科学

角運動量保存則とは?公式をわかりやすく解説(保存則・わかりやすく・導出など)

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「角運動量保存則」という言葉は聞いたことがあるけれど、正確な意味や成立する条件がよくわからない——そんな方は多いのではないでしょうか。

角運動量保存則は、宇宙の惑星の運動からフィギュアスケート選手のスピンまで、日常の至るところで観察できる非常に普遍的な物理法則です。

本記事では、角運動量保存則の意味・公式・成立条件・導出方法を、具体例とともにわかりやすく解説します。高校物理から大学物理の入門レベルまで対応した内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

角運動量保存則とは何か——公式と意味をわかりやすく

それではまず、角運動量保存則の定義と公式について解説していきます。

角運動量保存則とは、「外部からのトルク(力のモーメント)がゼロのとき、系の全角運動量は一定に保たれる」という法則です。

角運動量保存則の公式

外部トルク N_ext = 0 のとき

dL/dt = 0 → L = 一定(定数)

多体系の場合:L_total = L₁ + L₂ + … = 一定

角運動量保存則は、運動量保存則やエネルギー保存則と並ぶ物理学の三大保存則のひとつとして位置づけられています。

角運動量保存則が成立する条件

角運動量保存則が成立するための条件は、「系に外部からはたらくトルクの総和がゼロであること」です。

トルク(力のモーメント)N は「N = r × F」で定義されるベクトル量で、「力×腕の長さ」に対応します。

外部トルクがゼロになるのは、主に次の2つの場合です。

ケース 具体例 なぜトルクがゼロか
外力がゼロ 宇宙空間での孤立系 Fがゼロなので N = r × F = 0
外力が中心力(基準点を通る方向) 惑星に対する太陽の重力 r と F が平行なので外積がゼロ
内力のみ存在 アイススケーターのスピン 作用反作用でトルクが打ち消し合う

「外力が中心力」という条件は、天体力学において特に重要です。

太陽の重力は常に惑星から太陽へ向かう方向(中心力)にはたらくため、角運動量が保存され、これがケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)の根拠となります。

角運動量保存則の直感的な理解

角運動量保存則を直感的に理解するには、フィギュアスケート選手のスピンが最もわかりやすい例のひとつです。

スケート選手が腕を広げた状態でゆっくりスピンし、腕を縮めると急速に回転が速くなります。これはなぜでしょうか。

腕を縮めると、体の各部分が回転軸に近づくため、慣性モーメントIが小さくなります。一方、外部トルクがゼロ(氷との摩擦を無視)なので角運動量 L = Iω が保存されます。

したがって、Iが小さくなった分だけωが大きくなり、回転が速くなるのです。

スケーターのスピンの例

腕を広げたとき:I₁ω₁ = L(大きなI、小さなω)

腕を縮めたとき:I₂ω₂ = L(小さなI、大きなω)

I₁ω₁ = I₂ω₂ = L(一定)

角運動量保存則と運動量保存則の対応関係

角運動量保存則は、直線運動における運動量保存則と完全に対応する関係にあります。

直線運動 回転運動
質量 m 慣性モーメント I
速度 v 角速度 ω
運動量 p = mv 角運動量 L = Iω
力 F トルク N
dp/dt = F dL/dt = N
外力 = 0 → 運動量保存 外部トルク = 0 → 角運動量保存

この対応関係を理解しておくと、回転運動の問題でも直線運動の直感を活かして考えることができます。

角運動量保存則の導出:ニュートンの法則から導く

続いては、角運動量保存則をニュートンの法則から導出する方法を確認していきます。

保存則の導出を理解することで、「なぜ保存されるのか」という根本的な理解が深まるでしょう。

1質点の角運動量の時間微分

まず、1つの質点の角運動量 L = r × p の時間微分を計算します。

角運動量の時間微分の導出

dL/dt = d(r × p)/dt

= (dr/dt × p) + (r × dp/dt)

= (v × mv) + (r × F) ← dr/dt = v、dp/dt = F(ニュートンの第2法則)

= m(v × v) + (r × F)

= 0 + N ← 同一ベクトルの外積はゼロ

∴ dL/dt = N(トルク)

この結果から、「角運動量の時間変化率はトルクに等しい」という関係が導かれます。

外部トルク N = 0 のとき、dL/dt = 0 となり、L = 一定(角運動量保存則)が成立します。

多体系での角運動量保存則の導出

複数の質点からなる系では、内力と外力を区別して考える必要があります。

多体系での角運動量保存則の導出

全角運動量:L_total = Σᵢ Lᵢ = Σᵢ (rᵢ × pᵢ)

