ボルトの引張強度の計算方法は?一覧表や規格も!(強度区分・耐力・軸力・サイズ別など)
ボルトの引張強度の計算方法について調べている方は、設計や部品選定の場面で「このボルトは本当にこの荷重に耐えられるのか」という不安を抱えているのではないでしょうか。
ボルトの引張強度は、単純に太さや長さだけで判断できるものではありません。
強度区分・耐力・軸力・有効断面積といった複数の要素を組み合わせて初めて、正確な数値が見えてきます。
特に機械設計や建築、自動車部品などの分野では、ボルトの引張強度計算を誤ると重大な事故につながる可能性もあります。
この記事では、ボルトの引張強度の計算方法をはじめ、強度区分別の一覧表、耐力と引張強さの違い、軸力の求め方、サイズ別の計算例、そしてJISやISOといった規格情報まで、幅広く解説していきます。
専門用語が多く難しく感じるかもしれませんが、順番に読み進めていただければ、ボルトの引張強度計算の全体像がしっかりとつかめるはずです。
それでは早速、本題に入っていきましょう。
ボルトの引張強度の計算方法は「引張強さ×有効断面積」が結論です
それではまずボルトの引張強度の計算方法の結論について解説していきます。
結論から言うと、ボルトの引張強度は次の計算式でシンプルに求められます。
引張荷重(N)=引張強さ(N/mm2)×有効断面積(mm2)
この式さえ押さえておけば、どのようなサイズや強度区分のボルトであっても、基本的な引張強度を導き出すことが可能です。
引張強さとは、ボルトが破断するまでに耐えられる単位面積あたりの最大応力のことです。
一方の有効断面積は、ねじ山の谷径と外径の中間的な直径をもとに算出される、実質的な断面積を指します。
ボルトの外径そのままの断面積で計算してしまうと、実際の強度よりも大きな数値が出てしまうため注意が必要です。
基本の計算式の考え方
ボルトはねじ山がある分だけ、円柱の外径よりも断面が細くなっている部分が存在します。
そのため、強度計算においては外径ではなく、必ず有効断面積を用いるのが基本です。
有効断面積は規格ごとに数値が定められており、自分で複雑な計算をしなくても一覧表から読み取ることができます。
この点については、後述のサイズ別一覧表で詳しく紹介していきます。
強度区分から引張強さを読み取る方法
ボルトには「8.8」や「10.9」といった数字の組み合わせで表される強度区分という表示があります。
この数字の最初の値に100を掛けると、おおよその引張強さ(N/mm2)がわかる仕組みです。
例えば強度区分8.8であれば、引張強さは800N/mm2ということになります。
強度区分の見方さえ理解しておけば、材質を細かく調べなくても計算に必要な数値をすぐに把握できるでしょう。
有効断面積の考え方
有効断面積は、ねじの呼び径ではなく、ねじ山の谷の径と山の径の平均的な直径から算出されます。
計算式自体は存在しますが、実務ではJIS規格に定められた数値表を参照するのが一般的です。
数値を暗記する必要はなく、必要なときに一覧表を確認できる状態にしておくことが重要です。
ボルトの引張強度計算でもっとも重要なポイントは、外径ではなく有効断面積を使うことです。
この点を誤ると、実際の強度よりも大きい数値で設計してしまい、思わぬ破断事故につながる恐れがあります。
ボルトの強度区分の一覧表
続いてはボルトの強度区分について確認していきます。
強度区分とは、ボルトの材質や熱処理によって決まる機械的性質を、数字の組み合わせで表したものです。
炭素鋼や合金鋼のボルトに用いられる表示方法で、JIS B 1051などの規格で定義されています。
強度区分の見方
強度区分は「4.6」「8.8」「10.9」「12.9」のように、小数点を挟んだ2つの数字で表記されます。
最初の数字を100倍すると引張強さ(N/mm2)の最小値がわかります。
2つ目の数字は、引張強さに対する耐力の割合(耐力比)を示すものです。
この2つの数字を組み合わせることで、そのボルトの引張強さと耐力の両方を大まかに把握できます。
強度区分と引張強さ・耐力の関係
強度区分の数字から、引張強さと耐力を計算する方法は以下の通りです。
引張強さ(N/mm2)=強度区分の最初の数字×100
耐力(N/mm2)=引張強さ×(強度区分の2つ目の数字÷10)
例えば強度区分10.9であれば、引張強さは1000N/mm2、耐力比は0.9となるため、耐力は900N/mm2と計算できます。
数字が大きいほど強度が高いボルトであると覚えておくと、選定の際にわかりやすいでしょう。
強度区分別の引張強さ・耐力一覧表
代表的な強度区分ごとの引張強さと耐力の目安は、下の一覧表の通りです。
