日の違い、4分間の差が生じる理由、自転周期の測定方法、そして長期的な変化まで、地球の自転周期に関する包括的な情報をお伝えします。
目次
地球の自転周期の基本
それではまず、地球の自転周期を正確に理解するための基本情報について解説していきます。
恒星日という真の自転周期
地球が360度回転するのにかかる時間、つまり真の自転周期は23時間56分4秒です。より正確には23時間56分4.0905秒とされています。
この周期を「恒星日」と呼びます。恒星日とは、遠くの恒星を基準として地球が1回転する時間を意味します。ある恒星が南中してから、再び南中するまでの時間です。
秒に換算すると、恒星日は86,164秒となります。私たちが日常的に使う1日の86,400秒(24時間×60分×60秒)よりも236秒、つまり約4分短いのです。
時間表記:23時間56分4.0905秒
秒表記:86,164.0905秒
分表記:1436.07分
私たちの1日との差:約4分(正確には3分56秒)
この恒星日が地球の真の自転周期であり、地球が実際に360度回転するのにかかる時間です。天文学者や物理学者が「地球の自転周期」と言う場合、通常はこの恒星日を指します。
恒星日を測定するには、遠くの恒星(できるだけ無限遠に近い天体)を基準とします。地球から十分に遠い恒星は、地球の公転による位置の変化がほとんど見られないため、絶対的な基準となるのです。
太陽日という日常の1日
一方、私たちが日常生活で使う「1日」は、太陽を基準とした「太陽日」です。太陽が南中してから、再び南中するまでの時間が太陽日であり、これは平均24時間となります。
厳密には、太陽日も毎日わずかに異なります。地球の公転軌道が楕円形であることや、自転軸が傾いていることにより、太陽の見かけの動きは一定ではないのです。
そのため、天文学では「平均太陽日」という概念が使われます。これは1年間の太陽日を平均した値であり、正確に24時間と定義されています。私たちの時計は、この平均太陽日に基づいて動いています。
| 種類 | 定義 | 時間 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 恒星日 | 恒星を基準とした自転周期 | 23時間56分4秒 | 天文学的測定 |
| 太陽日 | 太陽を基準とした1日 | 変動(約24時間) | 日常の時刻 |
| 平均太陽日 | 太陽日の年間平均 | 正確に24時間 | 時計の基準 |
実際の太陽日は、最も短い時で23時間59分39秒(9月頃)、最も長い時で24時間0分30秒(12月頃)と、約1分間の範囲で変動します。この変動を「均時差」と呼びます。
日時計で測った時刻と、正確な時計の時刻がずれることがあるのは、この均時差によるものです。太陽が最も早く南中する時期と最も遅く南中する時期では、約16分もの差が生じます。
なぜ約4分の差が生じるのか
恒星日と太陽日の間に約4分の差が生じる理由は、地球が太陽の周りを公転しているためです。
地球が1回自転する間に、地球は太陽の周りを少し移動します。1日で約1度(正確には360度÷365.25日≒0.986度)公転するのです。
そのため、地球が360度自転しても、太陽は元の位置に戻りません。太陽を同じ位置に戻すには、さらに約1度多く回転する必要があり、それに約4分かかるのです。
1. 地球が1日で約1度公転する
2. 360度自転しても太陽は元の位置に戻らない
3. さらに約1度回転する必要がある
4. 約1度の回転に約4分かかる
5. 結果として恒星日より太陽日が約4分長い
計算で確認してみましょう。地球は24時間で360度自転するので、1度の回転には24時間÷360度=4分かかります。地球が1日で約1度公転するため、太陽を同じ位置に戻すにはちょうど約4分余分にかかるのです。
この4分間の差は、1年間で累積すると約1460分、つまり約24時間になります。これは地球が1年間で太陽の周りを1周(360度公転)することに対応しています。
自転周期の測定方法
続いては、地球の自転周期をどのようにして測定するのか、その方法を確認していきます。
天文観測による測定
古代から、人類は天体の動きを観測することで時間を測定してきました。特定の恒星が子午線(南北を結ぶ線)を通過する時刻を記録し、翌日に同じ恒星が子午線を通過する時刻との差を測定すれば、恒星日が求められます。
この方法では、極めて正確な時計と、恒星の位置を精密に測定できる天体望遠鏡が必要です。現代では、VLBI(超長基線電波干渉計)という技術により、地球の反対側にある電波望遠鏡を組み合わせて、極めて高精度な測定が可能になっています。
VLBIでは、遠方のクエーサー(準恒星状天体)から来る電波を複数の電波望遠鏡で同時に観測し、その到達時刻の微細な差から地球の自転角度を測定します。この方法により、ミリ秒以下の精度で自転周期を測定できるのです。
