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ネルンストの式とpHの関係は?pH電極の原理も解説(水素電極:ガラス電極:ネルンスト応答:電位差測定:pH測定原理など)

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日常の実験や工業プロセスでは、溶液のpHを正確に測定することが非常に重要です。

その pH 測定の根幹にあるのが、ネルンストの式と電極電位の関係です。

ネルンストの式と pH は、電気化学における最も重要な接点のひとつであり、水素電極・ガラス電極・ネルンスト応答・電位差測定など、pH 計測に関わる技術はすべてこの式を基盤としています。

本記事では、ネルンストの式が pH とどのように結びついているか、さらに pH 電極の原理についても丁寧に解説していきます。

目次

ネルンストの式と pH の基本的な関係:一電子プロトン移動の視点から

それではまず、ネルンストの式と pH の基本的な関係について解説していきます。

水素イオン(H⁺)に関わる電極反応にネルンストの式を適用すると、電極電位が pH に直接依存する形が導かれます。

水素電極のネルンスト式と pH

標準水素電極(SHE)を基準とした水素電極反応は次のとおりです。

2H⁺ + 2e⁻ → H₂ E° = 0.00 V

ネルンスト式:E = 0 – (0.0592/2) × log(P_H₂ / [H⁺]²)

水素分圧 P_H₂ = 1 atm とすると:

E = -(0.0592/2) × log(1/[H⁺]²)

= -(0.0592/2) × 2 × log(1/[H⁺])

= -0.0592 × log(1/[H⁺])

= -0.0592 × pH (25℃)

この結果から、25℃において水素分圧1 atm での水素電極電位は pH に対して -59.2 mV/pH の感度で変化することがわかります。

pH が1単位増加するごとに、電極電位は 59.2 mV 低下するということです。

pH と電極電位の定量的関係

pH 水素電極電位 E(V、25℃、P_H₂=1 atm)
0 0.000
2 -0.118
4 -0.237
7(中性) -0.414
10 -0.592
14 -0.828

この線形関係が、電位差測定による pH 測定の理論的根拠です。

pH の定義とネルンストの式の整合性

IUPAC による pH の厳密な定義は、水素イオンの活量 a_H+ を用いた次の式です。

pH = -log a_H+

ネルンストの式では活量を使うため、厳密には濃度ではなく活量ベースの pH が電位と対応することになります。

希薄溶液では活量と濃度が近似的に等しいため問題ありませんが、イオン強度の高い溶液では活量係数の補正が必要となる場合があります。

水素電極:最も基本的な pH 電極

続いては、水素電極の構造・原理・実用上の限界について確認していきます。

水素電極は理論的に最も基本的な pH 測定電極ですが、実用面での問題もあります。

水素電極の構造と動作原理

水素電極は、白金(Pt)線または白金黒(微粒子状白金)を表面に持つ電極を、水素ガスを含む溶液に浸したものです。

白金表面に水素分子が吸着し、電気化学的に H⁺ と電子に解離・会合する反応が起こります。

H₂ ⇌ 2H⁺ + 2e⁻ (電極表面での平衡)

この平衡電位がネルンストの式に従って pH に依存するため、溶液の pH 変化が電位変化として検出できます。

標準水素電極(SHE)は H⁺ 活量 = 1、H₂ 分圧 = 1 atm という標準条件を満たす理想的な水素電極であり、すべての電極電位の基準として定義されています。

水素電極の実用上の問題点

水素電極は理論的には優れていますが、実用的な pH 測定にはいくつかの困難があります。

問題点 内容
水素ガスの取り扱い 可燃性ガスの供給・管理が必要で危険性がある
触媒毒 硫黄化合物・酸化剤が白金触媒を被毒させる
応答速度 平衡に達するまでに時間がかかることがある
携帯性 ガス供給装置が必要で野外使用が困難

これらの問題から、日常的な pH 測定には水素電極ではなく、ガラス電極が広く使われています。

標準水素電極の代替電極

実験室では、水素電極の代わりに次のような基準電極がよく使われます。

カロメル電極(SCE:飽和カロメル電極)は Hg/Hg₂Cl₂/KCl(飽和)系で電位が +0.241 V(vs SHE)、銀-塩化銀電極(Ag/AgCl)は +0.197 V(vs SHE、飽和KCl)という安定した基準電位を持ちます。

これらを参照電極として、測定対象電極との電位差からpHを算出するのが一般的な pH 計測の構成です。

ガラス電極:実用的な pH 測定の主役

続いては、現在の pH 測定で主流となっているガラス電極の原理と特性を確認していきます。

ガラス電極はネルンストの式に従ったH⁺選択的な応答を示す特殊なガラス膜電極です。

ガラス電極の基本構造

ガラス電極は、薄い特殊ガラス膜(厚さ 0.05〜0.5 mm)を球状または平板状に成形したものです。

このガラス膜は、水中でガラス表面に水和層(シリケートゲル層)を形成し、H⁺ イオンをほぼ選択的に通す性質を持ちます。

ガラス電極の動作原理は「膜電位」の発生にあります。ガラス膜の内側と外側のH⁺活量が異なるとき、ネルンストの式に従って膜電位が生じ、この電位差からpHが測定されます。

