「マグニチュード12の地震が起きたらどうなるの?」という疑問を抱いたことはないでしょうか。SF映画やゲーム、ネットの話題などで「マグニチュード12」という数字を目にした方もいるかもしれません。しかし、そもそもマグニチュード12という地震は現実に存在しうるのでしょうか。
結論を先にお伝えすると、マグニチュード12は地球上では物理的に発生不可能とされています。観測史上最大の地震はチリ地震のMw9.5であり、M12はその数字をはるかに超える空想上の数値です。しかしその「もしも」を想像することで、マグニチュードという指標の本質や、エネルギーの途方もない大きさが見えてきます。
本記事では「マグニチュード12はどのくらい?震度換算は何・いくつ?7との違いは?過去にあったのか」というテーマのもと、M12の仮想的なエネルギー規模・震度への換算・M7との比較・過去の巨大地震との対比まで、わかりやすく解説していきます。スケールの大きな地震の世界をぜひ一緒に探っていきましょう。
目次
マグニチュード12は地球上では発生不可能な仮想上の数値である
それではまず、マグニチュード12がいかに非現実的な数値であるかという結論から解説していきます。
マグニチュード12が発生しない理由
マグニチュードは地震が放出するエネルギーを対数スケールで表した指標です。マグニチュードが1増えるごとにエネルギーは約31.6倍、2増えると約1,000倍になります。
観測史上最大のチリ地震(1960年)はMw9.5でした。M12との差は2.5です。
M12とM9.5のエネルギー比
差:12 − 9.5 = 2.5
エネルギー比:10^(1.5 × 2.5) = 10^3.75 ≒ 約5,623倍
M12の地震は、観測史上最大のチリ地震の約5,600倍ものエネルギーを持つ計算になります。
地球のプレートや断層には物理的な大きさの限界があります。地震のエネルギーは断層面の面積・すべり量・岩石の剛性によって決まるため、地球全体の断層を合計してもM12のエネルギーを生み出すことは不可能とされています。
M12のエネルギーはどれほどか
仮にM12の地震が発生したとしたら、そのエネルギーはどれくらいになるでしょうか。Gutenberg-Richterの式で計算してみましょう。
log₁₀E = 1.5 × M + 11.8
M = 12のとき
log₁₀E = 1.5 × 12 + 11.8 = 18 + 11.8 = 29.8
E = 10^29.8 ≒ 6.3 × 10^29エルグ = 約6.3 × 10^22ジュール
約6.3×10^22ジュールという数字は、太陽が約1.7日間に放出するエネルギーに匹敵します。地球全体が受け取る太陽エネルギーの数十日分に相当するエネルギーが、一度の地震で放出される計算です。地球がそのまま存在できるかどうかすら疑わしいほどの規模といえるでしょう。
M12と他のエネルギーとの比較
M12のエネルギー規模を、身近なものと比較してみましょう。
| 比較対象 | エネルギー(ジュール概算) | M12との比率 |
|---|---|---|
| 広島型原子爆弾 | 約8.4 × 10^13 J | M12の約7,500兆分の1 |
| 東日本大震災(Mw9.0) | 約2.0 × 10^18 J | M12の約3,100万分の1 |
| チリ地震(Mw9.5) | 約1.1 × 10^19 J | M12の約560万分の1 |
| 太陽の1秒あたりの放射エネルギー | 約3.8 × 10^26 J | M12の約6万分の1 |
| M12(仮想) | 約6.3 × 10^22 J | 基準 |
東日本大震災でさえM12の3,100万分の1のエネルギーしかないという事実が、M12という数値の非現実的な大きさを物語っています。
マグニチュード12の震度換算はどれくらいになるのか
続いては、マグニチュード12が仮に発生した場合、震度に換算するとどのくらいになるかを確認していきます。震度との関係を理解するうえで、まず震度とマグニチュードの違いをおさらいしておきましょう。
震度とマグニチュードの根本的な違い
