遮断周波数(カットオフ周波数)は、フィルタ回路設計において最も基本的なパラメータの一つです。
RC回路・RL回路などのフィルタ回路がどの周波数から信号を減衰させ始めるかを決める遮断周波数の計算は、電子回路設計・信号処理・ノイズ除去など多くの実用場面で必要とされます。
遮断周波数の計算公式はシンプルですが、導出の考え方と角周波数・時定数との関係を理解することが、実践的な回路設計への近道です。
本記事では、RC回路・RL回路における遮断周波数の計算公式・導出方法・具体的な計算手順について詳しく解説していきます。
目次
遮断周波数の定義と基本概念
それではまず、遮断周波数の定義と基本概念について解説していきます。
遮断周波数(カットオフ周波数:fc)とは、フィルタ回路の出力電力が入力電力の半分(-3 dB)になる周波数であり、「-3 dBポイント」または「半電力点」とも呼ばれます。
-3 dBの物理的な意味
-3 dBの意味
電力比:P_out / P_in = 1/2(半電力)
電圧比:V_out / V_in = 1/√2 ≈ 0.707(電圧振幅が1/√2倍)
dB表現:20 × log₁₀(1/√2) ≈ -3 dB
遮断周波数より低い周波数(通過域)では信号がほぼそのまま通過し、高い周波数(阻止域)では減衰します(ローパスフィルタの場合)。
角周波数と周波数の関係
遮断周波数fcと角周波数ωcの関係は以下の通りです。
角周波数と周波数の換算
ωc = 2πfc
fc = ωc / (2π)
ωc:遮断角周波数(rad/s) fc:遮断周波数(Hz)
回路解析では角周波数ωcが使いやすく、設計仕様・フィルタ特性の表示では周波数fc(Hz)が直感的です。
RC回路の遮断周波数の計算公式と導出
続いては、最も基本的なRC回路(ローパスフィルタ)の遮断周波数計算について確認していきます。
RC ローパスフィルタの遮断周波数公式
RC ローパスフィルタの遮断周波数
fc = 1 / (2π × R × C)
または ωc = 1 / (R × C)= 1 / τ(τ:時定数)
R:抵抗(Ω) C:コンデンサ容量(F)
τ:時定数(s) = R × C
遮断周波数の導出過程
RC回路の周波数伝達関数H(jω)は以下のように導出されます。
RC ローパスフィルタの伝達関数の導出
出力電圧(コンデンサ電圧):V_out = V_in × Xc / (R + Xc)
コンデンサのインピーダンス:Xc = 1 / (jωC)
H(jω) = V_out/V_in = 1 / (1 + jωRC)
|H| = 1 / √(1 + (ωRC)²)
|H| = 1/√2 のとき ωRC = 1 → ωc = 1/(RC)
∴ fc = 1 / (2πRC)
時定数τ = RCの逆数が遮断角周波数ωcとなるというシンプルな関係が、RC回路設計の核心です。
RC回路の計算例
計算例:R = 10 kΩ、C = 1 μF のRC回路の遮断周波数
τ = 10×10³ × 1×10⁻⁶ = 0.01 s
fc = 1 / (2π × 0.01)≈ 15.9 Hz
RL回路の遮断周波数の計算
続いては、RL回路における遮断周波数の計算方法について確認していきます。
RL ローパスフィルタの遮断周波数公式と計算例
RL ローパスフィルタの遮断周波数
fc = R / (2πL)
ωc = R / L
R:抵抗(Ω) L:インダクタンス(H)
計算例:R = 1 kΩ、L = 10 mH のRL回路
fc = 1000 / (2π × 0.01)≈ 15,915 Hz ≈ 15.9 kHz
RL回路はRC回路と同様の構造ですが、コンデンサの代わりにコイル(インダクタ)を使い、遮断周波数の式はR/(2πL)となります。
RC・RL・LC回路の遮断周波数比較
| 回路タイプ | 遮断周波数(fc) | 特徴 |
|---|---|---|
| RCローパス | 1/(2πRC) | -20 dB/dec の減衰特性 |
| RLローパス | R/(2πL) | -20 dB/dec の減衰特性 |
| LC共振回路 | 1/(2π√(LC)) | 共振周波数(バンドパス) |
まとめ
本記事では、遮断周波数の定義・RCおよびRL回路の計算公式・導出過程・具体的な計算例について詳しく解説しました。
遮断周波数は出力が-3 dB(電力半分・電圧が1/√2倍)になる周波数であり、フィルタ回路の基本設計パラメータです。
RC回路はfc = 1/(2πRC)、RL回路はfc = R/(2πL)という公式で求められ、どちらも時定数(τ = RC または τ = L/R)の逆数が遮断角周波数となります。
伝達関数の大きさが1/√2になる条件から遮断周波数を導出するプロセスを理解することで、より複雑な高次フィルタ設計への応用が広がるでしょう。