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蒸気圧の求め方は?計算方法と公式も!(飽和蒸気圧・クラウジウス・クラペイロン式・アントワン式など)

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「蒸気圧はどうやって求めるの?」「クラウジウス・クラペイロン式やアントワン式ってどう使うの?」化学や物理を学ぶなかで、こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

蒸気圧は温度によって大きく変化する物質固有の値であり、その求め方には実験的な測定方法から理論式・経験式まで複数のアプローチが存在します。

本記事では、蒸気圧の求め方・計算方法・代表的な公式(クラウジウス・クラペイロン式・アントワン式)の使い方を、飽和蒸気圧の概念とともにわかりやすく丁寧に解説いたします。

化学の計算が苦手な方も、公式の使い方を整理したい方も、ぜひ最後までご覧ください。

目次

蒸気圧の求め方は「実験的測定・クラウジウス・クラペイロン式・アントワン式」の3つのアプローチがある

それではまず、蒸気圧を求めるための3つの主要なアプローチの全体像について解説していきます。

蒸気圧の求め方には大きく分けて、実験的に測定する方法・熱力学的な理論式(クラウジウス・クラペイロン式)を使う方法・経験的な回帰式(アントワン式)を使う方法の3種類があります。

蒸気圧を求める3つのアプローチの概要:①実験的測定(静的法・動的法・露点法など)で直接測定する、②クラウジウス・クラペイロン式で蒸発エンタルピーと温度から理論的に計算する、③アントワン式で経験的パラメータA・B・Cを使って任意の温度の蒸気圧を計算する。実用上はアントワン式が最も広く使われています。

どのアプローチを選ぶかは、必要な精度・利用可能なデータ・対象となる温度範囲によって異なります。

それぞれの方法の特徴と計算手順を順番に確認していきましょう。

飽和蒸気圧とは何か(基本概念の確認)

蒸気圧を求めるうえで前提となる概念が「飽和蒸気圧」です。

飽和蒸気圧とは、密閉容器の中で液体と蒸気が気液平衡の状態にあるときに蒸気が示す圧力のことであり、温度のみによって決まる物質固有の値です。

温度が高いほど蒸発速度が増し、平衡に達したときの蒸気の量も増えるため、飽和蒸気圧は温度とともに増大します。

「蒸気圧」と「飽和蒸気圧」はほぼ同義で使われることが多く、本記事でも同じ意味として扱います。

実験的測定の主な方法

蒸気圧を直接測定する実験的手法にはいくつかの種類があります。

測定方法 概要 適した場面
静的法 密閉系で気液平衡を達成し、圧力計で直接測定 広い温度・圧力範囲の精密測定
動的法(沸点法) 液体を沸騰させて外部圧力と蒸気圧が等しくなる温度(沸点)を測定 常圧付近の沸点が既知の物質
露点法 気体を冷却して凝縮が始まる露点温度を測定し、その温度の飽和蒸気圧を求める 水蒸気・大気中の水分測定
重量法(重量減少法) 蒸発による質量減少速度から蒸気圧を推算 蒸気圧が非常に低い物質

実験的測定は最も直接的な方法ですが、精密な装置・制御された環境・時間が必要であり、工学的な計算やプロセス設計では公式を使った計算が主流です。

クラウジウス・クラペイロン式による蒸気圧の計算方法

続いては、熱力学的な理論式であるクラウジウス・クラペイロン式の意味と使い方を確認していきます。

この式を使うと、蒸発エンタルピーと2点の温度・蒸気圧データから別の温度の蒸気圧を推定することができます。

クラウジウス・クラペイロン式とは

クラウジウス・クラペイロン式(Clausius-Clapeyron equation)は、蒸気圧の温度依存性を熱力学的に記述する式です。

微分形は以下のように表されます。

微分形:d(ln P) / dT = ΔHvap / (R × T²)

P:蒸気圧、T:絶対温度(K)、ΔHvap:蒸発エンタルピー(J/mol)、R:気体定数(8.314 J/mol・K)

ΔHvap が温度によらず一定と近似すると、積分形の式が得られます。

積分形(2点間の関係):

ln(P₂/P₁) = −(ΔHvap / R)× (1/T₂ − 1/T₁)

P₁:温度T₁における蒸気圧

P₂:温度T₂における蒸気圧(求めたい値)

この式は「2点の温度・蒸気圧データ(またはΔHvapと1点のデータ)から任意の温度の蒸気圧を計算できる」という強力な道具です

クラウジウス・クラペイロン式の具体的な計算例

水のΔHvap=40.7kJ/mol(40700J/mol)として、100℃(373.15K)の蒸気圧が101.3kPaであることを利用し、80℃(353.15K)における蒸気圧を求めてみましょう。

ln(P₂/P₁) = −(40700 / 8.314)× (1/353.15 − 1/373.15)

1/353.15 ≒ 0.002832、1/373.15 ≒ 0.002680

1/T₂ − 1/T₁ = 0.002832 − 0.002680 = 0.000152

−(40700 / 8.314)× 0.000152 = −4891 × 0.000152 ≒ −0.744

ln(P₂/101.3) = −0.744

P₂/101.3 = e^(−0.744) ≒ 0.475

P₂ ≒ 101.3 × 0.475 ≒ 48.1kPa

(実測値は約47.4kPaであり、良好な近似が得られています)

このように、クラウジウス・クラペイロン式は実測データに近い値を与える有用な近似式です。

クラウジウス・クラペイロン式のグラフ的な利用

クラウジウス・クラペイロン式を変形すると、ln P を 1/T に対してプロット(グラフ化)すると直線になることがわかります。

ln P = −(ΔHvap / R)× (1/T)+ C(Cは定数)