電位発生のメカニズムを式で表すと次のようになります。

E_膜 = const + (RT/F) × ln(a_H+外 / a_H+内)

= const – 0.0592 × (pH_外 – pH_内) (25℃)

内側(参照溶液)のpHは一定なので、外側(測定溶液)のpHに対して線形に変化

ガラス電極のネルンスト応答と感度

理想的なガラス電極は25℃で -59.16 mV/pH のネルンスト感度を示します。

実際の電極では製造精度や経年変化により、理論値より少し小さい感度(-55〜-59 mV/pH 程度)を示すことがあります。

この実際の感度は「実用ネルンスト感度」と呼ばれ、pH計のキャリブレーション(較正)で決定されます。

2点校正(pH 4.00 と pH 7.00 の標準緩衝液など)を行うことで、電極の傾き(感度)と切片(不斉電位)の両方が補正されます。

ガラス電極の限界と誤差要因

ガラス電極には、以下のような測定誤差要因が存在します。

誤差要因 内容 影響が大きい条件
アルカリ誤差 Na⁺などのアルカリイオンに応答して見かけのpHが低くなる pH > 12の強アルカリ溶液
酸誤差 H₂O活量の低下により見かけのpHが高くなる pH < 0付近の強酸溶液
温度誤差 ネルンスト感度が温度依存(温度補正が必要) 25℃から大きく外れた温度
液絡電位 参照電極の液絡部での電位差 高イオン強度溶液

電位差測定によるpH測定:実際の計測システム

続いては、電位差測定を用いた実際のpH計測システムについて確認していきます。

ガラス電極と参照電極を組み合わせた電位差測定が、現代のpH計の基本構成です。

pH計の基本回路と測定原理

pH計は、ガラス電極(指示電極)と参照電極(基準電極)の間の電位差を高インピーダンス電圧計で測定する装置です。

測定される起電力 E_cell は次のように表されます。

E_cell = E_ref + E_junction + E_glass

= const – 0.0592 × pH_solution (25℃)

ここで「const」は電極ごとの固有値(非対称電位・液絡電位など)であり、校正によってこの定数を決定してpHを算出します。

2点校正と温度補正の重要性

精度の高いpH測定を行うには、2種類の標準緩衝液を使った2点校正が推奨されます。

日本工業規格(JIS)や国際規格でよく使われる標準緩衝液には、フタル酸水素カリウム(pH 4.01、25℃)・リン酸塩緩衝液(pH 6.86、25℃)・ホウ酸ナトリウム(pH 9.18、25℃)などがあります。

また、温度補正(ATC:Automatic Temperature Compensation)は、ネルンスト感度が温度依存するため非常に重要です。

体温(37℃)での感度は約 61.5 mV/pH であり、25℃の値(59.2 mV/pH)とは約4%の差があります。

イオン選択電極への応用:ネルンスト応答の拡張

ガラス電極の原理を一般化したイオン選択電極(ISE:Ion Selective Electrode)は、H⁺ 以外のイオン(Na⁺, K⁺, Ca²⁺, F⁻ など)の濃度測定にも応用されています。

ISE の応答もネルンストの式に従い、電位はイオンの活量の対数に比例します。

E = const + (0.0592 / z) × log a_i (一価カチオン z=+1 の場合)

E = const – (0.0592 / |z|) × log a_i (アニオンの場合)

ネルンスト応答からの偏りが少ないほど(ネルンスト感度に近いほど)高品質な ISE であり、血液・尿・環境水のイオン分析などで広く活用されています。

まとめ

本記事では、ネルンストの式と pH の関係について、水素電極の原理・ガラス電極の動作メカニズム・電位差測定システム・イオン選択電極への応用まで、幅広く解説してきました。

ネルンストの式から導かれる「25℃では pH1単位の変化が59.2 mVの電位変化に対応する」という関係は、pH 計測技術の根本にある重要な事実です。

ガラス電極はこのネルンスト応答を利用した最も実用的な pH センサーであり、正確な測定には校正・温度補正・誤差要因の管理が欠かせません。

さらに、ネルンストの式の原理はガラス電極に留まらず、様々なイオン選択電極・バイオセンサー・燃料電池センサーなど、現代の計測技術に広く応用されています。

ネルンストの式と pH の深い関係を理解することで、電気化学センサー全体への見通しが広がるでしょう。

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