原子時計との比較
現代では、セシウム原子時計などの極めて正確な時計が存在します。原子時計は、セシウム原子の振動を基準として時間を測定し、数億年に1秒しかずれない精度を持っています。
地球の自転周期は、この原子時計による時刻(国際原子時)と、地球の自転に基づく時刻(世界時)を比較することで測定されます。両者のずれを継続的に監視することで、地球の自転速度の変化まで検出できるのです。
古代:日時計、星の観測
近代:精密な天体望遠鏡
現代:VLBI、レーザー測距、GPS、原子時計
精度:ミリ秒以下
GPS(全地球測位システム)も地球の自転周期の測定に利用されています。GPS衛星の軌道を精密に追跡し、地上局の位置を測定することで、地球の自転角度を正確に求められます。
国際地球回転・基準系事業(IERS)という国際機関が、世界中の観測データを集約し、地球の自転速度を日々監視しています。そのデータに基づいて、必要に応じて「うるう秒」の挿入が決定されるのです。
歴史的な測定精度の向上
地球の自転周期を測定する精度は、時代とともに劇的に向上してきました。
古代の天文学者は、年単位での観測により、1日の長さをかなり正確に推定していました。紀元前の時代でも、1日が約24時間であることは知られていたのです。
| 時代 | 測定方法 | 精度 |
|---|---|---|
| 古代 | 日時計、星の観測 | 数分 |
| 17~19世紀 | 振り子時計、天体望遠鏡 | 数秒 |
| 20世紀前半 | 精密時計、写真観測 | 0.1秒 |
| 20世紀後半 | 原子時計、電波観測 | ミリ秒 |
| 21世紀 | VLBI、GPS、レーザー測距 | マイクロ秒 |
17世紀に振り子時計が発明されると、測定精度は大幅に向上しました。19世紀には、精密な機械式時計により、秒単位での測定が可能になります。
20世紀に入り、原子時計が開発されると、地球の自転速度が完全に一定ではないことが判明しました。地球の自転は、様々な要因によってわずかに変動しているのです。
現代では、マイクロ秒(100万分の1秒)の精度で地球の自転を測定でき、日々の微細な変動まで検出できるようになっています。
自転周期の変化
次に、地球の自転周期が時間とともに変化しているのかについて見ていきましょう。
長期的な減速
地球の自転は、長期的には徐々に遅くなっています。主な原因は月による潮汐力です。月の重力が地球の海水を引っ張ることで潮の満ち引きが生じますが、この潮汐摩擦によって地球の回転エネルギーが失われています。
現在、地球の自転は1世紀あたり約1.7ミリ秒ずつ遅くなっていると推定されています。つまり、100年で1日の長さが約1.7ミリ秒長くなるということです。
約6億2000万年前の地球では、1日が約22時間だったと推定されています。約4億年前は約21.9時間、約3億年前は約22.4時間でした。地質時代を通じて、1日は徐々に長くなってきたのです。
・約6億2000万年前:1日約22時間
・約4億年前:1日約21.9時間
・約3億年前:1日約22.4時間
・現在:1日24時間(恒星日23時間56分4秒)
・将来:さらに長くなる
この減速が続くと、将来的には1日がさらに長くなります。約5万年後には1日が1秒長くなり、約180万年後には1日が1分長くなる計算です。
最終的には、地球の自転周期と月の公転周期が一致する「潮汐ロック」の状態に達すると考えられています。その時、1日は現在の約47日分の長さになり、地球は常に月の同じ面を向けることになるでしょう。
短期的な変動
地球の自転速度は、長期的な減速だけでなく、短期的にも様々な変動をしています。
季節的な変動として、夏と冬で1日の長さが数ミリ秒変動します。これは大気の循環パターンが季節によって変化し、大気の角運動量が地球本体との間で交換されるためです。
| 変動の種類 | 周期 | 変動幅 | 原因 |
|---|---|---|---|
| 長期的減速 | 数億年 | 数時間 | 潮汐摩擦 |
| 10年スケール | 約10年 | 数ミリ秒 | 地球内部の対流 |
| 季節変動 | 1年 | 約1ミリ秒 | 大気循環 |
| 日々の変動 | 数日~数週 | 0.1ミリ秒 | 大気、海洋 |
地球内部のマントルの対流や、液体の外核の運動も、数年から数十年の周期で自転速度に影響を与えています。これらは予測が難しく、不規則な変動をもたらします。
大地震も地球の自転速度に影響を与えることがあります。2011年の東日本大震災では、地球の自転速度がわずかに増加し(1日が約1.8マイクロ秒短くなり)、自転軸もわずかに移動したと測定されています。
最近の異常な加速
興味深いことに、2020年以降、地球の自転が一時的にわずかに速くなるという現象が観測されています。2020年7月19日には、観測史上最も短い1日が記録されました。
