「固有振動数を変えたいけど何を変えればいいの?」「形が変わると固有振動数はどう変わるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
固有振動数は複数の要因によって決まるため、設計で目標とする固有振動数を実現するには、各要因の影響を正確に把握することが重要です。
この記事では、固有振動数に影響する要因(質量・剛性・境界条件・材料特性・形状・支持方法)とその影響の大きさについて解説していきます。
目次
固有振動数は「剛性の平方根に比例し、質量の平方根に反比例する」のが基本
それではまず、固有振動数を決める最も基本的な2つの要因(質量と剛性)について解説していきます。
固有振動数の基本公式 fₙ=(1÷2π)√(k÷m) から、固有振動数は剛性kの平方根に比例し、質量mの平方根に反比例するという2つの根本的な関係が読み取れます。
質量が固有振動数に与える影響
質量mが増えると固有振動数fₙは低下します。
質量を2倍にすると:fₙ → fₙ÷√2 ≒ 0.707fₙ(約29%低下)
質量を4倍にすると:fₙ → fₙ÷√4 = fₙ÷2(50%低下)
質量を1/4にすると:fₙ → fₙ×√4 = 2fₙ(2倍に上昇)
質量を増やして固有振動数を下げることを「質量付加(mass loading)」と呼び、振動制御に使われる手法のひとつです。
剛性が固有振動数に与える影響
剛性(ばね定数)kが増えると固有振動数fₙは上昇します。
剛性を4倍にすると:fₙ → fₙ×√4 = 2fₙ(2倍に上昇)
剛性を1/4にすると:fₙ → fₙ÷√4 = fₙ÷2(50%低下)
剛性は材料のヤング率・断面形状・部材長さによって決まるため、これらの設計パラメーターが固有振動数に直接影響します。
固有振動数に影響する設計要因の詳細
続いては、固有振動数に影響する主要な設計要因を詳しく確認していきます。
材料特性(ヤング率・密度)の影響
材料のヤング率Eと密度ρは、はり・板などの連続体の固有振動数に根本的な影響を与えます。
はりの固有振動数の比例関係
fₙ ∝ √(E÷ρ)(比剛性の平方根に比例)
比較(同じ形状・同じ境界条件の場合)
・鋼材(E≒206GPa・ρ≒7850kg/m³):√(206×10⁹÷7850)≒5127 m/s
・アルミ合金(E≒70GPa・ρ≒2700kg/m³):√(70×10⁹÷2700)≒5092 m/s
→ 比剛性(E÷ρ)はほぼ等しいため、同形状では固有振動数もほぼ同じ
鋼とアルミは比剛性(E÷ρ)がほぼ等しいため、同形状・同拘束条件では固有振動数もほぼ同じという興味深い事実があります。CFRPは比剛性が高いため、同形状で高い固有振動数が実現できます。
形状・寸法の影響
はり・板の固有振動数は寸法(長さ・断面形状)に強く依存します。
片持ちはりの固有振動数の寸法依存性
fₙ ∝ (h÷L²) × √(E÷ρ)
(h:はりの厚さ・高さ、L:はりの長さ)
・長さLを2倍にすると:fₙ → fₙ÷4(75%低下)
・高さhを2倍にすると:fₙ → 2fₙ(2倍に上昇)
長さへの依存性(L²に反比例)が高さへの依存性(hに比例)より強いため、部材の長さが固有振動数に最も大きな影響を与えます。
境界条件・支持方法の影響
同じ材料・同じ寸法のはりでも、両端の固定方法(境界条件)によって固有振動数が大きく異なります。
| 境界条件 | 1次固有振動数の係数(λL)² | 相対的な固有振動数 |
|---|---|---|
| 両端自由 | 22.4 | 基準 |
| 両端単純支持 | 9.87(π²) | より低い |
| 片持ち(一端固定・一端自由) | 3.52 | 最も低い |
| 両端固定 | 22.4 | 両端自由と同じ |
片持ちばりの固有振動数は両端固定はりの約1/4(係数比:3.52÷22.4≒0.16、√をとると約0.4)であり、支持方法が固有振動数に非常に大きな影響を与えることがわかります。
固有振動数を設計でコントロールする方法
続いては、設計において固有振動数を目標値に近づけるためのアプローチを確認していきます。
固有振動数を高くする設計変更
・剛性を高める:板厚増加・リブ追加・断面形状の最適化(Iビームなど)
・材料を高比剛性(E÷ρが大きい)のものに変更:CFRPの採用など
・長さを短くする:部材の短縮・支持点の追加
・質量を減らす:軽量化・穴あけ・材料置換
・支持方法の強化:単純支持→固定支持への変更
固有振動数を低くする設計変更
・質量を増やす:付加質量の追加・動吸振器の質量
・剛性を低くする:防振ゴム・弾性支持の採用
・長さを長くする:スパンの延長
→ 振動絶縁(アイソレーション)では固有振動数を低くして加振周波数との差を広げます
振動問題の対策では「固有振動数を加振周波数から離す方向に設計変更すること」が最も根本的な解決策であり、質量・剛性・形状・境界条件のどれを変えるかはコスト・制約条件に応じて選択します。
まとめ
この記事では、固有振動数に影響する要因(質量・剛性・材料特性・形状・境界条件・支持方法)とその影響の方向・大きさ・設計での対応方法について解説しました。
固有振動数は fₙ∝√(k÷m) を基本として、材料の比剛性(E÷ρ)・部材の長さと断面形状・支持条件によって決まります。設計ではこれらのパラメーターを操作することで目標の固有振動数を実現します。
複数の設計変数を同時に考慮した最適化が現代の振動設計の実践であり、FEMを活用したパラメーター感度解析が効率的なアプローチとなるでしょう。