生成エンタルピーの求め方は?計算方法と公式を解説(計算式:測定方法:ヘスの法則:標準生成エンタルピーなど)
化学の授業や資格試験の勉強をしていると、必ずと言っていいほど登場するのが生成エンタルピーという言葉です。
名前だけ聞くと難しそうに感じますが、仕組みを分解していくと意外にシンプルな考え方でできています。
とはいえ、生成エンタルピーの求め方や公式の使い方でつまずく人はとても多いのが実情です。
反応エンタルピーとの違いがわからなかったり、ヘスの法則をどう使えばいいのか迷ったりすることもあるでしょう。
標準生成エンタルピーという言葉が加わると、さらに混乱してしまう人もいるはずです。
この記事では、生成エンタルピーの求め方をはじめ、計算方法や公式、ヘスの法則との関係、標準生成エンタルピーの意味、そして実際の測定方法まで、順を追って丁寧に解説していきます。
専門用語をできるだけかみ砕きながら、具体例や表を交えて説明していきますので、化学が苦手な方でも安心して読み進めてください。
最後まで読めば、生成エンタルピーの求め方について一通りの知識が身につくはずです。
生成エンタルピーの求め方の結論
それではまず生成エンタルピーの求め方の結論について解説していきます。
結論から言うと、生成エンタルピーは「反応物のエンタルピーの合計」と「生成物のエンタルピーの合計」の差から求めることができます。
もう少し具体的に言うと、目的の化合物が単体からどれだけの熱を出し入れして生成されたかを表す値が生成エンタルピーです。
基本となる公式は非常にシンプルです。
ΔHf=生成物の生成エンタルピーの総和-反応物の生成エンタルピーの総和
この式さえ押さえておけば、多くの問題に対応できるでしょう。
ただし、実際の試験や演習では単純な引き算だけでは解けない問題も多く出てきます。
そのため、ヘスの法則や標準生成エンタルピーの表を組み合わせて使う場面が非常に多いです。
生成エンタルピーとは何か
生成エンタルピーとは、ある化合物が最も安定な単体から生成されるときに発生または吸収する熱量のことです。
単位にはキロジュール毎モルがよく使われます。
発熱反応であればマイナスの値、吸熱反応であればプラスの値になる点も覚えておきたいポイントです。
身近な例で言えば、二酸化炭素や水などの生成エンタルピーはよく問題に登場します。
これらの値は実験的に測定され、化学便覧などにまとめられているものが多いです。
基本公式の意味
先ほど紹介した公式は、エネルギー保存の考え方に基づいています。
化学反応の前後でエネルギーの総量は変わらないという前提があるからこそ、生成物と反応物のエンタルピー差から反応エンタルピーを求められるのです。
この考え方は熱化学の基本中の基本と言えるでしょう。
公式を丸暗記するのではなく、なぜその式になるのかを理解しておくと応用問題にも対応しやすくなります。
求め方の全体像
生成エンタルピーを求める流れは大きく分けて三つのステップになります。
まず反応式を正確に書き出すこと。
次に各物質の標準生成エンタルピーの値を調べること。
最後に公式に当てはめて計算することです。
この三ステップを意識するだけで、複雑に見える問題も整理しやすくなるはずです。
生成エンタルピーの計算方法
続いては生成エンタルピーの具体的な計算方法を確認していきます。
計算方法自体は決して難しいものではありませんが、符号のミスや係数の掛け忘れなど、細かいところで間違えやすい部分があります。
ここでは反応エンタルピーとの関係や、実際の計算手順を詳しく見ていきましょう。
反応エンタルピーとの関係式
生成エンタルピーを使って反応エンタルピーを求める式は、化学の計算問題で頻出です。
反応エンタルピー=Σ生成物の生成エンタルピー×係数-Σ反応物の生成エンタルピー×係数
ここで重要なのは、係数を必ず掛け合わせることです。
係数を忘れてしまうと、答えが大きくずれてしまいます。
反応式を書くときに係数をそろえておくと、後の計算がぐっと楽になるでしょう。
計算の具体的手順
実際にメタンの燃焼反応を例に計算の流れを見てみましょう。
反応式はCH4+2O2からCO2+2H2Oというかたちになります。
| 物質 | 標準生成エンタルピー(kJ/mol) |
|---|---|
| CH4(気) | -74.8 |
| O2(気) | 0 |
| CO2(気) | -393.5 |
| H2O(液) | -285.8 |
この表の値を使って計算すると、生成物側は-393.5とマイナス571.6を足したものになります。
反応物側はマイナス74.8とゼロを足したものです。
両者の差を取ることで、燃焼反応全体のエンタルピー変化を求めることができます。
計算していくと、およそマイナス890.3キロジュール毎モルという発熱反応になることがわかるでしょう。
計算時の注意点