横軸:1/T(K⁻¹)、縦軸:ln P

傾き:−ΔHvap / R → 傾きから ΔHvap を求められる

実験的に複数の温度での蒸気圧を測定し、ln P vs 1/T のグラフを描くと直線が得られ、その傾きからΔHvapを求めることができます。

これは蒸発エンタルピーを実験的に決定する標準的な手法として広く使われています

アントワン式による蒸気圧の計算方法

続いては、工業・化学の実務で最も広く使われる経験式であるアントワン式の使い方を確認していきます。

クラウジウス・クラペイロン式より精度が高く、幅広い温度範囲への適用が可能なアントワン式は非常に実用的な公式です。

アントワン式の公式

アントワン式(Antoine equation)は、19世紀のフランスの化学者シャルル・アントワン(Charles Antoine)が提案した経験的な蒸気圧公式です。

アントワン式:log₁₀(P) = A − B / (C + T)

P:蒸気圧(単位は定数によって異なる、kPaやmmHgなど)

T:温度(℃またはKを使う場合があるため定数の定義を確認すること)

A、B、C:物質固有のアントワン定数(文献・データベースから取得)

アントワン定数A・B・CはNIST(米国国立標準技術研究所)のWebBookや化学便覧・Perry’s Chemical Engineers’ Handbookなどのデータベースに収録されており、主要な物質については広く参照できます。

水のアントワン定数と計算例

水(液体、60〜150℃の範囲)のアントワン定数の例として、温度℃・圧力mmHgの系では以下の値が広く使われています。

水(H₂O)のアントワン定数(一例):

A = 8.07131、B = 1730.63、C = 233.426(温度:℃、圧力:mmHg)

80℃における蒸気圧を計算:

log₁₀(P) = 8.07131 − 1730.63 / (233.426 + 80)

= 8.07131 − 1730.63 / 313.426

= 8.07131 − 5.5215

= 2.5498

P = 10^2.5498 ≒ 354.7mmHg ≒ 47.3kPa

(実測値は約47.4kPaであり、非常に良好な精度)

アントワン式はクラウジウス・クラペイロン式より広い温度範囲で高精度な計算ができる実用的な公式であり、化学工学の設計計算で特に重宝されます。

アントワン定数の単位に注意する

アントワン式を使う際の最大の注意点は、定数の定義(温度の単位が℃かKか、圧力の単位がmmHgかkPaかbar等か)が文献によって異なる点です。

定数の出所を確認せずに使うと、大きな誤差が生じますので注意が必要です。

NISTのWebBookでは各物質の定数と適用温度範囲・圧力単位が明示されているため、信頼性の高い参照先として強く推奨されます。

蒸気圧計算の実用的な使い方とまとめ方

続いては、蒸気圧の計算を実際の問題に応用するための考え方と、計算精度を高めるためのポイントを確認していきます。

目的に応じた公式の選び方

目的・状況 推奨する方法 精度の目安
蒸発エンタルピーが既知で2点のデータがある クラウジウス・クラペイロン式 中程度(数%の誤差が生じることも)
広い温度範囲での精度が必要 アントワン式 高精度(適用範囲内で1%以内も)
物質のアントワン定数が入手できない クラウジウス・クラペイロン式または実験測定 状況による
最高精度が必要な工業設計 精密状態方程式(PR式・SRK式等) 非常に高精度

計算精度を高めるためのポイント

クラウジウス・クラペイロン式は ΔHvap が一定と仮定していますが、実際には温度によって変化するため、温度範囲が広いほど誤差が大きくなります。

クラウジウス・クラペイロン式は温度差が小さい範囲(±30℃程度以内)での補間に最も適しており、それ以上の温度範囲ではアントワン式の使用を推奨します

アントワン式を使う際は、定数の適用温度範囲外での計算を避けることが重要です。

適用範囲外では急激に精度が悪化するため、必ず定数の適用範囲を確認してから計算を行いましょう。

蒸気圧の計算が使われる実際の場面

蒸気圧の計算は、様々な工学・科学の場面で活用されています。

化学プラントの蒸留塔設計では、各成分の蒸気圧比(相対揮発度)を計算して分離効率を評価します。

大気環境モデリングでは、揮発性有機化合物(VOC)の蒸気圧を用いて大気中への放散速度を推算します。

医薬品の製剤設計では、有効成分・溶媒の蒸気圧が乾燥工程・保存安定性に関わります。

食品加工では、乾燥・凍結乾燥プロセスの設計に水の蒸気圧データが不可欠です。

危険物・消防法の観点からは、引火性液体の蒸気圧が引火点・爆発限界の評価に直結します。

まとめ

本記事では、蒸気圧の求め方・計算方法・クラウジウス・クラペイロン式・アントワン式の使い方について、飽和蒸気圧の概念とともに詳しく解説してきました。

蒸気圧を求める主なアプローチは、実験的測定・クラウジウス・クラペイロン式・アントワン式の3つです。

クラウジウス・クラペイロン式は熱力学的な理論式であり、蒸発エンタルピーと2点のデータから別の温度の蒸気圧を推算できます。

アントワン式は経験的な3定数式であり、適用温度範囲内では高精度な計算が可能で実務で最もよく使われます。

目的・精度要件・利用可能なデータに応じて適切な方法を選び、単位と適用範囲に注意しながら計算することが、正確な蒸気圧評価の鍵となるでしょう。

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