通常の太陽日よりも1.46ミリ秒短い1日であり、恒星日も通常より短くなっていました。2021年から2022年にかけても、通常よりわずかに短い1日が続きました。
2020年:通常より速い自転が多数観測
2020年7月19日:観測史上最も短い1日
2021~2022年:やや速い自転が継続
2023年以降:通常に近い状態へ
この短期的な加速の原因は完全には解明されていませんが、地球内部のマントルや核の運動の変化、氷床の融解による質量分布の変化、大気や海洋の循環パターンの変化などが考えられています。
2023年以降は再び通常に近い状態に戻りつつあり、この現象が一時的なものなのか、新しい傾向の始まりなのかは不明です。科学者たちは引き続き地球の自転周期を精密に監視し続けています。
うるう秒という調整
最後に、自転周期の変動に対する調整方法について見ていきます。
うるう秒の必要性
地球の自転が遅くなることで、原子時計による時刻(国際原子時)と、地球の自転に基づく時刻(世界時)にずれが生じます。このずれを調整するために、うるう秒という1秒の挿入が不定期に行われています。
原子時計は極めて正確で、ほとんど誤差がありません。一方、地球の自転は少しずつ遅くなっているため、地球の自転に基づく時刻は、原子時計の時刻に対して遅れていきます。
このずれが0.9秒に達すると、うるう秒を挿入して調整します。通常は6月30日または12月31日の最後に1秒を追加し、その日は23時59分59秒の後に23時59分60秒が挿入されるのです。
うるう秒の歴史
うるう秒の制度は1972年に始まりました。それ以来、2024年までに27回のうるう秒が挿入されています。
初期の頃は頻繁に挿入されていましたが、最近は挿入の間隔が長くなっています。最近のうるう秒は2016年12月31日に挿入されており、それ以降は挿入されていません(2024年時点)。
| 年代 | うるう秒の回数 | 平均間隔 |
|---|---|---|
| 1972~1979年 | 10回 | 約0.8年に1回 |
| 1980~1989年 | 6回 | 約1.7年に1回 |
| 1990~1999年 | 7回 | 約1.4年に1回 |
| 2000~2009年 | 2回 | 約5年に1回 |
| 2010~2024年 | 2回 | 約7年に1回 |
うるう秒の挿入頻度が減っているのは、地球の自転速度の減速ペースが予想よりも遅いためかもしれません。また、前述の2020年以降の自転速度の加速も影響している可能性があります。
うるう秒廃止の議論
近年、うるう秒の制度を廃止すべきという議論が活発化しています。現代社会では、コンピューターシステム、GPS、通信ネットワーク、金融取引システムなど、精密な時刻管理が必要なシステムが増えており、うるう秒の挿入が混乱を引き起こす可能性があるためです。
2012年のうるう秒挿入時には、多くのウェブサイトやサーバーでトラブルが発生しました。LinuxシステムやJavaアプリケーションなどで不具合が報告され、大規模な障害につながる危険性が認識されたのです。
国際電気通信連合(ITU)では、うるう秒を廃止し、原子時計による時刻を標準とする案が検討されています。地球の自転との差は数百年に一度、まとめて調整するという提案です。
賛成派:
・システム障害のリスク回避
・予測不可能な挿入が問題
・現代技術との不整合
反対派:
・天文観測への影響
・長期的な時刻のずれ
・伝統的な時刻基準の維持
2022年の国際会議では、2035年までにうるう秒を廃止する方針が決定されました。廃止後は、少なくとも100年間はうるう秒を挿入せず、その後の対応は将来の世代に委ねられる予定です。
天文学者の中には、地球の自転と時刻を切り離すことに懸念を示す人もいます。しかし、現代社会の要請を考えると、うるう秒廃止は避けられない流れかもしれません。
まとめ
地球の自転周期は正確には23時間56分4秒であり、これを恒星日と呼びます。私たちが日常的に使う24時間(太陽日)とは約4分の差があり、この差は地球が太陽の周りを公転しているために生じます。
恒星日は遠くの恒星を基準とした真の自転周期であり、太陽日は太陽を基準とした1日の長さです。地球が1日で約1度公転するため、太陽を同じ位置に戻すには約361度回転する必要があり、それに約4分余分にかかるのです。
地球の自転周期は、VLBI、原子時計、GPSなどの技術により極めて高精度で測定されています。現代ではマイクロ秒の精度で日々の変動まで検出でき、地球の自転が完全に一定ではないことが判明しています。
地球の自転は月の潮汐力により徐々に遅くなっており、1世紀あたり約1.7ミリ秒ずつ遅くなっています。約6億2000万年前は1日が約22時間でした。この変動に対応するため、1972年以降27回のうるう秒が挿入されていますが、2035年までに廃止される予定です。地球の自転周期を理解することで、私たちの時間の概念がより深く実感できるでしょう。