| 強度区分 | 引張強さ(N/mm2) | 耐力比 | 耐力(N/mm2) | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 4.6 | 400 | 0.6 | 240 | 低荷重の一般部品 |
| 4.8 | 400 | 0.8 | 320 | 軽負荷の締結部 |
| 5.6 | 500 | 0.6 | 300 | 一般機械部品 |
| 5.8 | 500 | 0.8 | 400 | 一般機械部品 |
| 6.8 | 600 | 0.8 | 480 | 中負荷の締結部 |
| 8.8 | 800 | 0.8 | 640 | 自動車・産業機械 |
| 9.8 | 900 | 0.8 | 720 | 高負荷部品 |
| 10.9 | 1000 | 0.9 | 900 | 高強度が必要な構造部 |
| 12.9 | 1200 | 0.9 | 1080 | 特に高強度が必要な部位 |
強度区分8.8以上は高強度ボルトと呼ばれることが多く、自動車のエンジン周りや産業機械の重要部位に多く使われています。
一方で12.9クラスは非常に高い強度を持ちますが、その分だけ脆性が高くなり扱いに注意が必要な区分でもあるのです。
耐力と引張強さの違い
続いては耐力と引張強さの違いについて確認していきます。
この2つはどちらも強度に関わる数値ですが、意味するものは大きく異なります。
耐力とは何か
耐力とは、ボルトに荷重をかけたときに、元の形状に戻らなくなる限界の応力のことです。
これを超えて荷重をかけると、ボルトは塑性変形と呼ばれる永久的な伸びを起こしてしまいます。
金属材料には明確な降伏点が現れないものも多いため、実務上は0.2%の永久ひずみが生じる応力を耐力として扱うのが一般的です。
引張強さとの違い
一方の引張強さは、ボルトが破断するまでに耐えられる最大の応力を指します。
つまり耐力は「変形が始まる境目」、引張強さは「壊れる限界」という違いがあるのです。
設計上重要なのは、実は引張強さよりも耐力の方だと言えるでしょう。
ボルトが一度でも塑性変形してしまうと、締結力が低下し、緩みや脱落の原因になりかねません。
耐力を基準にした許容荷重の考え方
実際の設計では、引張強さぎりぎりまで荷重をかけることはまずありません。
耐力に対してさらに安全率を掛けた「許容応力」を基準に、使用荷重を決めるのが一般的な考え方です。
許容応力(N/mm2)=耐力÷安全率
許容荷重(N)=許容応力×有効断面積
安全率は用途によって異なりますが、一般的な機械部品では1.5から3程度が目安とされています。
重要保安部品や振動が繰り返しかかる箇所では、さらに大きな安全率を設定するケースも珍しくありません。
ボルトの強度を語るうえで、引張強さだけを見て安心するのは危険です。
実務上は耐力を基準に許容荷重を設定することが、安全な設計への近道と言えるでしょう。
軸力の計算方法
続いては軸力の計算方法について確認していきます。
軸力は、ボルトを締結する際に実際に発生する引張方向の力であり、締結の信頼性を左右する非常に重要な数値です。
軸力とは何か
軸力とは、ボルトを締め付けたときに、ボルト自身が引き伸ばされる方向に発生する内部的な力のことです。
この軸力によって、締結される部材同士がしっかりと密着し、外力に対抗する摩擦力が生まれます。
軸力が不足していると、振動などで部材がずれたり、ボルトが緩んだりする原因になるでしょう。
逆に軸力が過大になれば、ボルトの耐力を超えて塑性変形や破断が起こる恐れもあります。
軸力の計算式
設計上、安全に使用できる軸力の目安は、耐力に対して一定の割合を掛けて求めるのが基本です。
許容軸力(N)=耐力(N/mm2)×有効断面積(mm2)×使用率
使用率は一般的に0.6から0.8程度が用いられることが多く、振動や衝撃荷重が想定される場合はより低めに設定します。
例えば強度区分8.8、M12のボルト(有効断面積84.3mm2)で使用率0.7とした場合、許容軸力は640×84.3×0.7で計算され、約37800Nとなります。
締め付けトルクと軸力の関係
実務では軸力を直接測定するのが難しいため、締め付けトルクから軸力を推定する方法がよく使われます。
トルクT(N・m)=トルク係数k×呼び径d(m)×軸力F(N)
トルク係数kは、ねじの表面処理や潤滑状態によって変動しますが、一般的な条件では0.2前後が目安とされています。
この式を軸力について解くと、F=T÷(k×d)という形で必要なトルクから軸力を逆算できます。
ただしトルク係数は摩擦条件で大きくばらつくため、あくまで目安として捉え、重要な締結箇所では実測や専用工具での管理をおすすめします。
サイズ別の引張強度の計算例
続いてはサイズ別の引張強度の計算例について確認していきます。
