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中殿筋の作用・起始停止・神経支配は?どこで読み方は?大殿筋との違いも

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殿筋群の中でも股関節の安定性と機能的な動きにおいて中核的な役割を果たす中殿筋は、歩行時の骨盤安定化や股関節外転の主要な筋肉として極めて重要です。

この筋肉の機能不全は、歩行異常や股関節痛の原因となることが多く、整形外科医、理学療法士、スポーツトレーナーにとって正確な知識が必要不可欠な筋肉の一つです。

中殿筋は大殿筋の深層、小殿筋の表層に位置し、股関節外転の主力筋として機能します。また、片脚立位時の骨盤水平位保持において中心的な役割を果たし、正常な歩行パターンの維持に不可欠です。近年、ランニングやスポーツ活動における重要性も広く認識され、パフォーマンス向上や障害予防の観点からも注目されています。本記事では、中殿筋の詳細な解剖学的特徴から機能面、そして他の殿筋との違いまで、臨床応用に直結する知識を包括的に解説していきます。

目次

中殿筋とはどこ?読み方は?

それではまず、中殿筋の位置と基本的な構造、そして読み方について解説していきます。

中殿筋の読み方は「ちゅうでんきん」です。英語では「Gluteus medius muscle(グルテウス メディウス マッスル)」と呼ばれます。

中殿筋(Gluteus medius muscle)は、殿筋群の中で中間の大きさを持つ扇形の筋肉です。大殿筋の深層、小殿筋の表層に位置し、腸骨の外面から大腿骨の大転子に向かって走行しています。その名前が示すように、大殿筋と小殿筋の「中間」の大きさを持ち、機能的にも両者の特徴を併せ持っています。

中殿筋は股関節の外側上方に位置し、腸骨翼の広い範囲から起始する扇状の筋肉です。この筋肉の繊維は前部、中部、後部の3つの部分に機能的に分けることができ、それぞれが若干異なる作用を持つことが特徴です。前部繊維は股関節の屈曲と内旋に、中部繊維は純粋な外転に、後部繊維は伸展と外旋に関与します。

解剖学的には、中殿筋は股関節の安定性において極めて重要な位置を占めています。この筋肉は股関節包の上方を走行し、関節の安定化に直接的に寄与するとともに、動的な安定性の提供においても中心的な役割を果たします。

臨床的には、中殿筋は「股関節外転筋群の王様」と呼ばれることもあり、その機能評価は股関節疾患の診断において重要な指標となります。中殿筋の筋力低下や機能不全は、トレンデレンブルグ歩行や股関節の不安定性を引き起こし、腰痛や膝痛などの二次的な問題も招くことが知られています。

中殿筋の作用・起始停止・神経支配は?

続いては、中殿筋の詳細な解剖学的特徴を確認していきます。

項目 詳細
起始(Origin) ・腸骨の外面(前殿筋線と後殿筋線の間)
・腸骨翼の外面
・腸骨稜の外唇(中央部)
停止(Insertion) ・大腿骨大転子の外側面
・大転子の上縁から後縁にかけて
・転子間稜の上部
主な作用(Actions) 1. 股関節の外転(主作用・主力筋)
2. 股関節の内旋(前部繊維)
3. 股関節の外旋(後部繊維)
4. 股関節の軽度屈曲(前部繊維)
5. 骨盤の安定化(片脚立位時)
6. 股関節の安定化
神経支配(Innervation) ・上殿神経(L4、L5、S1)
・仙骨神経叢から分岐
・小殿筋と同じ神経支配
血管供給(Blood Supply) ・上殿動脈(主要)
・深殿動脈
・外側大腿回旋動脈の上行枝

中殿筋の最も重要な機能は股関節の外転動作であり、この動作における主力筋として機能します。前部、中部、後部の繊維がそれぞれ異なる作用を持つため、複雑な股関節動作において多面的な貢献をします。

特に重要なのは、中殿筋の骨盤安定化機能です。片脚立位時や歩行の立脚相において、支持脚側の中殿筋が強力に収縮することで、対側(遊脚側)の骨盤が下降することを防ぎ、骨盤を水平に保持します。この機能は正常歩行において不可欠であり、中殿筋の筋力低下は即座に歩行異常として現れます。