計算でつまずきやすいポイントはいくつかあります。
まず単体の生成エンタルピーは常にゼロであることを忘れないようにしましょう。
次に、状態(気体・液体・固体)によって値が異なるため、表を見る際は状態も必ず確認してください。
符号の扱いも要注意です。
発熱ならマイナス、吸熱ならプラスという基本ルールを頭に入れておけば、大きな間違いは防げるはずです。
ヘスの法則を使った求め方
続いてはヘスの法則を使った生成エンタルピーの求め方を確認していきます。
直接測定が難しい化合物のエンタルピーを求めるとき、ヘスの法則は非常に強力な道具になります。
ヘスの法則とは
ヘスの法則とは、反応エンタルピーは反応の経路によらず、始状態と終状態だけで決まるという法則です。
つまり、一段階で進む反応でも、複数の段階を経て進む反応でも、最終的なエンタルピー変化は同じになります。
この性質を利用すると、直接測定できない反応のエンタルピーを、測定可能な複数の反応から間接的に求めることができるのです。
ヘスの法則の最大のポイントは、反応経路をいくつかの既知反応の組み合わせに分解できるという点にあります。
これにより、実験的に測定しづらい生成エンタルピーであっても、既知のデータを組み合わせるだけで算出できるようになります。
ヘスの法則を用いた計算例
代表的な例として、炭素が不完全燃焼して一酸化炭素になる反応の生成エンタルピーを求めるケースがあります。
この反応は直接測定するのが難しいため、次の二つの反応を組み合わせて求めます。
| 反応 | エンタルピー変化(kJ/mol) |
|---|---|
| C(黒鉛)+O2→CO2 | -393.5 |
| CO+1/2O2→CO2 | -283.0 |
求めたいのはC(黒鉛)+1/2O2→COの反応エンタルピーです。
一つ目の式から二つ目の式を引くことで、目的の反応式を作り出すことができます。
計算すると、マイナス393.5からマイナス283.0を引いた値、つまりマイナス110.5キロジュール毎モルという結果になるでしょう。
このように、複数の反応式を足したり引いたりして目的の式を組み立てる方法が、ヘスの法則を使った計算の基本です。
ヘスの法則が使われる理由
なぜわざわざ複数の反応を組み合わせる必要があるのでしょうか。
理由は単純で、一酸化炭素のように反応の途中で目的の物質だけを取り出すのが難しいケースが多いからです。
炭素の燃焼は条件によって一酸化炭素と二酸化炭素が混在して生成されてしまうため、一酸化炭素だけの生成エンタルピーを直接測るのは実験的に困難になります。
そこでヘスの法則を使い、測定しやすい反応を組み合わせることで、間接的に目的の値を導き出すという工夫がなされているのです。
標準生成エンタルピーとは
続いては標準生成エンタルピーの意味について確認していきます。
生成エンタルピーの計算をするうえで、標準生成エンタルピーという言葉の理解は欠かせません。
標準状態の定義
標準生成エンタルピーとは、標準状態(一般に25度、1気圧)における単体から化合物1モルが生成するときのエンタルピー変化のことを指します。
温度や圧力の条件をそろえることで、異なる実験や文献の値を比較しやすくするという狙いがあります。
標準状態でない条件下では、同じ物質でも生成エンタルピーの値が変わってしまう場合があるため注意が必要でしょう。
標準生成エンタルピーの値の見方
標準生成エンタルピーの値は、化学便覧や教科書の巻末データにまとめられていることが多いです。
代表的な物質の値を以下の表にまとめました。
| 物質 | 状態 | 標準生成エンタルピー(kJ/mol) |
|---|---|---|
| 水 | 液体 | -285.8 |
| 水 | 気体 | -241.8 |
| 二酸化炭素 | 気体 | -393.5 |
| アンモニア | 気体 | -46.1 |
| 塩化水素 | 気体 | -92.3 |
同じ水でも、液体と気体では値が異なる点に気づいたでしょうか。
これは状態変化にもエネルギーの出入りが伴うためです。
表から値を読み取る際は、必ず物質の状態も合わせて確認するようにしてください。
単体の標準生成エンタルピーがゼロになる理由
酸素や窒素、黒鉛などの単体は、標準状態において標準生成エンタルピーがゼロと定義されています。
なぜゼロになるのでしょうか。
これは、単体そのものが生成の出発点として基準に設定されているためです。
基準点をゼロに置くことで、化合物の生成エンタルピーを相対的な値として統一的に扱えるようになります。
この考え方は温度の基準を摂氏0度に置くこととよく似た発想と言えるでしょう。
生成エンタルピーの測定方法
続いては生成エンタルピーの測定方法について確認していきます。
理論だけでなく、実際にどのように値が得られているのかを知っておくと理解が深まります。
実験による測定
