海の潮の満ち引きを利用して電力を生み出す「潮力発電」は、再生可能エネルギーの中でも特にユニークな発電方式として注目されています。
「太陽光・風力とどう違うの?」「タービンはどうやって動くの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、潮力発電の仕組み・原理・発電方式・タービンの役割・環境への影響まで、わかりやすく解説していきます。
目次
潮力発電とは「潮汐エネルギーを電力に変換する再生可能エネルギー」のこと
それではまず、潮力発電の基本的な定義と仕組みについて解説していきます。
潮力発電(潮汐発電)とは、月や太陽の引力によって生じる海水の潮の満ち引き(潮汐)を利用して電力を生み出す発電方式です。
英語では「Tidal Power Generation」または「Tidal Energy」と呼ばれます。
太陽光・風力と同じ再生可能エネルギーですが、潮汐は天気や季節に関係なく規則的に生じるため、発電量の予測精度が高いという大きな特長を持ちます。
潮汐エネルギーの源は月と太陽の引力
潮力発電のエネルギー源は、月と太陽の引力による「潮汐力」です。
地球に対する月の引力が海水を引き寄せることで、1日に2回の満潮・干潮が生じます。
潮汐は月の公転周期に基づいて規則的に発生するため、潮力発電は出力の予測がしやすい安定した再生可能エネルギーという特性を持ちます。
太陽光発電が日照条件に、風力発電が風の強さに大きく依存するのとは対照的です。
潮力発電の主要な発電方式
潮力発電には大きく分けて2つの主要な方式があります。
① 潮汐堰堤式(ダム式):湾や河口に堤防(バラージ)を建設し、満潮・干潮による水位差を利用して水力タービンを回す方式
② 潮流式(流れ式):海中に設置したタービンが、潮流(海水の流れ)によって回転することで発電する方式
潮汐堰堤式は大規模な電力を安定供給できる一方、建設コストが高く生態系への影響が大きいという課題があります。
潮流式は比較的環境負荷が低く、近年技術開発が急速に進んでいます。
潮力発電のタービンの仕組みと原理
続いては、潮力発電に使われるタービンの仕組みと発電の原理を確認していきます。
潮汐堰堤式のタービン(水車タービン)
潮汐堰堤式では、満潮・干潮による水位差を使って水をタービンに通し、回転させます。
使われるタービンは水力発電所のカプラン型タービンに近い構造であり、海水が羽根に当たることで回転エネルギーに変換されます。
潮汐堰堤式では満潮から干潮、干潮から満潮の両方向で発電できる「双方向発電」が可能なタービンも使われています。
潮流式タービン(水中タービン)の仕組み
潮流式タービンは、海中に設置された水中タービンが潮の流れによって回転し発電します。
外見は水中に設置した風力タービンに似ており、「水中風力発電」とも表現されることがあります。
潮流式タービンは海底に固定する方式と、浮体式で海面近くに設置する方式があり、設置場所の水深・潮流速度・底質に応じて選択されます。
潮流速度2〜3m/s以上の海域が発電に適しており、日本近海にも適地が存在します。
潮力発電の出力計算式
潮汐堰堤式の発電出力は以下の式で求められます。
P = ρgAR²η÷(2T)
・P:発電出力(W)
・ρ:海水密度(約1025 kg/m³)
・g:重力加速度(9.81 m/s²)
・A:堰堤内の海面面積(m²)
・R:潮差(満潮・干潮の水位差,m)
・η:発電効率
・T:潮汐周期
潮差が大きいほど、また堰堤内の面積が広いほど発電量が大きくなるため、潮差の大きい湾・河口が潮汐発電の好適地です。
潮力発電の環境への影響と世界の事例
続いては、潮力発電が環境に与える影響と世界各地の代表的な発電所を確認していきます。
潮力発電の環境への影響
潮力発電はCO₂を排出しない再生可能エネルギーですが、自然環境への影響が皆無というわけではありません。
潮汐堰堤式では、堤防の建設によって潮汐パターンが変化し、干潟・河口域の生態系が変化するリスクがあります。
潮流式タービンは堤防を建設しないため生態系への影響が比較的小さいとされていますが、タービンへの海洋生物の衝突リスクや騒音の問題も研究されています。
世界の潮力発電所の事例
世界で稼働している主要な潮力発電所には以下のようなものがあります。
| 発電所名 | 国 | 方式 | 出力 |
|---|---|---|---|
| ランス潮力発電所 | フランス | 潮汐堰堤式 | 240 MW |
| シーウォン潮力発電所 | 韓国 | 潮汐堰堤式 | 254 MW |
| MeyGen | イギリス | 潮流式 | 6 MW(フェーズ1) |
フランスのランス潮力発電所は1966年の稼働開始以来、50年以上にわたって安定発電を続けており、潮力発電の長期信頼性を実証しています。
日本における潮力発電の可能性
日本は複雑な海岸線と強い潮流を持つ海域が多く、潮力発電の潜在的なポテンシャルがあります。
特に鳴門海峡・来島海峡・関門海峡などは潮流が速く、潮流式発電の適地として研究・実証試験が進められています。
日本では2022年以降、長崎県五島列島や鹿児島県など複数箇所で潮流発電の実証実験が行われており、実用化に向けた取り組みが続いています。
まとめ
この記事では、潮力発電の仕組み・原理・タービンの種類・環境への影響・世界の事例について解説しました。
潮力発電は月と太陽の引力によって生じる潮汐エネルギーを利用した再生可能エネルギーであり、発電量の予測精度が高く安定供給できる点が太陽光・風力と異なる大きな特長です。
潮汐堰堤式と潮流式それぞれに特性と課題があり、技術開発と環境アセスメントを両立させながら普及が進んでいくでしょう。