震度はある特定の地点での揺れの強さを表す指標であり、日本では気象庁が定めた0・1・2・3・4・5弱・5強・6弱・6強・7の10段階で表されます。一方、マグニチュードは地震そのものが持つエネルギーの規模を表す指標で、1つの地震につき1つの値が与えられます。
この二つは直接的に変換・換算できるものではありません。震源からの距離・震源の深さ・地盤の状態によって、同じマグニチュードでも観測される震度はまったく異なります。
M12の震度換算を試みると
正確な換算は不可能ですが、地震学で使われる経験則をもとに「もしM12が発生したら震度はどうなるか」を概算してみましょう。
日本の気象庁では、震度と地震の規模・距離の関係を推計するための式(距離減衰式)が研究されています。一般的に使われる気象庁の計算方法をもとにすると、震源付近では震度7をはるかに超えるエネルギーが地表に伝わる計算になります。
参考:一般的な震度推計式(簡略版)
I ≒ 2.68 + 1.72M − 1.58 × log₁₀(R)
I = 計測震度、M = マグニチュード、R = 震源距離(km)
M = 12、R = 10km(直下型想定)のとき
I ≒ 2.68 + 1.72 × 12 − 1.58 × log₁₀(10)
I ≒ 2.68 + 20.64 − 1.58 ≒ 21.7
日本の震度階級の最大は7(計測震度6.5以上)。計測震度21.7は震度7を大幅に超える数値です。
震度7が「計測震度6.5以上」に対応することを考えると、計測震度21.7という値は震度7の基準値の約3倍以上。現実の震度階級では表現すらできない揺れの強さになります。
震度7超の揺れが意味すること
現行の日本の震度階級で最大の震度7は、「耐震性の低い建物のほとんどが倒壊し、耐震性の高い建物でも倒壊するものがある」レベルとされています。
M12の仮想的な揺れはこれをはるかに上回るため、現在存在するいかなる建造物も耐えられないでしょう。地盤の液状化・大規模な地すべり・山体崩壊・超巨大津波が同時多発的に発生し、地表そのものが変形するほどの壊滅的な被害が広がることが想像されます。
ただし、これはあくまでも「仮にM12が発生したら」という思考実験の話です。実際には地球上での発生は物理的に不可能であることを改めて強調しておきます。
マグニチュード12とM7との違いはどれほどか
続いては、M12とM7のエネルギー・被害規模の違いを確認していきます。M7は日本でも過去に多くの大被害をもたらしてきた規模の地震です。その差がどれほどのものかを数字で見ていきましょう。
エネルギーの差は約3,162万倍
M12とM7のエネルギー差を計算してみましょう。
差:12 − 7 = 5
エネルギー比:10^(1.5 × 5) = 10^7.5 ≒ 31,622,776倍
M12の地震は、M7の地震の約3,162万倍のエネルギーを持つ計算です。
3,162万倍という数字はもはや日常的な感覚では想像できない桁です。M7でさえ阪神・淡路大震災(M7.3)や熊本地震(M7.0)のような甚大な被害をもたらしましたが、その3,000万倍超のエネルギーがいかに非現実的かが伝わるのではないでしょうか。
M7〜M12のエネルギー倍率一覧
| マグニチュード | M7.0比のエネルギー倍率 | 参考となる地震・出来事 |
|---|---|---|
| M7.0 | 1倍(基準) | 熊本地震(2016年)M7.0 |
| M8.0 | 約31.6倍 | 昭和三陸地震(1933年)M8.1 |
| M9.0 | 約1,000倍 | 東日本大震災(2011年)Mw9.0 |
| M9.5 | 約5,623倍 | チリ地震(1960年)Mw9.5(観測史上最大) |
| M10.0 | 約31,623倍 | 理論的上限付近(地球では未発生) |
| M12.0 | 約31,622,776倍 | 仮想上の数値。地球では発生不可能 |
M7と比べた影響範囲の違い
M7クラスの地震は、震源付近で大きな被害をもたらしますが、その影響範囲はある程度限定されます。一方、M12のエネルギーを持つ地震が仮に発生した場合、地球規模での影響が生じると考えられます。