中殿筋の機能不全で最も特徴的な症状は、トレンデレンブルグ歩行(Trendelenburg gait)です。これは患側の中殿筋が骨盤を支えきれないため、健側の骨盤が下降し、体幹が患側に傾く歩行パターンです。また、代償性トレンデレンブルグ歩行では、骨盤の下降を防ぐために体幹全体が患側に傾く特徴的な歩容を示します。

中殿筋と大殿筋の違いは

続いては、中殿筋と大殿筋の主要な違いについて確認していきます。

比較項目 中殿筋 大殿筋
解剖学的位置 大殿筋の深層
(小殿筋の表層)
殿筋群の最表層
(中殿筋・小殿筋の表層)
筋肉のサイズ 中程度のサイズ
扇形の構造
最も大きい
厚く強力な筋肉
起始 腸骨外面(前殿筋線と後殿筋線間) 腸骨後面、仙骨、尾骨、胸腰筋膜
停止 大転子の外側面 腸脛靭帯、大腿筋膜、殿筋粗面
主要な作用 股関節外転(主力筋)
骨盤安定化
股関節伸展(主力筋)
股関節外旋
神経支配 上殿神経(L4、L5、S1) 下殿神経(L5、S1、S2)
触診 大転子上方で触診可能 殿部で容易に触診可能
機能的役割 歩行時の骨盤安定化
側方安定性の提供
立ち上がり、階段昇降
推進力の生成
機能不全時の症状 トレンデレンブルグ歩行
骨盤の側方動揺
立ち上がり困難
階段昇降の困難
スポーツでの重要性 ランニング、跳躍での安定性
方向転換時の制御
スプリント、ジャンプ
爆発的な推進力

中殿筋と大殿筋は、それぞれ異なる機能的役割を持ちながら協調して働きます。大殿筋が股関節伸展の主力筋として推進力や立ち上がり動作に重要な役割を果たすのに対し、中殿筋は股関節外転と骨盤安定化の主力筋として、歩行や運動時の安定性を提供します。

神経支配の違いも重要で、中殿筋は上殿神経、大殿筋は下殿神経によって支配されています。このため、神経損傷の部位によって異なる症状パターンを示し、診断や治療アプローチも変わってきます。

臨床的には、中殿筋の機能評価は側臥位での股関節外転テストやトレンデレンブルグテストで行われ、大殿筋の評価は腹臥位での股関節伸展テストで行われることが多く、それぞれの特性に応じた評価法が確立されています。

まとめ 中殿筋の起始停止・神経支配はどこ?読み方は?大殿筋との違いも

中殿筋は殿筋群の中間に位置する重要な筋肉であり、読み方は「ちゅうでんきん」です。腸骨外面の前殿筋線と後殿筋線の間から起始し、大腿骨大転子の外側面に停止する扇形の筋肉で、上殿神経(L4、L5、S1)によって支配されています。

中殿筋の主要な機能は股関節の外転であり、この動作における主力筋として機能します。特に重要なのは骨盤安定化機能で、片脚立位時や歩行時の骨盤水平位保持において中心的な役割を果たします。前部、中部、後部の繊維がそれぞれ異なる作用を持ち、複雑な股関節動作に多面的に貢献します。

大殿筋との主な違いは、解剖学的位置(深層vs表層)、主要機能(外転・安定化vs伸展・推進)、神経支配(上殿神経vs下殿神経)、機能不全時の症状(トレンデレンブルグ歩行vs立ち上がり困難)などにあります。両筋肉は相補的に働いて、股関節の複雑な動きと機能を実現しています。

これらの知識は、整形外科医、理学療法士、スポーツトレーナーにとって、股関節疾患の診断や治療、運動療法の計画立案に不可欠です。中殿筋の特性を理解し、他の殿筋との機能的な関係を把握することで、より効果的な治療アプローチやトレーニングプログラムを提供することができます。歩行やスポーツパフォーマンスの質を左右する中殿筋について、継続的な学習と臨床応用を深めていくことが重要です。

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アラサーの男性です。自分が今まで経験・勉強してきた「エクセル」「ビジネス用語」「生き方」などの情報を、なるべくわかりやすく、楽しく、発信していきます。 一緒に人生を楽しんでいきましょう