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拡散方程式の導出方法は?基礎原理から詳しく解説(フィックの法則・連続の式・拡散係数・質量保存・偏微分など)

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拡散方程式は「なぜこのような形になるのか」を理解することで、その意味がぐっと深まります。

導出の鍵となるのは、フィックの法則と連続の式(質量保存則)という二つの基本原理です。

本記事では、これら二つの原理からスタートして拡散方程式を段階的に導出する方法を、数式の意味を丁寧に解説しながら進めていきます。

目次

拡散方程式の導出:フィックの法則と質量保存が出発点

それではまず、拡散方程式の導出の全体像と出発点となる基本原理を解説していきます。

拡散方程式はフィックの第一法則(拡散フラックスの定義)と連続の式(質量保存則)を組み合わせることで自然に導出されます。

導出の全体フローは次のようになります。

①フィックの第一法則:J = -D ∇c(フラックスと濃度勾配の関係)

②連続の式(質量保存):∂c/∂t = -∇·J

③①を②に代入:∂c/∂t = D Δc(拡散方程式の完成)

フィックの第一法則の意味

フィックの第一法則は、物質の拡散フラックス(単位時間・単位面積を通過する物質量)が濃度勾配に比例するという経験則です。

J = -D ∇c

J:拡散フラックス [mol/(m²·s)]

D:拡散係数 [m²/s]、c:濃度 [mol/m³]

マイナス符号は「濃度の高い方から低い方へ物質が流れる」ことを意味します。

これは日常経験(インクが広がる、香りが拡散する)と一致する直感的な法則でしょう。

連続の式(質量保存則)の導出

連続の式は、微小体積要素における質量保存から導かれます。

微小体積ΔVに着目すると、時間Δtの間の質量変化は流入フラックスと流出フラックスの差に等しいという原理が成立します。

∂c/∂t = -∇·J

これは「濃度の時間変化はフラックスの発散の符号反転に等しい」ことを意味します。

フラックスの発散∇·Jが正(流出が多い)なら濃度は減少し、負(流入が多い)なら増加するでしょう。

フィックの第一法則を連続の式に代入

J = -D∇c を ∂c/∂t = -∇·J に代入すると次のようになります。

∂c/∂t = -∇·(-D∇c) = D∇·(∇c) = DΔc

これがフィックの第二法則、すなわち拡散方程式です。

Dが空間的に一様な定数である場合にこの簡潔な形になります。

熱方程式としての拡散方程式の導出

続いては、熱伝導の観点から拡散方程式(熱方程式)を導出する手順を確認していきます。

フーリエの熱伝導法則

熱伝導の分野では、フーリエの法則が熱流束と温度勾配の関係を与えます。

q = -κ ∇T

q:熱流束 [W/m²]、κ:熱伝導率 [W/(m·K)]、T:温度 [K]

これはフィックの第一法則と全く同じ数学的構造を持っています。

熱も物質も「高い方から低い方へ流れる」という共通の原理に従います。

エネルギー保存則の適用

微小体積のエネルギー保存則は次のように表されます。

ρ c_p ∂T/∂t = -∇·q + Q̇

ρ:密度、c_p:定圧比熱、Q̇:単位体積当たりの発熱量

発熱がない場合(Q̇=0)にフーリエの法則を代入すると次の熱方程式が得られます。

∂T/∂t = (κ/(ρc_p)) ΔT = D_T ΔT

D_T = κ/(ρc_p):熱拡散率

発熱がある場合(Q̇≠0)は右辺に追加項が生じ、熱源を持つポアソン方程式の定常版と関連します。

拡散係数の温度・濃度依存性

実際の問題では、拡散係数Dが温度や濃度に依存することがあります。

D = D(c, T) の場合、拡散方程式は非線形になります。

∂c/∂t = ∇·(D(c)∇c)

この非線形拡散方程式は解析的に解くことが困難な場合が多く、数値解法が必要になるでしょう。

偏微分の視点からの導出と数学的厳密化

続いては、偏微分の観点から拡散方程式の導出をより数学的に厳密に整理していきます。

1次元での厳密な導出

1次元問題で微小区間 [x, x+Δx] を考えます。

この区間への質量の流入・流出を計算すると次のようになります。

Δx · ∂c/∂t = J(x,t) – J(x+Δx,t)

右辺をテイラー展開:≈ -∂J/∂x · Δx

両辺をΔxで割ると:∂c/∂t = -∂J/∂x

J = -D ∂c/∂x を代入すると1次元拡散方程式 ∂c/∂t = D ∂²c/∂x² が得られます。

多次元への拡張と発散定理

多次元では、ガウスの発散定理を使った体積積分の議論が必要になります。

任意の体積V上での質量保存を表す積分式に発散定理を適用すると、連続の式 ∂c/∂t = -∇·J が得られます。

発散定理は積分形の保存則と微分形の方程式を橋渡しする数学的ツールです。

ランダムウォークからの確率論的導出

拡散方程式はランダムウォーク(確率論)からも導出できます。

各粒子が毎時刻Δtに確率1/2でΔxだけ右または左に動くモデルを考えると、Δx→0, Δt→0 の極限でc(x,t)が拡散方程式を満たすことが示されます。

このとき D = (Δx)²/(2Δt) という関係が成立します。

この導出はアインシュタインのブラウン運動の理論と関連しており、拡散の確率論的本質を明らかにしています。

まとめ

本記事では、拡散方程式の導出をフィックの法則・連続の式・エネルギー保存則という基本原理から丁寧に解説しました。

フィックの第一法則(J = -D∇c)と質量保存(∂c/∂t = -∇·J)を組み合わせるだけで、拡散方程式が自然に導かれます。

熱伝導でも全く同じ構造の方程式が導かれることから、拡散という現象の普遍性が理解できるでしょう。

導出過程をマスターすることで、拡散方程式の意味と使い方への理解が格段に深まるはずです。

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