強度区分と有効断面積さえわかれば、任意のサイズのボルトについて引張強度を算出することが可能です。
ここでは強度区分8.8を例に、代表的なサイズごとの計算結果を一覧表にまとめました。
| 呼び径 | 有効断面積(mm2) | 破断荷重の目安(kN) | 耐力荷重の目安(kN) |
|---|---|---|---|
| M6 | 20.1 | 16.1 | 12.9 |
| M8 | 36.6 | 29.3 | 23.4 |
| M10 | 58.0 | 46.4 | 37.1 |
| M12 | 84.3 | 67.4 | 54.0 |
| M16 | 157.0 | 125.6 | 100.5 |
| M20 | 245.0 | 196.0 | 156.8 |
この表はあくまで強度区分8.8の場合の目安であり、区分が変われば数値も変動する点に注意してください。
M6からM8など小径ボルトの計算例
M6ボルトの有効断面積は20.1mm2です。
強度区分8.8であれば引張強さは800N/mm2ですので、破断荷重は20.1×800で約16080N、つまり約16.1kNと計算できます。
小径ボルトは扱いやすい反面、耐えられる荷重は限られているため、電子機器の筐体や軽負荷の固定部などに向いているでしょう。
M10からM16の計算例
中径のM10からM16は、機械部品の締結で最も多用されるサイズ帯です。
M12の場合、有効断面積は84.3mm2ですので、強度区分10.9であれば破断荷重は84.3×1000で約84300N、約84.3kNとなります。
強度区分を8.8から10.9に上げるだけで、同じサイズでも強度が大きく向上することが数値からもわかるでしょう。
M20以上の大径ボルトの計算例
M20以上の大径ボルトは、建築構造物や大型産業機械など、大きな荷重を受け止める箇所で使用されます。
M20、強度区分10.9の場合、有効断面積245mm2に引張強さ1000N/mm2を掛けて、破断荷重は約245000N、約245kNという計算結果になります。
大径になるほど数値のインパクトも大きくなりますが、実際の設計では必ず耐力ベースでの許容荷重を確認することが欠かせません。
サイズ別の計算はシンプルですが、有効断面積の数値を外径と混同してしまうミスが非常に多く見られます。
必ず規格表に記載された有効断面積を使うようにしてください。
ボルトの引張強度に関わる規格
続いてはボルトの引張強度に関わる規格について確認していきます。
強度区分や有効断面積の数値は、国内外のさまざまな規格によって定められています。
JIS B 1051とは
JIS B 1051は、炭素鋼および合金鋼製のボルト・小ねじ・スタッドの機械的性質を定めた日本の規格です。
強度区分の表記方法や、各区分における引張強さ・耐力・硬さの範囲などが細かく規定されています。
国内で流通する多くのボルトは、このJIS規格に準拠して製造・表示されているのが実情です。
ISO規格との違い
国際規格であるISO 898-1も、JIS B 1051とほぼ同様の強度区分体系を採用しています。
そのため、強度区分の数字表記自体はJISとISOで共通しており、国際的な取引でも混乱が起きにくい仕組みになっているのです。
ただし、ねじ山の形状やピッチなど細部の規定には差異が存在する場合もあるため、輸入部品を扱う際は事前の確認が欠かせません。
規格選定時の注意点
規格を選ぶ際は、単に強度区分の数字だけでなく、使用環境や相手部材との適合性も考慮する必要があります。
例えば耐食性が求められる環境では、ステンレス鋼ボルトの強度区分(A2-70やA4-80など)を別途確認しなければなりません。
ステンレス鋼は炭素鋼とは異なる強度区分表記が使われているため、混同しないよう注意しましょう。
迷った場合は、部品メーカーが公開している技術資料やJIS規格書を直接参照するのが確実な方法です。
まとめ
今回はボルトの引張強度の計算方法について、強度区分・耐力・軸力・サイズ別の視点から解説してきました。
ボルトの引張強度は「引張強さ×有効断面積」というシンプルな式で求められますが、実際の設計では耐力を基準にした許容荷重の考え方が重要になります。
強度区分の数字から引張強さと耐力を素早く読み取れるようになると、部品選定のスピードと精度が大きく向上するでしょう。
また、軸力の計算やトルクとの関係を理解しておくことで、締結後の緩みや破断といったトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
JISやISOといった規格は、こうした数値の裏付けとなる大切な情報源です。
ぜひ今回紹介した一覧表や計算式を、実際のボルト選定や強度計算の場面で役立ててみてください。