生成エンタルピーの測定には、ボンブカロリメーター(熱量計)を使った燃焼実験がよく用いられます。
密閉容器の中で物質を燃焼させ、その際に発生した熱量を水の温度上昇から算出するという仕組みです。
測定された燃焼エンタルピーから、ヘスの法則を用いて生成エンタルピーを逆算することも多くあります。
実験環境の温度や圧力を標準状態にそろえることで、標準生成エンタルピーとしてのデータが得られます。
理論計算による推定
実験による測定が難しい物質については、量子化学計算などの理論的な手法で推定される場合もあります。
分子軌道法や密度汎関数理論といった計算化学の手法を用いることで、実験を行わなくても比較的精度の高い値を得られるようになってきました。
とはいえ、理論値はあくまで推定値であり、実測値と多少のずれが生じることもあるでしょう。
研究や実務で使う際は、出典が実験値なのか理論値なのかを確認しておくと安心です。
測定値を使う際の注意点
生成エンタルピーの値は、資料によって微妙に異なることがあります。
測定条件の違いや、測定機器の精度が原因になっていることが多いです。
試験勉強で使う場合は、教科書や配布資料に記載された値を優先して使うようにしましょう。
実務や研究で使う場合は、信頼できる化学便覧や公的機関のデータベースを参照することをおすすめします。
生成エンタルピーを使った計算例
続いては生成エンタルピーを使った具体的な計算例を確認していきます。
実際に手を動かして計算することで、公式の理解がぐっと深まるはずです。
燃焼反応の例
エタノールの燃焼反応を例に見てみましょう。
反応式はC2H5OH+3O2からCO2が2つと水が3つ生成されるというものです。
| 物質 | 標準生成エンタルピー(kJ/mol) |
|---|---|
| C2H5OH(液) | -277.7 |
| O2(気) | 0 |
| CO2(気) | -393.5 |
| H2O(液) | -285.8 |
ΔH={(-393.5×2)+(-285.8×3)}-(-277.7+0)
ΔH=(-787.0-857.4)-(-277.7)
ΔH=-1366.7
計算の結果、およそマイナス1366.7キロジュール毎モルという大きな発熱反応であることがわかります。
エタノールが燃料として使われる理由の一端も、このエネルギー量の大きさから見えてくるでしょう。
化合物の生成エンタルピー計算例
今度は、既知の反応エンタルピーから未知の化合物の生成エンタルピーを逆算する例を見てみましょう。
プロパンの燃焼エンタルピーがマイナス2220キロジュール毎モルとわかっているとします。
燃焼反応式はC3H8+5O2からCO2が3つと水が4つです。
二酸化炭素と水の標準生成エンタルピーは先ほどの表の値を使えます。
燃焼エンタルピーの式に既知の値を代入し、プロパンの生成エンタルピーだけを未知数として方程式を解くと、およそマイナス103.8キロジュール毎モルという値が得られるでしょう。
このように、燃焼エンタルピーと生成エンタルピーは互いに逆算できる関係にあります。
よくあるミスと対策
計算問題で特に多いミスをいくつか紹介します。
一つ目は係数の掛け忘れです。
反応式の係数を無視して計算してしまうと、答えが数倍ずれてしまいます。
二つ目は符号の間違いです。
生成物と反応物のどちらを先に引くのか、公式の順序を勘違いしてしまうケースがよく見られます。
三つ目は状態の見落としです。
気体と液体で値が異なることを忘れ、誤った数値を使ってしまう人も少なくありません。
計算前に反応式と係数、物質の状態を一度整理してから公式に当てはめる習慣をつけると、ミスをぐっと減らせるでしょう。
まとめ
ここまで、生成エンタルピーの求め方について、計算方法や公式、ヘスの法則、標準生成エンタルピー、測定方法まで幅広く解説してきました。
生成エンタルピーは、生成物と反応物のエンタルピー差から求められるというシンプルな考え方が基本になります。
そこに係数の掛け算や状態の確認といった細かいルールが加わることで、計算の精度が求められる分野と言えるでしょう。
直接測定が難しい反応については、ヘスの法則を使って既知の反応を組み合わせることで求められることも紹介しました。
標準生成エンタルピーは、標準状態という共通の条件下で定義された値であり、単体は常にゼロになるという点も重要なポイントです。
実験ではボンブカロリメーターによる燃焼測定が代表的な手法であり、理論計算による推定も近年広く行われています。
公式や法則を丸暗記するのではなく、なぜその式になるのかという背景を理解しておくことで、応用問題にも柔軟に対応できるようになるはずです。
今回紹介した表や計算例を参考にしながら、ぜひ実際の問題演習にも取り組んでみてください。
繰り返し計算を練習することで、生成エンタルピーの求め方は着実に身についていくでしょう。