時間微分:dL_total/dt = Σᵢ (dLᵢ/dt) = Σᵢ Nᵢ

トルクの分離:Σᵢ Nᵢ = N_ext(外部トルクの和)+ N_int(内部トルクの和)

ニュートンの第3法則(作用反作用)より:N_int = 0

∴ dL_total/dt = N_ext

N_ext = 0 のとき:L_total = 一定(角運動量保存則)

内部トルクがゼロになる理由は、ニュートンの第3法則(作用反作用の法則)によります。

物体iが物体jに与える力と物体jが物体iに与える力は、大きさが等しく反対向きで、かつ同一直線上にはたらくため、内部トルクの和はゼロになります。

「内部力のトルクは必ず打ち消し合う」というこの論理が、多体系での角運動量保存則の根拠です。

ネーターの定理と対称性——角運動量保存則の深い背景

より深い物理の視点から見ると、角運動量保存則は「空間の回転対称性」から生まれます。

これはネーターの定理と呼ばれる数学的定理の帰結で、「物理法則が特定の対称性を持つとき、それに対応する保存則が存在する」という内容です。

ネーターの定理と保存則の対応関係

時間の並進対称性 → エネルギー保存則

空間の並進対称性 → 運動量保存則

空間の回転対称性 → 角運動量保存則

宇宙がどの方向を向いていても同じ物理法則が成立するからこそ、角運動量は保存されます。

この考え方は、古典力学にとどまらず、量子力学・相対性理論・素粒子物理学まで貫通する普遍的な原理です。

角運動量保存則の応用例:様々な物理現象への適用

続いては、角運動量保存則が実際の物理現象でどのように適用されるかを確認していきます。

日常生活から宇宙まで、角運動量保存則は非常に広い範囲で活躍します。

天体の公転と中心力場での角運動量保存

惑星が太陽の周りを公転するとき、太陽からの万有引力は常に惑星に向かう中心力です。中心力は基準点(太陽)を通る方向にはたらくため、トルクがゼロとなり、惑星の角運動量が保存されます。

この結果として生まれるのがケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)です。

惑星が太陽から遠い位置(遠日点)では速度が小さく、近い位置(近日点)では速度が大きくなります。これは、角運動量 L = mvr = 一定を保つために、rが大きいと v が小さくなり、rが小さいと v が大きくなるためです。

剛体の回転問題:角運動量保存則の計算例

剛体の回転問題では、角運動量保存則を使って回転速度の変化を計算できます。

例題:回転する円板への質点の落下

質量M、半径Rの円板が角速度ω₀で回転している。

中心から距離rの位置に質量mの質点が静かに置かれたとき、円板の新しい角速度ωを求める。

【解法】外部トルクがゼロなので角運動量が保存される。

初期角運動量:L₀ = I_disk × ω₀ = (MR²/2) × ω₀

最終角運動量:L = (I_disk + mr²) × ω = (MR²/2 + mr²) × ω

角運動量保存則:(MR²/2) × ω₀ = (MR²/2 + mr²) × ω

∴ ω = (MR²ω₀) / (MR² + 2mr²)

この例から、質点を外側に置くほど(rが大きいほど)最終的な角速度が小さくなることがわかります。

慣性モーメントの増加が角速度の減少につながるという、角運動量保存則の本質がよく現れた例題です。

角運動量保存則と量子力学

量子力学においても角運動量保存則は成立しますが、角運動量が「量子化」されるという古典力学にはない特徴があります。

量子力学での角運動量の大きさは、量子数lを使って次のように表されます。

量子力学における軌道角運動量の大きさ

|L| = ℏ√(l(l+1)) (l = 0, 1, 2, 3, …)

z成分:Lz = mℏ (m = -l, -l+1, …, l-1, l)

ℏ = h/(2π):換算プランク定数

角運動量が連続的な値を取れずに離散的な(量子化された)値しか取れないというこの性質は、原子・分子の電子構造や核構造を理解する上で根本的に重要です。

電子のスピン角運動量(s = 1/2)も角運動量の一種であり、スピン量子数を使って同様に記述されます。

まとめ

本記事では、角運動量保存則の意味・公式・成立条件・導出方法について詳しく解説しました。

角運動量保存則とは「外部トルクがゼロのとき、系の全角運動量は一定」という法則であり、dL/dt = N(外部トルク)という式から自然に導かれます。

成立条件は「外部トルクがゼロ」であり、外力がゼロの場合や外力が中心力の場合にこれが満たされます。

フィギュアスケートのスピン・惑星の公転・剛体の回転など、様々な現象が角運動量保存則によって説明できます。

また、ネーターの定理により、角運動量保存則は「空間の回転対称性」という深い物理的背景を持つことも理解できました。

角運動量保存則をしっかりマスターして、回転運動の問題をスムーズに解けるようになっていただければ幸いです。

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