地震波は地球全体を伝わります。M9.0の東日本大震災のときでさえ、地震波は地球を何周もし、世界中の地震計で観測されました。M12のエネルギーは地球を文字通り揺さぶり、地球の自転速度や地軸にまで影響を与える可能性があるほどのスケールです。
M7が「街を壊す地震」だとすれば、M12は「惑星を変える地震」と表現しても大げさではないでしょう。
過去にマグニチュード12に近い地震はあったのか
続いては、地球の歴史の中でM12に近い規模のイベントが過去に起きたことがあるのかを確認していきます。現代の観測記録を超えた地質学・天文学の世界まで視野を広げてみましょう。
地球上での観測記録の最大値
現代の地震計による観測記録において、最大のマグニチュードは1960年のチリ地震のMw9.5です。これが現実の地球で観測されたM12への「最も近い値」ということになります。
| 地震名 | 発生年 | Mw | 主な影響 |
|---|---|---|---|
| チリ地震 | 1960年 | 9.5 | 太平洋全域に津波。日本でも死者 |
| アラスカ地震 | 1964年 | 9.2 | 北米西海岸に大津波 |
| スマトラ沖地震 | 2004年 | 9.1 | インド洋大津波。死者23万人以上 |
| 東日本大震災 | 2011年 | 9.0 | 東北地方に大津波。死者・行方不明者約2万2,000人 |
M9.5でさえ地球規模の大津波を引き起こす規模です。M12がいかに現実離れした数値かが改めてわかります。
地質学的・天文学的に見たM12相当のイベント
地球の46億年の歴史をさかのぼると、現代の地震計では測れないような巨大なイベントが存在した可能性はあります。
たとえば、約6,600万年前に起きたチクシュルーブ小惑星衝突(恐竜を絶滅させたとされるイベント)は、地震相当のエネルギーに換算するとMw11〜M12程度に匹敵するという試算もあります。ただしこれは厳密な「地震」ではなく、衝突による衝撃波や地殻変動のエネルギーを換算したものです。
宇宙規模で考えるとM12はどこに位置するか
地球の外に目を向けると、M12相当のエネルギーを放出する「地震的イベント」は宇宙では実際に観測されています。
中性子星で発生するスターquake(恒星地震)は、規模によってはM12〜M22相当のエネルギーを持つとされています。2004年には約5万光年先の磁気星SGR 1806-20でスターquakeが観測され、そのエネルギーはM22相当と推定されました。
もちろんこれは地球の地震とはまったく異なる天体物理学的現象です。しかし宇宙スケールで考えると、M12という数字はさほど特別な値ではないということも、また一つの興味深い視点といえるでしょう。
まとめ
本記事では「マグニチュード12はどのくらい?震度換算は何・いくつ?7との違いは?過去にあったのか」というテーマのもと、M12の仮想的な規模・震度への換算・M7との比較・過去の記録まで幅広く解説しました。
最後に重要なポイントをまとめます。
・マグニチュード12は地球上では物理的に発生不可能な仮想上の数値
・M12のエネルギーは観測史上最大のチリ地震(M9.5)の約5,623倍、M7の約3,162万倍
・震度への換算は直接できないが、試算上は震度7をはるかに超える計測震度20以上の揺れになる
・地球での地震の実質的な上限はM9.5〜M10程度
・小惑星衝突などのイベントに換算するとM12相当のエネルギーが過去に存在した可能性はある
・宇宙では中性子星の恒星地震でM12を超えるエネルギーが観測されている
マグニチュード12という数字は現実の地球では存在しえませんが、それを考えることでマグニチュードという指標の本質・対数スケールの凄み・地球という惑星の物理的な限界を深く理解する手がかりになります。
日本は世界有数の地震大国です。現実に起きうるM7やM8、さらにはM9クラスの地震に備えるためにも、マグニチュードの意味を正しく理解した防災意識を日頃から持ち続けることが大切です。本記事が地震への理解と防災の一助となれば幸いです。